61.4%熊本地震の益城町中心部で、2000年6月以降に建った木造住宅のうち「無被害」だった割合。1981年6月〜2000年5月の木造は20.4%、それ以前は5.1%(国土交通省 委員会報告書)1981年より2000年を見る(新耐震の家が倒れたとき、そこにあった共通点)
先月の地震のあと、熊本県では被災建築物の応急危険度判定が9,553件行われ、8月13日に終了したことが公表されました(*1)。今また、同じ県で同じ作業が進んでいます。
10年前、同じ熊本で行われた調査は、ひとつの答えを出しています。倒壊・崩壊した「新耐震」の木造住宅のうち、接合部の状況を確認できた89棟は、その全てが、2000年に明確化された接合部の仕様を満たしていませんでした(*2)。
全てです。例外がありませんでした。
中古の家を見に行くとき、多くの人が「1981年より後かどうか」を確認します。今日は、もう一本の線が2000年6月にあることと、その線のどちら側にいるかを自分で確かめる方法を書きます。
1. 数字が分かれているのは、1981年ではなく2000年
国土交通省の委員会は、益城町中心部で日本建築学会が行った悉皆調査(そのエリアの建物を全部見る調査)の結果を、建築確認台帳や航空写真と突き合わせて、建てた時期ごとに集計しました。木造1,955棟の内訳がこれです(*2)。
| 建てた時期 | 無被害 | 軽微〜中破 | 大破 | 倒壊・崩壊 |
|---|---|---|---|---|
| 〜1981年5月(759棟) | 5.1% | 49.1% | 17.5% | 28.2% |
| 1981年6月〜2000年5月(877棟) | 20.4% | 61.2% | 9.7% | 8.7% |
| 2000年6月〜(319棟) | 61.4% | 32.6% | 3.8% | 2.2% |
倒壊率だけを見ると、1981年の線もちゃんと効いています(28.2%→8.7%)。ここは動きません。
ただ、住み続けられたかどうかで見ると、印象が変わります。無被害の割合は5.1%→20.4%→61.4%。1981年から2000年までの間に建った家は、5軒に1軒しか無傷で残っていない。一方、2000年6月以降の家は6割が無被害でした。
「倒れなかった」と「住み続けられた」は別の話です。倒れなくても大破すれば、そこで暮らすことはできません。
2. 1981年は「壁の量」、2000年は「その壁の留め方」
なぜ同じ「新耐震」の中で差がつくのか。改正の中身が違うからです。
- 1981年6月:木造は必要壁量が増えた(*2)。つまり「壁をもっと入れなさい」。
- 2000年6月:つり合い良い壁配置の方法、筋かい及び柱脚柱頭接合部の緊結方法が明確化され、地耐力に応じて採用できる基礎の種類が規定された(*2)。つまり「その壁を、どこに、どう留めるか」。
壁は、柱と土台につながって初めて壁として働きます。留め方が決まっていなければ、揺れたときに柱が土台から抜けます。1981年から2000年までの19年間は、壁の量は足りているのに、留め方が仕様として決まっていなかった区間でした。
だから、倒れた89棟に例外がなかった。これは施工が雑だったという話ではなく、その時代のルールにその項目が無かったという話です。
念のため公平に書いておくと、2000年6月以降の木造でも319棟中7棟が倒壊しています。委員会が図面から原因を追ったところ、3棟は接合部の仕様が不十分、1棟は敷地の崩壊などの地盤変状、残り3棟は図面からは明確な原因が確認できなかった(*2)。年代は保証書ではありません。
3. 国は「1981〜2000の家だけ」を対象にした検証法を作っている
ここが、この記事で一番お伝えしたいところです。
国土交通大臣指定の耐震改修支援センターである日本建築防災協会は、2017年に「新耐震木造住宅検証法」という手順を公表しています。その適用範囲は、はっきりこう書かれています(*3)。
昭和56年6月以降、平成12年5月までに建築された木造住宅
まさにこの19年間だけを対象にした道具が、国の側に用意されている。「新耐震なら確認しなくていい」という立場は、少なくとも制度の側は取っていません。
しかもこの検証法は、最初のステップを所有者本人がやる設計になっています。専門家に頼む前の、チェック1〜4がこれです(*3)。
- 平面・立面が比較的整形か(1階が駐車場でせり出している等でないか)
- 柱頭・柱脚に接合金物があるか
- 1階の外周4面それぞれで、窓やドアのない壁の割合が0.3以上あるか
- 劣化していないか(外壁・屋根・基礎・床の傾き・浴室の作り の5項目)
2番の確かめ方まで書いてあります。押入れの天袋にある点検口から、懐中電灯で小屋裏や天井裏を照らし、柱と梁・土台の接合部に金物が使われているか目視する。外壁側は金物が見えないことが多いので、筋かいが付いている内部の間仕切り壁の柱で見るとよい、とあります。ひとつ注意があって、「かすがい」(コの字の釘)は金物として評価されません(*3)。
そして、ここも公平に。接合部の仕様が明確化されていなかった1981年当時でも、住宅金融公庫の木造住宅工事仕様書ではCP-T・CP-Lといった接合金物が推奨されており、実際に使われている事例が確認されている(*3)。当時に公庫融資を受けて建てた家は、第三者の設計審査と現場検査も入っています。
つまり1981〜2000は、「危ない年代」ではなく「当たり外れが仕様で担保されていない年代」です。だから見る価値がある。
4. お金の制度の線は、いまも1981年のまま
ここは大家側に回ると、はっきり見えるところです。税と保険の線引きは、命の線とズレたままになっています。
- 住宅ローン控除:中古住宅の要件は「昭和57年1月1日以後に建築されたもの」(*4)。1982年以降なら、それだけで新耐震基準に適合しているものとして扱われます。2000年は出てきません。
