困ってから調べるの、遅いです。
住まい編

家具固定を1箇所だけやるならどこか

先回り大家最終確認 2026-08-13

内閣府の世論調査(令和7年8月調査)で、大地震に備えて「家具・家電などを固定し、転倒・落下・移動を防止している」と答えた人は37.6%。そして固定していない人が挙げた理由の1位は、「面倒だから」でも「お金がかかるから」でもなく、「やろうと思っているが先延ばしにしてしまっているから」38.2%でした(*1)。

つまり、多くの家で足りていないのは知識でも予算でもなく、最初の1箇所を決めることです。だからこの記事では家中の話をしません。1箇所だけ決めて、今日終わらせます。

結論:寝ている場所に倒れてくる、いちばん背の高い家具

1箇所しかやらないなら、あなたが寝ている場所に向かって倒れてくる、いちばん背の高い家具です。寝室の本棚、タンス、食器棚、キャスター付きの棚、テレビ台の上の大きなテレビ。順番はそこから動かしません。

理由は2つあります。

1つめ。家具は「けがの主因」として実測されています。 東京消防庁は、近年発生した大きな地震によるけが人のうち約3割から5割が家具類の転倒・落下・移動が原因でけがをした、と公表しています(*2)。さらに遡ると、阪神・淡路大震災の犠牲者について内閣府の防災白書は「犠牲者8割が窒息死圧死」と記し、同じ内閣府の教訓情報資料集は「死因のほとんどは、家屋の倒壊や家具などの転倒による圧迫死だった」と書いています(*3、*4)。家具は、地震対策の中で優先順位が低い項目ではありません。

2つめ。寝ている間は、避けるという選択肢が存在しません。 起きている時間なら、机の下に入る・離れるという判断ができます。眠っている数時間はそれができない。同じ1箇所の工事なら、判断できない時間帯を守る場所に使うべきです。東京消防庁も、対策の基本として「寝る場所にはなるべく家具を置かないようにしましょう」と明記しています(*5)。

何で留めるか:正解は最初から公表されている

固定器具の優劣は、もう答えが出ています。東京消防庁は「最も効果の高い家具転対策器具はネジで固定するもの(L型金具等)」としています(*5)。迷う時間は不要です。壁の下地にネジで留められる状況なら、L型金具を選んでください。

問題は「壁に穴を開けられない」場合です。前掲の内閣府調査で、固定していない理由の3位は「家具や壁などに傷をつけるから」17.8%でした(*1)。賃貸で止まっている人がここに固まっています。

ここにも公的な答えがあります。東京消防庁は、穴を開けなくて済む器具を2つ以上組み合わせる方法を示しており、「ストッパー式器具(もしくは粘着マット式)とポール式器具を2つ組み合わせることで、一番効果の高いL型金具と同等の効果を発揮します」としています(*5)。

つまり賃貸の最初の1箇所は、こうなります。

  • 家具の下の前側に、ストッパー式(または粘着マット式)を入れる
  • 家具の上と天井の間に、ポール式(突っ張り式)を入れる
  • この2つをセットで使う。片方だけでは、この「L型金具と同等」には届きません

「1個で済ませたい」が、いちばん損な選択です。2個で1セット、と覚えてください。原状回復と耐震の両立(どこまでが通常損耗で、どこからが借主負担になり得るのか)は、それ自体で1本必要な話なので別記事で扱います。ここでは、穴を開けられなくても手が止まる理由はないという事実だけ持ち帰ってください。

配置も「1箇所」に含めていい

金具を買う前に、無料で終わる作業が2つあります。どちらも東京消防庁が対策の基本として挙げているものです(*5)。

  1. 寝る場所に、背の高い家具が倒れてこない向きに変える。 頭側に本棚があるなら、それを足側や別の壁に動かすだけで、その家具は「1箇所」の候補から外れます。
  2. 避難通路と出入り口付近から、倒れやすい・動きやすい家具をどかす。 「避難通路や、出入り口付近には、転倒、移動しやすい家具類を置かないようにしましょう」。倒れた家具でドアが開かなくなると、けがをしていなくても外に出られません。

買い物より模様替えのほうが早く終わることは、よくあります。

大家として言えること:家具は、貸す側が固定できない

私は千葉県で戸建てを3棟、貸しています。設備の不具合が出れば大家の負担で直します。屋根、風呂の床、トイレ、給湯器、雨漏り。この1年でひととおり払いました(2026年4月のトイレ交換は本体だけで¥43,500。実額と経過は修繕シリーズで別に書きます)。

一方で、入居者の家具は、私には固定できません。所有物であり、置き方を決めるのも入居者です。だから貸す側にできるのは、家具が倒れても人と出口に当たりにくい部屋を渡すことまでで、そこから先は住む人の手に完全に渡ります。

これは借りる側にとって、内見のときに使える視点になります。図面を見て、次の3つだけ確認してください。

  • ベッド(布団)を置ける壁が、背の高い家具を置く壁と同じ面しかない部屋か。同じ面しか選べない部屋は、入居後にできる対策が減ります。
  • 部屋の出入り口の正面に、家具の定位置が来ないか。ここに背の高い家具が来る間取りは、倒れたときに出口をふさぎます。
  • どこの壁ならネジを打っていいか(打っていい壁があるか)。契約前に管理会社へ確認できる項目です。禁止と分かれば、最初からストッパー+ポールの2個併用で組めます。

家賃と駅距離は誰でも見ます。倒れる方向を見る人は、ほとんどいません。

今日やること(3行)

  1. 寝ている場所に向かって倒れてくる、いちばん背の高い家具を1つ決める
  2. ネジが打てるならL型金具。打てないならストッパー式(または粘着マット式)+ポール式の2個併用
  3. ついでに、出入り口の正面から倒れやすい家具をどかす

家中を完璧にする計画は、38.2%の「先延ばし」に吸い込まれます。1箇所だけ、今日決めてください。困ってから調べるの、遅いです。

なお、我が家(3棟の物件側と自宅)に実際に何を配備して、いくらかかったのかは、実物と購入額を並べて別記事で公開します。感想ではなく明細を出します。


出典