困ってから調べるの、遅いです。
ハザードマップは3枚重ねて見る(洪水・土砂・液状化)(イメージ)20,451千葉県の土砂災害警戒区域(国土交通省・2026年6月30日時点)
住まい編

ハザードマップは3枚重ねて見る(洪水・土砂・液状化)

先回り大家最終確認 2026-08-14

内閣府の世論調査(令和7年8月調査)で、火災保険や火災共済に水害補償を付けていない人は56.6%。その人たちが挙げた理由の1位は、保険料でも手続きでもなく、「自宅周辺で水害は起こらないと思うから」30.5%でした(*1)。

「思う」であって、「地図で確かめた」ではありません。同じ調査で、充実してほしい情報の1位に「居住地域の災害危険箇所を示した地図やハザードマップ」54.1%が挙がっています(*1)。欲しいと言われている地図は、すでに全国分が無料で公開されています。見に行っていないだけです。

だからこの記事は、地図の読み方を網羅しません。開くサイトは1つ、重ねる図は3枚。それだけ決めて、今日10分で終わらせます。

結論:国土交通省の「重ねるハザードマップ」で、洪水・土砂・液状化を重ねる

見るのは国土交通省・国土地理院のハザードマップポータルサイトです。トップから「重ねるハザードマップ」に入り、住所を入れて、次の3枚を順に重ねます。

  1. 洪水(洪水浸水想定区域。内水・高潮も同じ枠で見る)
  2. 土砂災害(土砂災害警戒区域=土石流・急傾斜地の崩壊・地すべり)
  3. 液状化(地形区分に基づく液状化の発生傾向図)

サイト自身の説明は「洪水・土砂災害・高潮・津波のリスク情報、道路防災情報、土地の特徴・成り立ちなどを地図や写真に自由に重ねて表示します」です(*2)。1枚ずつ別のサイトを探す必要はありません。

なぜ「3枚」なのか:不動産取引で自動的に出てくるのは、2枚だけだから

ここが本題です。家を買う・借りるときに、向こうから説明される災害情報と、されない災害情報がある

洪水は、説明されます。 宅地建物取引業法施行規則が改正され、令和2年8月28日から、水防法に基づく水害(洪水・雨水出水・高潮)ハザードマップを提示して「対象物件の概ねの位置を示すこと」が重要事項説明で義務づけられました(*3)。市町村が配布する印刷物か、市町村のホームページに掲載されているものを印刷したもので、入手可能な最新のものを使うことまで定められています(*3)。

土砂災害も、説明されます。 土砂災害警戒区域では、宅地建物取引業者は売買等にあたり警戒区域内である旨について重要事項の説明を行うことが義務づけられています(*4)。

液状化は、名指しの項目になっていません。 つまり3枚目は、自分で見るしかない。私が「3枚」と言い続けるのは、この非対称があるからです。(個別の取引で何をどこまで説明されるかは、契約前に宅地建物取引業者へ直接ご確認ください。)

1枚目・洪水:色ではなく「深さ」と「逃げ先」を見る

塗られているかどうかだけを見て終わる人が多いところです。見るのは3点。

  • 想定される浸水の深さ。同じ色の帯の中でも、1階の床上で止まるのか、1階が水没するのかで、住み方も避難の判断も変わります。
  • 家から出て、どちらへ動けば区域の外に出るか。国土交通省は重要事項説明の際、ハザードマップ上の避難所の位置も併せて示すことが望ましいとしています(*3)。示されなければ、自分で地図上を指でなぞってください。
  • 想定最大規模と計画規模は別の図であること。ポータルには「洪水浸水想定区域(想定最大規模)」と「計画規模」が別レイヤで載っています(*5)。厳しい側(想定最大規模)で確認しておきます。

2枚目・土砂:「千葉は平らだから関係ない」は通じない

私は千葉県で戸建てを3棟貸しています。千葉は平野の県だと思われがちですが、国土交通省の集計(2026年6月30日時点)では、千葉県の土砂災害警戒区域は20,451区域あります。うち19,619区域が「急傾斜地の崩壊」、そして19,335区域が土砂災害特別警戒区域です(*6)。全国では721,014区域(うち特別警戒区域621,287)。「山の県の話」ではありません。

見るべきは2段階の色の違いです。

  • 警戒区域(通称イエロー)=崩壊等で住民等の生命・身体に危害が生ずるおそれがある区域。危険の周知と警戒避難体制の整備が行われます(*4)。
  • 特別警戒区域(通称レッド)=建築物に損壊が生じ、生命・身体に著しい危害が生ずるおそれがある区域。特定開発行為の許可制と建築物の構造規制がかかります(*4)。

レッドは、住み方だけでなく建て替えと売却のときの選択肢に効いてきます。千葉県の数字で言えば、警戒区域に入っている土地の大半はすでに特別警戒区域です。「イエローだから軽い」という前提で見に行くと外します。

3枚目・液状化:同じ場所が、繰り返す

液状化は、揺れの大きさより土地の成り立ちで決まります。だから地図で先に分かる余地が大きい。

国土交通省が公開している「地形区分に基づく液状化の発生傾向図」は、250m×250mのメッシュを基に、地形が示す一般的な地盤特性に対応した相対的な液状化の発生傾向の強弱を5段階で表したものです(*7)。東日本大震災では9都県で約27,000件の液状化による宅地被害が発生しています(*8)。

そして千葉県は、この「繰り返す」ことを自分の県の記録として書いています。1987年の千葉県東方沖地震で液状化した地域で、東日本大震災(2011年)で再び液状化が発生したところが多くありました(*9)。過去に起きた場所は、次も候補です。

