2m建築基準法第43条第1項は、建築物の敷地は道路に2メートル以上接しなければならない、と定めている。同条第3項は、第1項の目的を「避難又は通行の安全」と呼んでいる(e-Gov法令検索・建築基準法)。大家は貸す前に家のどこを潰しているか(最初に見るのは、間取りではなく道です)
建築基準法の条文を、そのまま引きます。
建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。……)に二メートル以上接しなければならない(第四十三条第一項)(*1)
そして同じ条文の第3項は、自治体が条例で制限を上乗せできる場合を定めた項なのですが、そこで第1項の目的をこう呼んでいます。
第一項の規定によつては避難又は通行の安全の目的を十分に達成することが困難であると認めるとき(*2)
避難、です。接道義務は資産価値の話として語られることが多いのですが、法律の側は、資産価値ではなく避難を先に書いています。
私は千葉県で戸建てを3棟貸しています。候補の家を見るとき、最初に開くのは間取り図でも室内写真でもありません。接道状況の欄です。ここで落ちる家は、写真がどれだけ良くても、そこで終わりです。
今日は、その順番をそのまま出します。借りる人・買う人には見えないところで、家はもう何度もふるいにかけられているという話で、それは裏を返せば、あなたが内見の1時間で何を見れば足りるのかという話でもあります。
1. 落とす順は「速い順」に並んでいる
私が使っている判断表は、重要な順ではなく、落ちるのが速い順に並べてあります。上から3つで大半が消えるので、時間をかけるのは4番目以降だけです。
| 順 | 見るもの | どこで分かるか |
|---|---|---|
| 1 | 接道状況 | 物件詳細ページの「接道状況」欄。再建築不可はここに一発で出る |
| 2 | 土地の権利 | 同じ欄の「土地権利」。所有権か借地権か |
| 3 | 建築確認日 | 1981年6月1日以降か(築年月は目安。判定は確認日。築年月しか出ていなければ確認済証の日付を聞く) |
| 4 | 道の「形」 | 地図と現地。数値では絶対に拾えない |
| 5 | ハザード | 土砂・洪水・内水・高潮の4項目 |
| 6 | 直すのにいくらかかるか | 見積り |
この6つを通すのに、慣れれば数十秒から数分です。逆に言うと、私の候補は、上の3つだけで数十秒のうちに大きく絞られます。
2. なぜ道が最初なのか(意味が2つある)
1つ目は、建て直せるかどうか。 建築基準法でいう「道路」は、原則として幅員四メートル以上のものを指します(*3)。ここに2メートル以上接していない土地は、原則として、いま建っている家を壊すと次を建てられない扱いになります。これがいわゆる再建築不可です(第43条第2項に、特定行政庁の認定・許可による例外があります)。その土地で建て直せるかどうかは、宅地建物取引業者か自治体の建築指導の窓口に確認してください。
2つ目は、災害のときに逃げられるか、入って来られるか。 冒頭の第43条第3項が「避難」と呼んでいる側です(*2)。幅員4メートル未満の道でも「道路とみなす」扱いがあり、その場合は中心線から水平距離2メートルの線を道路の境界線とみなす、とされています(6メートル区域では3メートル。ただし特定行政庁が「避難及び通行の安全上支障がない」と認めれば2メートル)。線をどこまで下げるかの条件にも、避難と通行の安全という語が使われています(*4)。下がった分は、建築基準法の上では道路として扱われ、建物や擁壁を建てられなくなります(所有権が移るわけではありませんが、自分の敷地として使えない部分になる、という意味です)。個別の扱いは、自治体の建築指導の窓口か宅地建物取引業者に確認してください。
道が狭い家は、資産としても弱いし、消防車や救急車が近くまで来られるかという意味でも弱い。この2つが同じ1行で判定できるから、最初に見ます。
3. 数値では絶対に拾えない項目が、1つだけある
4番目の「道の形」です。ここだけは、地図と現地を目で見るしかありません。
- 斜めに接している
- 旗竿地(細い通路の奥に敷地がある形)
- 不整形
幅員も間口も条件を満たしているのに、この形のせいで実際には車が入れない、という家があります。私は数字の表では拾えず、地図と写真を開いて初めて落とした物件があります。
ここは、借りる側でも同じ精度でできます。 内見のあと、家の前の道を両方向に50メートルだけ歩いてください。曲がれるか、行き止まりか、対向車とすれ違えるか。1分で分かります。この1分は、間取りを2周見るより価値があります。
4. 築年は「1981年6月」で切る