- 地震保険の建築年割引:「昭和56年6月1日以降に新築された建物」で10%(*5)。1981年6月以降なら、1985年築でも2005年築でも同じ10%です。
- 住宅の耐震化率:全国で約90%(令和5年・戸建てだけなら約85%)。その内訳を見ると、S56以降の約4,390万戸がまるごと「耐震性あり」に計上されています(*6)。
一方で、制度が2000年より後を評価する入口も、ちゃんと1つあります。地震保険の耐震等級割引です。等級1で10%、等級2で30%、等級3で50%(*5・他の割引との重複はできません)。
そして先ほどの熊本の調査では、住宅性能表示を活用した木造19棟のうち、耐震等級3だった16棟は14棟が無被害、2棟が軽微または小破でした(*2)。保険料が半分になる指標と、実際に無被害で残った家が、同じ方を向いている。数少ない、素直な指標です。
5. 2026年4月、3本目の線が引かれました
もうひとつ、今年の話を。
省エネ化で断熱材や設備が増え、家そのものが重くなっている。重い家には、その分の壁が要る。この理由で、木造建築物の必要壁量等の基準が見直されました。令和6年5月31日公布・令和7年4月1日施行、そして従来の壁量基準を使える経過措置は令和8年(2026年)3月で終了しています(*7)。
新しい考え方では、必要壁量を一律の数字で決めず、その建物の実際の仕様(重さ)に応じて算定します。
これから建てる家、これから買う新築を見るときは、1981・2000に続く3本目の線が2025〜2026年にあると思っておくと、話が早いです。
6. 手元の3棟を、実際に開いてみました
この記事を書くにあたって、千葉県で運営している戸建て3棟の登記事項証明書を出して、表題部の「原因及びその日付」欄を見ました。結果はこうです。
- 1棟:昭和63年10月27日新築(1988年)
- 1棟:平成6年10月31日新築(1994年)
- 1棟:新築年月日の記載がない。最初に出てくる記録が「昭和56年9月1日 変更、増築」で、本体はそれ以前に建っています。
2棟が、ちょうど例の19年間の中でした。買うときに自分が見ていたのは表面利回りと再建築の可否で、この欄を「2000年より前か後か」という目で読んだことは、正直ありませんでした。
3棟目のように、登記に新築年月日が書かれていない建物もあります。この場合、先ほどの住宅ローン控除の「昭和57年1月1日以後」という判定も書類上できないことになり、買う人は別途、耐震基準への適合を証明する書類を用意する必要が出てきます。登記は万能ではないので、建築確認済証・検査済証が残っているかも合わせて聞いてください。
今日の1歩
登記事項証明書か建築確認済証を出して、建築年月日を1つ確定させる。それだけです。持ち家なら手元にあります。検討中の物件なら、不動産会社に「建築確認済証と検査済証はありますか」と聞けば済みます。
出てきた日付が1981年6月〜2000年5月だったら、次の休みに押入れの天袋の点検口を懐中電灯で覗いて、柱の接合部に金物があるか写真を撮る。金物があれば、それは検証法のチェック2を自分でクリアしたということです。
家具を固定する話は家具固定を1箇所だけやるならどこかに、地面の側の話はハザードマップは3枚重ねて見るに書きました。建物・地面・中身の3つが揃って、はじめて「先回り」になります。
なお、この築年の判定を何番目に見るか——貸す側が候補の家をどの順番でふるいにかけているかは、大家は貸す前に家のどこを潰しているかにまとめました。築年は3番目です。1番目と2番目は、内見では見えないところにあります。
※本記事は公開されている法令・行政資料に基づく一般的な情報です。個別の建物の耐震性能の判断、税制の適用、保険契約の内容については、耐震診断を行う専門家・税務署または税理士・保険会社等にご確認ください。
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出典
- *1 国土交通省「令和8年熊本地震による被害状況等について(第48報)」(令和8年8月23日10:00現在)https://www.mlit.go.jp/common/002017986.pdf
- *2 国土交通省「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会 報告書」3.被害状況・被害要因等の分析(表3.2-2、図3.2-11、3.3.4まとめ)https://www.mlit.go.jp/common/001287789.pdf
- *3 一般財団法人 日本建築防災協会(国土交通大臣指定耐震改修支援センター)「新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法(新耐震木造住宅検証法)」平成29年5月 https://www.mlit.go.jp/common/001184898.pdf
- *4 国税庁 タックスアンサー No.1211-3「中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1211-3.htm
- *5 財務省「地震保険制度の概要」https://www.mof.go.jp/policy/financial_system/earthquake_insurance/jisin.htm
- *6 国土交通省「住宅の耐震化率(全国)」(現状値:令和5年/総務省「住宅・土地統計調査」をもとに国土交通省推計)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001864405.pdf
- *7 国土交通省「木造建築物における省エネ化等による建築物の重量化に対応するための必要な壁量等の基準について」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000166.html