困ってから調べるの、遅いです。
携帯トイレは「何回分」で足りるか(家族人数から出す)(イメージ)27.2%携帯トイレ・簡易トイレを3日分以上備蓄している人(内閣府・令和7年8月調査)
暮らし編

携帯トイレは「何回分」で足りるか(家族人数から出す)

先回り大家最終確認 2026-08-15

東日本大震災のあと、仮設トイレが避難所に行き渡るまでに要した日数を、被災3県の29自治体に聞いた調査があります。「3日以内」と答えた自治体は34%。残りは4日以上かかり、最も日数を要した自治体は65日でした(*1)。

この数字は、内閣府の公式ガイドラインの2ページ目に載っています。つまり国は、「トイレはすぐには届かない」を前提に計画を立てろと言っている。届くまでの数日を埋めるのは、あなたの家に今ある枚数だけです。

だからこの記事は、おすすめ商品を並べません。必要な数を、掛け算で出して終わりにします。

結論:人数 × 5回 × 日数。4人家族の3日分なら60回分

内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」は、自治体が携帯トイレの備蓄数を見積もるための計算式を、こう示しています。

(計算式)最大想定避難者数(a)×5回

○排泄の回数は5回が平均的であると言われています。(*2)

1人1日あたり5回。 これが国の見積り式に入っている数字です。あとは何日分を持つかを決めるだけ。同じガイドラインは「携帯トイレの備蓄目標数は、何日間分備蓄するかを決めます。まずは、3日分を目標にします」と書いています(*2)。

家庭向けにはもう一段上の目安があります。同じ内閣府の「防災に関する世論調査(令和7年8月調査)」の調査票には、行政が住民に呼びかけている水準として「最低3日分、できれば1週間分」と明記されています(*3)。

掛け合わせると、こうなります。

家族の人数3日分1週間分
1人15回分35回分
2人30回分70回分
3人45回分105回分
4人60回分140回分
5人75回分175回分

市販の携帯トイレは10回・20回・50回といった単位で売られています。4人家族なら、まず60回分、目標は140回分。これで「何個買えばいいか分からない」は終わりです。

なぜ「断水が何日続くか」で数えてはいけないのか

ここが本題です。多くの人は、備蓄量を「断水が何日続くか」で考えます。それだと足りません。水が出ていても、流してはいけない期間があるからです。

同じガイドラインの、既設トイレを使うときのポイントにこう書かれています。

○水道が使える場合、または、水が確保できる場合であっても、発災直後は下水処理場等の被害状況が確認されるまでは、水洗トイレの使用を禁止し、災害用トイレを使用すること。(*2)

「水が確保できる場合であっても」使用を禁止する。 理由は排水側です。ガイドラインは、災害時にトイレを確保する上での制約を一覧にしていて、そこには「下水道・集中処理浄化槽・戸別浄化槽の破損」=「水が確保できても、排水先が破損している場合は、水洗トイレの使用を中止する必要がある」と書かれています(*2)。停電も同じ枠です。戸別浄化槽のブロアーが止まる、マンションでは水が汲み上がらない(*2)。

つまり、トイレが止まる原因は3方向あります。上(給水)・下(排水)・電気。 どれか1つ壊れれば流せない。そして下水は、目で見て無事かどうかを自分では判断できません。「確認されるまで」使わないというのが、国の指示です。

数える単位を、断水日数ではなく回数にしてください。ガイドラインの時間経過モデルでも、発災から3日間は携帯トイレと簡易トイレが「主に使用」で、仮設トイレが主役になるのは2週間目からです(*2)。最初の3日は、家にある回数分がそのまま生活の質になります。

復旧の桁を知っておく

令和6年能登半島地震では、6県38事業者で最大約13.6万戸が断水しました。石川県では、輪島市・珠洲市の早期復旧困難地域を除き、5月31日をもって水道本管が復旧済みとされています(*4)。発災は1月1日ですから、地域全体としては約5か月です。

