困ってから調べるの、遅いです。
寝室に置いていいものと、置いてはいけないもの(就寝中から逆算する)(イメージ)1時25分平成28年熊本地震の本震の発生時刻。最大震度7を観測した近年の地震のうち、阪神・淡路大震災は午前5時46分、熊本地震の本震は午前1時25分、北海道胆振東部地震は午前3時7分。いずれも、多くの人が寝ている時間帯だった(気象庁・内閣府)
眠り編

寝室に置いていいものと、置いてはいけないもの(就寝中から逆算する)

先回り大家最終確認 2026-08-26

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阪神・淡路大震災の発生は、平成7年1月17日 午前5時46分でした(*1)。平成28年熊本地震の本震は4月16日 午前1時25分(*2)。平成30年北海道胆振東部地震は9月6日 午前3時7分(*3)。最大震度7を観測した近年の地震のうち、この3つは、多くの人が寝ている時間帯に起きています。

阪神・淡路大震災の犠牲者は、その約8割が窒息死・圧死でした(*4)。

つまり、家の中の地震対策には、起きている自分ではなく、寝ている自分を守るという側面があります。今日はそこから逆算して、寝室に置いていいものと、置いてはいけないものを分けます。

1. 「全部は無理」は、国の資料の側が先に認めています

内閣府の令和7年8月の世論調査では、大地震に備えて「家具・家電などを固定し、転倒・落下・移動を防止している」と答えた人は37.6%でした(*6)。

ここから先が、あまり紹介されない数字です。そう答えた641人に「どの程度までできているか」を聞いた結果が、こうなっています(*6)。

  • ほぼ全ての家具・家電などの固定ができている … 8.4%
  • 重量又は高さのある家具・家電などの固定はできている … 30.6%
  • 重量又は高さのある家具・家電などの一部の固定はできている … 58.8%

固定していると答えた人の6割近くが、「一部」です。37.6%と8.4%を単純に掛け合わせると、家じゅうの家具を固定し終えている人は全体の約3%という計算になります(この掛け算は私が両方の設問から出した目安で、調査が直接その割合を示しているわけではありません)。

そして東京消防庁のハンドブックは、この状態を前提にした答えを、質問への回答という形で書いています(*5)。

すべての家具に対策を行うことが最も安全ですが、すべての家具に行うことが困難であれば、寝室などに家具を置かないことや、家具の倒れる方向を考慮した家具の置き方にするなどの工夫をした上で、重量や高さのある家具を優先に、出来る家具から順番に対策を実施してください

全部やれ、とは書かれていません。困難なら寝室から、と順番が書かれています。 「一部しかできていない」58.8%の側に立って読むと、この一文が実質的な手順書になります。

2. 寝室は「寝る部屋」ではなく、家の中の安全スペースです

同じハンドブックには「家の安全スペース」という項目があります。住居内に、なるべく物を置かない場所を作っておき、緊急地震速報を受けたらそこへ退避する、という考え方です。その安全スペースの例として挙げられているのが、寝室・自宅内廊下・共用廊下・エレベーターホールでした(*5)。

寝室は、寝るための部屋であると同時に、家族が揺れの瞬間に駆け込む先として設計されている、ということです。夜のためだけに片づける部屋ではありません。

安全スペースについては、置くものまで書かれています。

安全スペースには、避難時に散乱した屋内収容物(陶器など)やガラスなどによる負傷を避けるため、厚手の手袋、底の厚い履物などを用意しておきましょう(*5)

これが「置いていいもの」の一次情報です。手袋と、底の厚い履物。枕元に置く物として最初に挙げるべきは、たぶんこの2つです。

もう1つ足すなら、明かりです。北海道胆振東部地震は午前3時7分に発生し、道内全域で最大約295万戸が停電、ブラックアウトからおおむね全域に供給できるまで45時間程度を要しました(*3)。東京消防庁も、この地震で「大規模停電が発生し、暗い中室内を移動したため、転倒による負傷者が発生した」と記録しています(*5)。

内閣府の同じ調査で、大地震に備えての対策の第1位は「停電時に作動する足元灯や懐中電灯などを準備している」の51.3%でした(*6)。備えの中で最も普及しているものが、夜の地震にそのまま効きます。

3. 置いてはいけないもの(5つ)

ハンドブックの記述から、寝室に持ち込まないほうがよいものを整理すると、こうなります(*5)。

  1. 窓際の重量物。「窓際には、重量物や転倒・落下・移動しやすい物を置かないようにします(外に落下する危険があります)」と明記されています。
  2. 吊り下げ式の照明。長周期地震動では「吊り下がっている電球」も対策の対象として名指しされています。寝ている真上は、最も避けたい位置です。
  3. キャスター付きの家具、背の低い家具。倒れなくても動きます。長周期地震動では、テーブルやイスのように壁面に接していない背の低い家具類も移動する可能性があるとされています。
  4. 引き出しのある家具、扉のある家具。引き出しの飛び出し、扉の開閉・落下、収容物の落下が、それぞれ別の被害として整理されています。倒れなければ安全、ではありません。
  5. そもそもの家具。ハンドブックの対策の第一項目は「納戸やクローゼット、据え付け収納家具への集中収納により、努めて生活空間に家具類を置かないようにしましょう」です。この考え方には集中収納(居住収納分離)という名前が付いています。

固定器具を選ぶ前に、置き場所を変える。順番はそちらが先です。

4. 防災と睡眠が、別の理由で同じ結論に着地します

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」には、寝室環境についての質疑応答があります。幹線道路沿いで夜間も車の騒音や照明が室内に入る、という質問への回答が、これです(*7)。