3番目の築年は、迷いません。1981年6月1日以降に建築確認を受けたかどうか、の1本です(築年月ではなく、確認日で見ます)。ここが分かれ目になる理由と、さらにもう一段ある「2000年」の話は、1981年より2000年を見るに分けて書きました。
貸す側から言うと、これは値段の話ではなく引き受けられるリスクの話です。古い家を安く買うこと自体は否定しません。ただ、そこに人が住むことになる以上、耐震の年代だけは値引きで埋められません。
5. ハザードは、感想ではなく4項目で見る
5番目は、土砂・洪水・内水・高潮の4項目です。私はこれを地図の色で機械的に判定していて、現地の印象では判断しません。晴れた日の内見で水害の危険は見えないからです。
重ね方はハザードマップは3枚重ねて見るに、区域指定の調べ方は土砂災害警戒区域の調べ方に、敷地の高低差がある場合の見方は築30年の擁壁は潜在債務に書いています。この3本は、貸す側が候補を見るときに使っている手順を、一般の家向けに書き直したものです。
6. 「直す費用」で線を引くから、貸す前に何を直すかが決まる
6番目は見積りです。私は年間賃料の3分の1以内で貸せる状態になるか、という線を引いています。この線を超える家は買いません。
そして、この線があるから、買ったあとに何を直すかの順番も決まります。私がこの1年で実際にやった修繕は6件です。
- 2025年6月 屋根
- 2025年9月 風呂の床
- 2026年3月 トイレの修理
- 2026年4月 トイレの交換(本体43,500円)
- 2026年6月 給湯器の交換
- 2026年6月 雨漏りの修理
戸建て3棟で、1年に6件。 これが実際の頻度です。「築古を買って貸す」という話を聞くとき、この頻度と金額が抜けていることが多いのですが、抜けている部分は、貸す側が先に直しているか、壊れたときに誰がいつ直すかが決まっていなければ、そのまま暮らしが止まる回数になります。給湯器が止まれば風呂が使えず、雨漏りは天井から下の家財に及びます。だから見るところは、次の1点です。
借りる側が見るべきなのは、設備が新しいかどうかよりも、「壊れたときに誰がいつ直すのか」が契約と管理の形として決まっているかです。
7. 向こうから来ない情報でも、聞けば来る
ここからは、内見や契約の前に「聞いていいこと」の話です。
国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年10月)に、こう書かれています。
人の死に関する事案が生じたことを疑わせる特段の事情がないのであれば、人の死に関する事案が発生したか否かを自発的に調査すべき義務までは宅地建物取引業法上は認められない(*5)
調査の方法についても、こうあります。
売主・貸主に対して、告知書(物件状況等報告書)その他の書面(……)に過去に生じた事案についての記載を求めることにより、媒介活動に伴う通常の情報収集としての調査義務を果たしたものとする(*5)
つまり、疑わせる事情がない限り、業者の調べ方は貸主・売主(と管理業者)への書面での確認までで足りる、という整理です。業者が近隣に聞き込みに回る、という前提ではありません(貸主・売主が事実を書かなかった場合にどうなるかは別の話で、この記事では扱いません)。
ところが、同じガイドラインには、これと対になる一文が入っています。
人の死に関する事案の発覚から経過した期間や死因に関わらず、買主・借主から事案の有無について問われた場合や、その社会的影響の大きさから買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合等には、当該事案は取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられるため、宅地建物取引業者は、前記3.の調査を通じて判明した点を告げる必要がある(*5)
向こうから来るのは、制度が「告げる」と決めた範囲。それ以外でも、聞けば、調べて分かった範囲は出てくる。 これがこの制度の形です。ガイドラインは、対象の家で起きた自然死や日常生活の中での不慮の死、賃貸で概ね3年を過ぎた事案などを「告げなくてもよい」場合として挙げています(*5)。それ以外の事案は、聞かなくても告げる対象です。そして「告げなくてもよい」側に入る事案も、借りる人・買う人が聞けば、期間や死因に関わらず、調べて分かった範囲は告げる、と書かれています(*5)。
期間の扱いにも差があります。ガイドラインは、賃貸借取引について「概ね3年間を経過した後は、原則として、借主に対してこれを告げなくてもよい」という目安を示していますが、同じ期間の目安は売買取引については示されていません(*5)。借りる場合には「概ね3年」という目安がある一方、買う場合には「時間が経ったから告げなくてよい」という目安は置かれていない、ということです。