ただし、この図には限界も明記されています。「本図で液状化の発生傾向が弱い場合でも、その区域にある埋立地等の人工改変地の特定の地点では、地震時に液状化が発生する可能性があります」「特定の地震や震度を考慮した液状化危険度を示したものではありません」(*7)。250mメッシュは、隣の区画までは見分けません。弱い=安全、ではなく、弱い=この方法では強く出ていない。県が出している液状化しやすさマップ(千葉県は公開しています)と併せて見るところまでが3枚目です(*9)。

大家として言えること:地図→現地→価格の順を、崩さない

私が千葉県で3棟を買うとき、そして2026年8月に4棟目を検討したときにやった順番は、いつも同じです。まず地図、次に現地、最後に価格。

順番を逆にすると、必ず値段に引っ張られます。4棟目の検討では、売出価格1,000万円の戸建てに対して「700万円なら買う」というところまで判断を詰めました。地図を先に見ていたから、値段の話を数字で終わらせられた。地図を後にすると、「安いから」で説明のつかない決断をします。

もう1つ。重ねるハザードマップは全国横断で見るための図で、法令に基づく詳細版は市町村が作っています。 ポータルの「わがまちハザードマップ」から、市町村が法令に基づき作成・公開したハザードマップにリンクしています(*2)。全国版で当たりを付け、市町村版で確定する。この2段構えにしてください。

今日やること(3行)

  1. ハザードマップポータルサイトを開き、住所を入れて洪水・土砂災害・液状化の3枚を重ねる
  2. 洪水は深さと逃げる方向、土砂はイエローかレッドか、液状化は県のマップと突き合わせまで見る
  3. 契約前なら、水害ハザードマップ上の物件位置を示すのは義務(令和2年8月28日〜)だと知ったうえで説明を受ける

3枚重ねて10分。家賃と駅距離を比べる時間より、確実に短い。困ってから調べるの、遅いです。


出典

  • *1 内閣府「防災に関する世論調査(令和7年8月調査)」調査時期=令和7年8月21日〜9月28日、郵送法、有効回収数1,707人。水害補償の付帯=「加入している」41.1%/「加入していない」56.6%。加入していない理由(該当967人)=「自宅周辺で水害は起こらないと思うから」30.5%、「保険料が高くなると思うから」25.9%、「自宅周辺で水害が起きても自宅建物や家財は被害を受けないと思うから」19.5%。充実してほしい情報=「居住地域の災害危険箇所を示した地図やハザードマップ」54.1%、「避難場所・避難経路」50.3%。https://survey.gov-online.go.jp/public_safety/202510/r07/r07-bousai/
  • *2 国土交通省・国土地理院「ハザードマップポータルサイト」=「洪水・土砂災害・高潮・津波のリスク情報、道路防災情報、土地の特徴・成り立ちなどを地図や写真に自由に重ねて表示します」/「わがまちハザードマップ」=「市町村が法令に基づき作成・公開したハザードマップへリンクします」。https://disaportal.gsi.go.jp/
  • *3 国土交通省 報道発表「不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化〜宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する命令の公布等について〜」=公布 令和2年7月17日/施行 令和2年8月28日。対象=水防法(昭和24年法律193号)に基づき作成された水害(洪水・雨水出水・高潮)ハザードマップ。「対象物件の概ねの位置を示すこと」「市町村が配布する印刷物又は市町村のホームページに掲載されているものを印刷したものであって、入手可能な最新のものを使うこと」「ハザードマップ上に記載された避難所について、併せてその位置を示すことが望ましいこと」。https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000205.html
  • *4 国土交通省 砂防「土砂災害防止法」=土砂災害警戒区域=危険の周知・警戒避難体制の整備/土砂災害特別警戒区域=特定開発行為に対する許可制・建築物の構造規制/警戒区域では「宅地建物取引業者は、当該宅地または建物の売買等にあたり、警戒区域内である旨について重要事項の説明を行うことが義務づけられ」る。https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sabo/sabo01_tk_000015.html
  • *5 国土交通省・国土地理院「重ねるハザードマップ」掲載データ一覧=洪水浸水想定区域(想定最大規模)/洪水浸水想定区域(計画規模)/土砂災害警戒区域(土石流・急傾斜地の崩壊・地すべり)等。https://disaportal.gsi.go.jp/hazardmap/copyright/opendata.html
  • *6 国土交通省「全国における土砂災害警戒区域等の指定状況(2026年6月30日時点)」=全国 計721,014区域(うち土砂災害特別警戒区域621,287)。千葉県 計20,451区域(土石流647/急傾斜地の崩壊19,619/地すべり185、うち土砂災害特別警戒区域19,335)。https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sabo/linksinpou.html
  • *7 国土交通省「地形区分に基づく液状化の発生傾向図等」=「250m×250mのメッシュデータ(防災科学技術研究所(J-SHIS)で公開)を基に、地形が示す一般的な地盤特性に対応した相対的な液状化の発生傾向の強弱を5段階区分で表したもの」/「本図で液状化の発生傾向が弱い場合でも、その区域にある埋立地等の人工改変地の特定の地点では、地震時に液状化が発生する可能性があります」/「特定の地震や震度を考慮した液状化危険度を示したものではありません」。https://www.mlit.go.jp/toshi/toshi_tobou_tk_000038.html
  • *8 国土交通省 報道発表「みなさん、液状化にはご注意ください!」(令和2年12月16日)=「東日本大震災では9都県において、約27,000件の液状化による宅地被害が発生」。https://www.mlit.go.jp/report/press/toshi06_hh_000069.html
  • *9 千葉県「液状化現象」=「千葉県東方沖地震(1987年)で液状化した地域においても、平成23年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)で再度液状化が発生したところが多くありました。」/千葉県「液状化しやすさマップ」。https://www.pref.chiba.lg.jp/bousaik/jibun/chishiki/ekijyouka.html