カーテンを防音や遮光の機能があるものに取り換え、寝床の位置をできるだけ窓から遠くに移動させることで眠りが改善する可能性があります。その他にも、寝室の温度、湿度、照明強度の調整も有効です

東京消防庁は、外への落下という理由で「窓際に物を置くな」と書いています。厚生労働省は、音と光という理由で「寝床を窓から離せ」と書いています。出どころも目的も違う2つの資料が、寝床の位置について同じ側に着地しています。

同じガイドは、冬について、WHOの住環境ガイドラインが室温18℃以上の維持を推奨していることを紹介しています(*7)。停電した冬の寝室で何が起きるかは、別の記事で電力の側から書きます。

なお、この記事で扱うのは寝室の環境までです。眠れない状態が続く場合の原因や治療については書きません。同ガイドも、推奨されている事柄を活用しても改善が十分に得られない場合は医師に相談することを勧めています(*7)。

5. 「壁に穴」で止まっている人へ(大家からの1つの見方)

同じ世論調査で、固定ができていない理由の3位は「家具や壁などに傷をつけるから」17.8%でした(*6)。1位は「やろうと思っているが先延ばしにしてしまっているから」38.2%、2位は「面倒だから」20.7%です(*6)。

穴が理由の人には、公的な資料に2つの道が書かれています。

1つは、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」です。重量物を掛けるためのくぎ穴・ネジ穴は、下地ボードの張替が必要な程度であれば借主の負担と判断されることが多い、という整理のあと、こう続きます(*8)。

なお、地震等に対する家具転倒防止の措置については、予め、賃貸人の承諾、または、くぎやネジを使用しない方法等の検討が考えられる

先に貸主に聞く、という道が、国のガイドラインに書いてあります。 もう1つは、東京消防庁の回答で、ストッパー式(またはマット式)とポール式を2つ組み合わせれば、最も効果の高いL型金具と同等の効果が期待できる、というものです(*5)。

私は千葉県で戸建てを3棟貸しています。貸す側の立場から言うと、家具の転倒防止のために事前に相談が来た場合、それは断る話ではなく条件を決める話です。ただし、これは私個人の考え方であって、貸主によって判断は違います。だからこそ、事後ではなく事前に聞くことに意味があります。賃貸で穴を開けずにどこまでやれるかは、記事を分けて書きます。

今日の1歩

寝ている自分の頭から半径2メートルを、床に座って見回してください。

その範囲に、倒れるもの・落ちるもの・動くものがあるかどうか。あれば、固定器具を買う前に、まず動かす。動かせないなら、倒れる方向を変える。それでも無理なら固定する。順番はこの3つです。

そして枕元には、厚手の手袋と、底の厚い履物を置く。国の資料が安全スペースに用意しろと書いているのは、この2つでした。

家具を1箇所だけ固定するならどこか、という話は別に書いています(家具固定を1箇所だけやるならどこか)。置き場所を決めるのが先で、固定はその次です。

置き場所が決まったら、次に触るのは光と寝具です。夜だけ明るさを落とす話は寝室の照明を「夜だけ」変える、寝具を買い替える前に見る順番はマットレスを買い替える前に、床と湿気を見るにあります。


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出典

  1. 内閣府 防災情報のページ「阪神・淡路大震災教訓情報資料集」(平成7年1月17日5時46分発生・死者6,434名)https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/hanshin_awaji/earthquake/index.html
  2. 気象庁「平成28年(2016年)熊本地震」(前震=平成28年4月14日21時26分・M6.5・最大震度7/本震=4月16日1時25分・M7.3・最大震度7)https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/2016_04_14_kumamoto/index.html
  3. 内閣府「令和元年版 防災白書」平成30年北海道胆振東部地震(平成30年9月6日3時7分・M6.7・最大震度7/道内全域で最大約295万戸が停電・ブラックアウトから概ね全域に供給できるまで45時間程度)https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/h31/honbun/0b_1s_01_04.html
  4. 内閣府「平成16年版 防災白書」図4「阪神・淡路大震災の犠牲者8割が窒息死圧死」https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/h16/bousai2004/html/zu/zu1000040.htm
  5. 東京消防庁「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」(令和6年1月)=安全な家具の配置・家の安全スペース・集中収納(居住収納分離)・長周期地震動への対策・多く寄せられる質問(質問7、質問8)。https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/learning/elib/kagutenhandbook.html (本文PDF: https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/content/000010472.pdf )
  6. 内閣府「防災に関する世論調査(令和7年8月調査)」(令和7年12月24日確報掲載・有効回収数1,707人)=大地震に備えての対策(足元灯・懐中電灯51.3%/家具・家電の固定37.6%)、家具・家電の転倒・落下・移動防止対策の程度(ほぼ全て8.4%/重量又は高さのあるもの30.6%/一部58.8%・回答者641人)、固定ができていない理由(先延ばし38.2%/面倒20.7%/傷をつけるから17.8%・回答者1,045人)。https://survey.gov-online.go.jp/public_safety/202510/r07/r07-bousai/
  7. 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(令和6年2月・健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会)=良質な睡眠のための環境づくりについて(音・光・温度のQ&A、WHO住環境ガイドラインの冬季室温18℃以上)。https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf
  8. 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(平成23年8月)別表1 損耗・毀損の事例区分(部位別)一覧表「壁等のくぎ穴、ネジ穴」の考え方。https://www.mlit.go.jp/common/000991391.pdf

※本記事は公的資料の読み方をまとめたものです。個別の建物や家具の安全性の判断、賃貸借契約の原状回復の取り扱いは、専門家または契約の相手方にご確認ください。睡眠に関する不調が続く場合は医療機関にご相談ください。