なお、ガイドラインは告げる場合でも、亡くなった方の氏名・年齢・住所・家族構成や、具体的な死の態様・発見状況などまでは告げる必要がない、としています(*5)。亡くなった方とご遺族の名誉と生活の平穏に十分配慮する、と同じガイドラインに明記されているからです。この記事も、事案の中身を知るための話ではありません。持ち帰るのは「契約の前に、事案の有無を聞いていい。聞けば、制度上答えられる範囲は答えてもらえる」の一点だけです。
個別の取引でどこまでが告知の対象になるかは事案によって変わります。判断は宅地建物取引業者に確認してください。
8. 内見で聞く7つ(私が業者に投げているもの)
私が候補を1つに絞ったあと、買う前提で業者に投げている質問です。借りる人は全部を聞く必要はありません。1と2(前の道の話)と7(直すべき箇所)を口頭で聞き、設備が壊れたときの窓口と費用負担を確かめれば足ります。
- 前面道路の建築基準法上の道路種別。書面で。
- 間口の幅(2メートル以上あるか)
- 私道の場合、持分の有無と共有者の数
- 掘削承諾があるか(水道・ガスの引き直しに要ります)
- 重要事項説明での再建築可否の記載
- 越境と境界明示の有無
- 直すべき箇所の見積り
このうち1番に「書面で」と付けているのには理由があります。口頭の回答は、あとで確かめようがないからです。 借りる立場でも、設備の不具合と修繕の窓口については、同じように書面で残しておくと後が楽です。
まとめ
- 最初に見るのは間取りではなく道。接道義務の目的を、法律の側は「避難又は通行の安全」と呼んでいる(*2)
- 落とす順は速い順。接道・土地権利・築年で大半が消える
- 道の形は数値で拾えない。内見の帰りに前の道を両方向へ50メートル歩く
- ハザードは印象ではなく4項目で見る
- 向こうから来るのは制度が「告げる」と決めた範囲。それ以外も、聞けば制度上答えられる範囲は答えてもらえる(*5)
- 道路種別は書面でもらう
家を選ぶときに大家が使っているのは、特別な情報網ではありません。見る順番が決まっているだけです。順番さえ同じにすれば、借りる側でも同じところに手が届きます。
賃貸で入居後にできる備えは、賃貸で穴を開けずにやる耐震と家具固定を1箇所だけやるならどこかに書きました。
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出典
- *1 建築基準法 第四十三条第一項(敷地等と道路との関係)=「建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。」e-Gov法令検索(法令ID 325AC0000000201)https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
- *2 建築基準法 第四十三条第三項=「地方公共団体は、次の各号のいずれかに該当する建築物について、その用途、規模又は位置の特殊性により、第一項の規定によつては避難又は通行の安全の目的を十分に達成することが困難であると認めるときは、条例で、その敷地が接しなければならない道路の幅員……に関して必要な制限を付加することができる。」出典同上
- *3 建築基準法 第四十二条第一項(道路の定義)=「この章の規定において『道路』とは、次の各号のいずれかに該当する幅員四メートル(……)以上のもの(地下におけるものを除く。)をいう。」出典同上
- *4 建築基準法 第四十二条第二項=「……現に建築物が立ち並んでいる幅員四メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の道路とみなし、その中心線からの水平距離二メートル(同項の規定により指定された区域内においては、三メートル(特定行政庁が周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認める場合は、二メートル)。以下この項及び次項において同じ。)の線をその道路の境界線とみなす。」/道路内の建築制限=同法 第四十四条第一項。出典同上
- *5 国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」令和3年10月(公表 令和3年10月8日)=「3.調査について(1)調査の対象・方法」「4.告知について(1)②」「同(3)買主・借主から問われた場合及び買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合等」「同(4)留意事項」 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001426603.pdf