これは「あなたの家が5か月止まる」という意味ではありません。復旧は地区ごとに進みます。ただ、上下水道の復旧は週単位・月単位で語られる仕事だという桁は、頭に入れておく価値があります。3日分は入口であって、ゴールではない。

持っている人は27.2%。水は69.8%

内閣府の令和7年8月の世論調査で、家庭で3日分以上備蓄しているものを聞いた結果です(複数回答・上位5項目)。

  • 飲料水 69.8%
  • 食料品 59.8%
  • 衛生用品 38.4%
  • 食品加熱用熱源 27.7%
  • 携帯トイレ・簡易トイレ 27.2%(*3)

入るほう(水・食料)は7割・6割が備えていて、出るほうは3割を切る。この差がそのまま、避難生活で最初に崩れる場所です。ガイドラインの冒頭は、その帰結をこう書いています。

トイレの使用がためらわれることによって、排泄を我慢することが、水分や食品摂取を控えることにつながり、避難者においては栄養状態の悪化や脱水症状、静脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)等の健康被害を引き起こすおそれが生じる。(*2)

飲料水を69.8%が3日分持っている。その水を、トイレが無いという理由で飲まなくなる。備蓄の順番として、これはもったいない話です。(体調の判断は医療の領域なので、ここでは公的資料の記述をそのまま紹介するにとどめます。)

大家として言えること:トイレは、平時でも直るまで待つ設備だ

私は千葉県で戸建てを3棟、貸しています。その1棟のトイレで、去年から今年にかけて起きたことを実額で書きます。

  • 2026年3月16日:タンクのボールタップとフロートを交換。19,800円(税込・業者請求)
  • 2026年4月:同じトイレを本体ごと交換。本体43,500円+工事24,200円=67,700円

直したのに、1か月後に交換しました。合計87,500円です。

この経験から言えることは、金額ではありません。修理を頼んでから直るまで、その家のトイレは使えないということです。平時です。電話はつながるし、業者は来る。それでも、来るまでは待つしかない。

災害時は、その「電話すれば来る」が消えます。冒頭の34%と65日は、その状態を数字にしたものです。平時に業者を待てる家が、災害時に何も待てないのは、備えていないからではなく、備える単位を間違えているからです。 回数で持ってください。

買ったあとに効く、一次情報の使い方2つ

1つめ。洋式便器はそのまま使えます。 ガイドラインは、既設の洋式便器で携帯トイレを使うとき、「便器内の水が浸透することがないよう、便座にビニール袋をかぶせて固定し、その上に携帯トイレを付けて使用する」と手順まで書いています(*2)。個室・便座・鍵がある自宅のトイレは、災害用トイレの器として優秀です。買うのは便袋と凝固剤で足ります。

2つめ。捨て場所を先に決めてください。 ガイドラインは避難所の運営に対して、「使用済み携帯トイレの保管場所を確保し、清潔な管理を実施すること」「使用済み携帯トイレは、長期間避難所に留めることがないよう」定期的に処理することを求めています(*2)。家庭でも同じ問題が起きます。平均的な排泄量は1回あたり約200〜300ml(*2)。300ml×5回×4人×3日=18L。ごみ収集が止まっている前提で、フタ付きの容器と置き場所を1か所決めておく。ここまでが「備えた」です。

今日やること(3行)

  1. 家族の人数 × 5回 × 3日を計算する(4人なら60回分)
  2. その回数分の携帯トイレが今あるか数える。無ければ60回分を買い、目標は1週間分=140回分
  3. 使用済みを置く場所(フタ付き容器1つ)と、洋式便座にかぶせるビニール袋を同じ場所に用意する

