困ってから調べるの、遅いです。
ポータブル電源は何Wh要るか(家電別に足し算する)(イメージ)約280時間台風15号で停電が99%解消するまでに要した時間(2019年・千葉県中心/経済産業省)
備え編

ポータブル電源は何Wh要るか(家電別に足し算する)

先回り大家最終確認 2026-08-17

2019年9月9日7時50分、関東広域で最大約93万戸が停電しました。東京・神奈川・埼玉・茨城・栃木・静岡は9月11日までにおおむね復旧しています。千葉県だけが、停電件数が1万戸を下回ったのが10日以上たった9月21日でした(*1)。

経済産業省の検証によれば、ピーク時と比べて99%が解消するまでに約280時間。11日半です(*1)。

だから、ポータブル電源選びで最初に決めるのは容量ではありません。何日分かです。日数を決めて、使う機器を決めて、最後にWhが出る。この順番でないと必ず外します。売り場では逆の順番(容量が大きい=安心)で並んでいるので、先に順番を持って行ってください。

手順1:何日分を守るかを決める

国が住民に呼びかけている備蓄の水準は、「最低3日分、できれば1週間分」です(*2)。ただし冒頭の280時間が示すとおり、電気が3日で戻る保証はありません

かといって「1週間分の電気」を蓄電池で持つのは、家庭では現実的ではない。だからこう割り切ります。

全部を1週間ではなく、切らせないものだけを3日。 これが電気の備えの現実解です。

手順2:家の中のものを3つに仕分ける

ここが本題です。買う前に、紙に3列書いてください。

A列:切らせない(=ポータブル電源で守る)スマートフォン、照明、ラジオ、常用している電気医療機器(機種ごとの可否と必要電力は、必ず取扱説明書とメーカー・かかりつけの指示で確認してください。ここでは判断しません)。

B列:あると生活が保つ(=余力があれば)扇風機、電気毛布、Wi-Fiルーター、ノートPC。

C列:ポータブル電源では最初からあきらめるエアコン、電子レンジ、IHクッキングヒーター、電気ケトル、ドライヤー、洗濯乾燥機。

C列を落とす理由は容量(Wh)ではありません。定格出力(W)で先に弾かれるからです。ポータブル電源には「1,000Wh」のような容量とは別に「定格出力600W」のような瞬間の上限があります。1,000Wh入っていても、1,200Wの電気ケトルは1秒も動きません。 容量の数字だけを見て買うと、ここで初めて気づくことになります。

Whの前にWを見る。 これが1つめの先回りです。

手順3:Whを足す(計算は2つだけ)

式1:消費電力(W)× 使う時間(h)= Wh

Wは、家電の裏や側面の銘板(型番シール)に必ず書いてあります。カタログを探す前に、今日、家の中を1周して控えてください。これが2つめの先回りです。

式2:スマホは、電池容量(mAh)× 電圧(V)÷ 1000 = Wh

例えば5,000mAh・3.85Vのスマホなら約19Wh。家族4人が1日1回満充電しても約76Whです。スマホは、思っているよりはるかに電気を食いません。

これで足し算ができます(Wの値は必ずご自宅の機器の表示に置き換えてください。下は仮の数字です)。

機器消費電力使う時間1日のWh
スマホ4台の充電1回ずつ約76Wh
LED照明2灯5W5時間50Wh
ラジオ3W6時間18Wh
A列 小計約144Wh
扇風機30W8時間240Wh
Wi-Fiルーター10W24時間240Wh
A+B 小計約624Wh

A列だけなら3日で約430Wh。A+Bでも3日で約1,900Wh。 ここに1つ実務上の補正を入れます。公称容量の全部は取り出せません(交流に変換する分などのロスがある)。8掛けで見積もると、足りない側に外しません。A列3日分なら実質540Wh、A+B3日分なら実質2,300Wh相当が必要という読みになります。

冷蔵庫だけは、けた違いです

多くの人が最後に足すのが冷蔵庫です。ここで計算方法が変わります。冷蔵庫は定格W×24時間で計算すると過大になります(コンプレッサーが動き続けるわけではないため)。正しくは、統一省エネラベルの「年間消費電力量(kWh/年)」を365で割る

資源エネルギー庁の「省エネ性能カタログ2024年版」から、実際の製品の数字を引きます(*3)。

製品区分定格内容積年間消費電力量1日あたり
2ドア(140L以下)137L300kWh/年約820Wh
2ドア(140L以下)135L293kWh/年約800Wh
4ドア(401〜450L)420L265kWh/年約730Wh
4ドア(401〜450L)401L268kWh/年約730Wh

137Lの小さい冷蔵庫(300kWh/年)のほうが、420Lの大きい冷蔵庫(265kWh/年)より電気を食っています。 「うちは単身用の小さいやつだから少ないだろう」は、成り立ちません。同じカタログも「冷蔵庫は、容積に比例して年間消費電力が必ずしも大きくなるわけではありません」と書いています(*3)。

そして肝心なのは金額ではなく、この一行です。冷蔵庫を回し続けるには、1日およそ700〜850Wh。 A列全部(約144Wh)の5倍以上を、冷蔵庫ひとつが持っていきます。3日なら2.2〜2.5kWh。

つまり、家庭用ポータブル電源で冷蔵庫を通常どおり回し続けるのは、容量的に成立しません。 冷蔵庫の中身をどう守るかは、電源の話ではなく別の設計(何を冷凍しておくか、いつ何を先に食べるか、クーラーボックスを持つか)の話になります。ここを混ぜたまま容量を選ぶから、「大きいのを買ったのに全然足りなかった」が起きます。

買う前に知っておくべき、いちばん知られていない一行

ポータブル電源は、電気用品安全法(PSE)の規制対象外です。

経済産業省の公式FAQに、こう書かれています。

Q.4 交流100Vも出力できる、いわゆるポータブル電源の扱いは?

A.4 蓄電池の出力は原理上直流に限られており、交流が出力できるポータブル電源は蓄電池に該当しないため、モバイルバッテリーとして扱わず、非対象。(*4)

一方でモバイルバッテリーは、2018年2月の通達改正で規制対象になり、2019年2月1日以降、PSEマークの無いものは販売禁止です(*4)。

同じ売り場に並んでいても、「PSEマークが付いているか」で選べるのはモバイルバッテリーだけ。 ポータブル電源にはその義務がありません。

規制が無いから危険だ、という話ではありません。国が対策を始めている、という話です。経済産業省は「ポータブル電源の使用による事故(全て火災)が増加傾向にあり」として、2024年2月に安全性要求事項(中間とりまとめ)を公表しています(*5)。つまり今は、買う側が自分でリスクを見る期間です。見るのは次の3つ。

  1. リコール情報(メーカーの告知と製品名・型番を、買う前に検索する)
  2. 消費者庁の注意点=落とすなど衝撃を与えない/強い衝撃のあとに発熱・変形などの異常があれば使用を中止して事業者の修理窓口へ/高温環境下での使用を控え、長期保管は直射日光の当たらない冷暗所へ/屋外で使うなら防水・防塵性能のあるものを(*6)
  3. 携帯発電機と混同しない=「屋内では絶対に使用しないでください」。運転中の排ガスに一酸化炭素が含まれ、屋内で使うとCO中毒のおそれがあります。自動車内やテント内も屋内と同等の危険です(*6)

もう一点、電源とセットで必ず覚えておくこと。避難で家を離れるときは分電盤のブレーカーを切る電気ストーブ等の電熱器具は停電時にプラグを抜く。復旧時の通電火災を防ぐためです(*6)。ポータブル電源を買った人ほど、ここを飛ばします。

大家として言えること:買っているのは容量ではなく「待てる日数」

私は千葉県で戸建てを3棟、貸しています。この1年で直したのは6件です。2025年6月に屋根、9月に風呂の床。2026年3月にトイレの部品交換で19,800円、翌4月に同じトイレを本体ごと交換して本体43,500円+工事24,200円。6月には給湯器交換と雨漏り修理が同じ月に重なりました。

金額の話ではありません。平時ですら、電話がつながって業者が来るまでは待つ、という話です。

停電はその「待つ」が、地域全体で同時に起きます。280時間というのは、千葉県で実際にそうなった時間です。ポータブル電源で買っているのは容量ではなく、助けが来るまで自分の家で待てる日数です。 その日数を決めずに容量から選ぶから、高い買い物になるか、足りない買い物になるかのどちらかになります。

今日やること(3行)

  1. 家の中を1周して、A列(切らせないもの)の銘板のWを控える(スマホは電池容量mAh×電圧V÷1000)
  2. A列の1日Wh × 3日 ÷ 0.8 を計算する。これが必要な容量の下限
  3. 候補が決まったら、買う前にその型番のリコール情報定格出力(W)を確認する(容量Whだけを見ない)