水を3日分買った日に、出るほうを数え忘れている家がとても多い。困ってから調べるの、遅いです。


出典

  • *1 内閣府(防災担当)「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」(平成28年4月・令和6年12月改定)掲載「東日本大震災で起きたこと 仮設トイレが来ない〜仮設トイレが被災地の避難所に行き渡るまでに要した日数〜」=3日以内34%/4〜7日17%/8〜14日28%/15〜30日7%/1か月以上14%、「最も日数を要した自治体は65日であった」。調査実施=名古屋大学エコトピア科学研究所 岡山朋子、協力=日本トイレ研究所、回答=29自治体(岩手県・宮城県・福島県の特定被災地方公共団体)。https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/2412hinanjo_toilet_guideline.pdf
  • *2 同ガイドライン本文。①必要数の見積もり=「(計算式)最大想定避難者数(a)×5回」「○排泄の回数は5回が平均的であると言われています」「○携帯トイレの備蓄目標数は、何日間分備蓄するかを決めます。まずは、3日分を目標にします」「(計算式)300ml(平均的排泄量)×5回(平均回数)×最大想定避難者数(a)」「○平均的な排泄の回数は5回、排泄量は約200〜300mlであると言われています」 ②既設トイレ=「水道が使える場合、または、水が確保できる場合であっても、発災直後は下水処理場等の被害状況が確認されるまでは、水洗トイレの使用を禁止し、災害用トイレを使用すること」「既設トイレが洋式便器の場合には、携帯トイレを使用する際に、便器内の水が浸透することがないよう、便座にビニール袋をかぶせて固定し、その上に携帯トイレを付けて使用する」 ③制約の一覧=「下水道・集中処理浄化槽・戸別浄化槽の破損/水が確保できても、排水先が破損している場合は、水洗トイレの使用を中止する必要がある」「停電/戸別浄化槽ブロアーが停止すると、水洗トイレが使えなくなる。特にマンション等では、水が汲みあがらず、水洗トイレが使えなくなる」 ④時間経過モデル=「発災〜3日間」は携帯トイレ・簡易トイレが★(主に使用)、仮設トイレ(組立式)とマンホールトイレが★になるのは「〜2週間」以降 ⑤使用済みの管理=「避難所では、使用済み携帯トイレの保管場所を確保し、清潔な管理を実施すること」 ⑥はじめに=「トイレの使用がためらわれることによって、排泄を我慢することが、水分や食品摂取を控えることにつながり、避難者においては栄養状態の悪化や脱水症状、静脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)等の健康被害を引き起こすおそれが生じる」。https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/2412hinanjo_toilet_guideline.pdf
  • *3 内閣府「防災に関する世論調査(令和7年8月調査)」=問8「あなたのご家庭において、以下のうち3日分以上備蓄しているものはどれですか」(複数回答)。「飲料水」69.8%、「食料品」59.8%、「衛生用品」38.4%、「食品加熱用熱源」27.7%、「携帯トイレ・簡易トイレ」27.2%(上位5項目)。調査票【資料1】=「行政では、ホームページ等を通じて、住民に対して、次のような物資を最低3日分、できれば1週間分の備蓄を呼び掛けています」(対象品目に「携帯トイレ・簡易トイレ」を明記)。https://survey.gov-online.go.jp/public_safety/202510/r07/r07-bousai/
  • *4 国土交通省大臣官房参事官(上下水道技術)「令和6年能登半島地震を踏まえた上下水道の強靱化について」(内閣官房 国土強靱化推進会議 提出資料・令和6年6月18日)=「今回の地震で6県38事業者において最大約13.6万戸が断水。石川県では、輪島市、珠洲市の早期復旧困難地域を除き、5月31日をもって水道本管復旧済み」「下水道本管の流下機能は珠洲市の早期復旧困難地域を除き、確保済み」。https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/suisinkaigi/joukyou_dai8/siryou3.pdf
  • *5 自宅(千葉県の戸建て・賃貸中)の修繕実額。2026年3月16日=トイレのボールタップ・フロート交換 19,800円(税込・業者請求書)。2026年4月=同トイレの本体交換、本体43,500円(通販購入・領収書)+工事24,200円(税込・業者請求書)。物件の所在地・業者名は非公開。