冷蔵庫を回そうとした瞬間に、必要な容量は5倍になります。困ってから調べるの、遅いです。


出典

  • *1 経済産業省 電力レジリエンスワーキンググループ「台風15号の停電復旧対応等に係る検証結果取りまとめ」(令和2年1月10日)=「9月9日7時50分には関東広域で最大約93万戸の停電が発生し、東京、神奈川、埼玉、茨城、栃木、静岡の各都県では、9月11日までに概ね停電が復旧した一方で、千葉県内では送配電設備の被害が大きく、復旧作業に時間を要した」「停電発生から10日以上経過した9月21日に停電件数が1万戸以下となり」「復旧が完了したのは9月24日であった」「概ね停電が復旧(停電件数がピーク時と比較して99%解消)するまでの時間についても約280時間を要し」。台風19号は最大約52万戸。https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/resilience_wg/20200110_report.html
  • *2 内閣府「防災に関する世論調査(令和7年8月調査)」調査票【資料1】=「行政では、ホームページ等を通じて、住民に対して、次のような物資を最低3日分、できれば1週間分の備蓄を呼び掛けています」。同調査 問8=3日分以上備蓄しているもの「飲料水」69.8%、「食料品」59.8%、「衛生用品」38.4%、「食品加熱用熱源」27.7%、「携帯トイレ・簡易トイレ」27.2%。https://survey.gov-online.go.jp/public_safety/202510/r07/r07-bousai/
  • *3 経済産業省 資源エネルギー庁「省エネ性能カタログ2024年版」電気冷蔵庫(間冷式)一覧=定格内容積140リットル以下:シャープ SJ-D14D-W(137L)年間消費電力量300kWh/年・省エネ基準達成率100%、AQUA AQR-14P(DS)(135L)293kWh/年・103%。定格内容積401〜450リットル:AQUA AQR-TZA42P(DS)(420L)265kWh/年・103%、アイリスオーヤマ IRSN-40A-S(401L)268kWh/年・100%。同カタログ「冷蔵庫は、容積に比例して年間消費電力が必ずしも大きくなるわけではありません」。年間消費電力量はJIS C 9801-3:2015に基づく測定値。https://seihinjyoho.go.jp/frontguide/pdf/catalog/2024/catalog2024.pdf
  • *4 経済産業省「モバイルバッテリーに関するFAQ」=「Q.4 交流100Vも出力できる、いわゆるポータブル電源の扱いは? A.4 蓄電池の出力は原理上直流に限られており、交流が出力できるポータブル電源は蓄電池に該当しないため、モバイルバッテリーとして扱わず、非対象。」/同「トピックス」=「近年事故が多発しているモバイルバッテリーについて、平成30年2月1日付けの通達改正により、電気用品安全法の規制対象となりました。(経過措置期間:1年間)平成31年2月1日以降は、PSEマークの無いモバイルバッテリーは販売禁止(流通在庫を含む)となります」。https://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/mlb_faq.htmlhttps://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/topics.html
  • *5 経済産業省「ポータブル電源の安全性要求事項(中間とりまとめ)について」(最終更新日:2024年4月4日)=「独立行政法人製品評価技術基盤機構に寄せられた消費生活用製品安全法令に基づく情報(重大・非重大製品事故情報)によると、ポータブル電源の使用による事故(全て火災)が増加傾向にあり、一定の電気的リスク(火災・感電等)が存在しています」「ポータブル電源は、現在、電気用品安全法の規制対象外ですが(中略)2024年2月、安全対策を盛り込んだ安全性要求事項(中間取りまとめ)をとりまとめました」。https://www.meti.go.jp/product_safety/consumer/system/potaburu-denngenn-youkyuu.html
  • *6 消費者庁「災害時にも活躍する携帯発電機やポータブル電源の事故と停電復旧後の通電火災に注意!」(2024年8月27日・経済産業省/製品評価技術基盤機構と同時発表)=【携帯発電機】「屋内では絶対に使用しないでください。発電機運転中の排ガスには一酸化炭素(CO)が含まれており、屋内で使用すると一酸化炭素(CO)中毒になるおそれがあります」「屋外であっても、自動車内やテント内で使用すると屋内と同等の危険性があります」【ポータブル電源】「落としたりするなど衝撃を与えないようにしてください」「高温環境下での使用は控えてください」「屋外では、防水・防塵性能を有する製品の使用を検討しましょう」【通電火災】「自宅から避難する際に時間的な猶予がある場合は(中略)分電盤のブレーカーを切ってください」「特にヒーターを内蔵した電気ストーブ等の電熱器具は、停電時には電源プラグをコンセントから抜きましょう」。https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_078/
  • *7 自宅(千葉県の戸建て・賃貸中)の修繕実額。2025年6月=屋根修繕、2025年9月=風呂床修繕、2026年3月16日=トイレのボールタップ・フロート交換19,800円(税込・業者請求書)、2026年4月=同トイレの本体交換 本体43,500円(通販購入・領収書)+工事24,200円(税込・業者請求書)、2026年6月=給湯器交換および雨漏り修理。物件の所在地・業者名は非公開。