困ってから調べるの、遅いです。
寝室の照明を「夜だけ」変える(国の照度基準は、寝室を3段に分けている)(イメージ)5 lxJIS Z 9110:2011「照明基準総則」の住宅の表で、寝室の「深夜」に示されている維持照度。同じ表で寝室は「読書75 lx/全般30 lx/深夜5 lx」の3行に分かれており、規格そのものが同じ部屋を時間帯で3段に分けている
眠り編

寝室の照明を「夜だけ」変える(国の照度基準は、寝室を3段に分けている)

先回り大家最終確認 2026-08-31

日本の照度の規格「JIS Z 9110 照明基準総則」の住宅の表を見ると、寝室の行は1つではありません。3つあります(*1)。

寝室 読書 75 lx/全般 30 lx/深夜 5 lx(*1)

同じ部屋なのに、読書と、全般と、深夜で、規格が別の数字を持っている。深夜の5 lxは、全般30 lxの6分の1です。

つまり「寝室の照明を変える」というのは、本来、器具を買い替える話ではありません。同じ部屋の明るさを、時間帯で段に分ける話です。天井の器具はそのままでいい。家全体も触らなくていい。変えるのは、夜の2時間だけです。

1. 規格が最初から「深夜」という段を持っている

照度の単位ルクス(lx)は、その面がどれだけ照らされているかを表します。JIS Z 9110は建物の用途ごとに「維持照度」(使い続けているあいだ下回らないようにする値)を示した規格で、住宅の表には居間・書斎・子供室・寝室などが並びます。

その寝室の欄が、上の3行です。読書のための75 lx、部屋全体としての30 lx、そして深夜の5 lx(*1)。同じ表で居間などについては「調光を可能にすることが望ましい」という趣旨の記載もあります(*1)。部屋の明るさを1つの数字で決めていないのが、この規格の書き方です。

(※本記事が引くのは2011年版の表です。JIS Z 9110は2024年12月20日に改正されており、最新版では照度段階の下限が0.5 lxまで広がるなど枠組みが変わっています(*2)。改正後の住宅の具体値は本記事では確認できていないため、数値は2011年版のものとして扱ってください。「寝室が時間帯で分かれている」という構造の話が本題です。)

2. 国が言っているのは、明るさより「時間帯」

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、良質な睡眠のための環境づくりのポイントを4行で挙げています。その1行目と2行目がこれです。

日中にできるだけ日光を浴びると、体内時計が調節されて入眠しやすくなる。

寝室にはスマートフォンやタブレット端末を持ち込まず、できるだけ暗くして寝ることが良い睡眠につながる。(*3)

そして本文には、昼側の目安が書かれています。

これらの効果は1,000ルクス以上の照度の光を日中に浴びることで得られます。(*3)

昼は1,000 lx以上、深夜は5 lx。 1日のなかで200倍の落差をつくる、というのが光環境の話の骨格です。だから「寝室を暗くする」だけでは半分で、朝と昼に光を入れるほうが先になります。ガイドも、日中に光を多く浴びることで夜間の照明の光による体内時計への悪影響が減少すると報告されている、と書いています(*3)。

夜側の目安も具体的です。

就寝の約2時間前から睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌が始まります。それ以降に照明やスマートフォンの強い光を浴びると、催眠効果のあるメラトニンの分泌が抑制されることから、睡眠・覚醒リズムが遅れ、入眠が妨げられることが報告されています。(*3)

寝ている間は、低い照度の光でも中途覚醒時間を増加させ、睡眠の効率を下げることが報告されており、寝室の照明にも配慮することは重要と考えられます。(*3)

触るべき時間は、就寝前の約2時間と、寝ているあいだ。 1日24時間のうち、そこだけです。

3. 「電球色にすれば大丈夫」ではない、と明記されている

ここは誤解が多いところなので、ガイドのQ&Aをそのまま引きます。

Q. 光の色を変えることができるLED照明がありますが、暖色系に調光していれば、夜間につけていても大丈夫ですか?

A. 現在使われているLED照明は青色発光ダイオードを使用していることから、調光しても短波長光(ブルーライト)が多く含まれます。夜間の使用時は明るすぎないように調節することが必要です。また、就寝時には照明は消すように心がけましょう。(*3)

色を暖色に変えることは、明るさを落とすことの代わりにはならない、という書き方です。お金をかける先は「色」ではなく、「落とせる形」と「消せる形」になります。

なお、光が外から入ってくる場合の答えも同じガイドにあります。

A. カーテンを防音や遮光の機能があるものに取り換え、寝床の位置をできるだけ窓から遠くに移動させることで眠りが改善する可能性があります。(*3)

寝床を動かすのは0円で、器具の交換より先に試せます。 賃貸で遮光・遮音・断熱をどこまでやれるかは遮光・遮音・断熱を賃貸でやるに分けて書きました。

4. 家全体を触らずにやる4手

上の3つを、そのまま手順にします。器具の買い替えは入っていません。

  1. 夜の2時間だけ、天井を消す。(0円)就寝の約2時間前から、部屋の主照明を消して手元の1灯だけにする。規格の言い方でいえば、全般30 lxの段から深夜5 lxの段に降りるということです。まずここだけで、寝室の光環境は変わります。
  2. 足元の1灯を決める。 ガイドは高齢者について、夜間にトイレに行くことが多いため転倒しないように間接照明や足元灯などを活用し、眼に入る光の量を減らす工夫が重要、と書いています(*3)。天井をつけてしまうと目に入る光が一気に増えるので、暗い中を歩かせない代わりに、天井をつけさせないのが足元灯の役目です。置くだけのもので足ります。
  3. 就寝時は消す。スマホは寝室に持ち込まない。 ガイドが名指しで書いている2つです(*3)。器具を買う前に、これが済んでいるかを先に見てください。
  4. 窓からの光には、まずカーテンと寝床の位置で当たる。(*3)

1と3は今夜できて、費用は0円です。 2の足元灯と4のカーテンだけが買い物になります。買い物の前に済ませられることが2つある、という順番が本記事の言いたいことです。

5. 賃貸でどこまで触っていいかは、国の標準契約書に書いてある

賃貸で止まってしまう人が多いところですが、線はかなりはっきり引かれています。国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」の第9条第3項はこうです。

3 乙は、甲の承諾を得ることなく、別表第4に掲げる修繕を自らの負担において行うことができる。(*4)

そして、その別表第4に並んでいるのがこれです。

畳表の取替え、裏返し/ヒューズの取替え/障子紙の張替え/給水栓の取替え/ふすま紙の張替え/排水栓の取替え/電球、蛍光灯、LED照明の取替え/その他費用が軽微な修繕(*4)

電球・蛍光灯・LED照明の取替えは、貸主の承諾を得ずに、借りている側が自分の負担でやっていいものとして名指しで並んでいます。 置き型の照明を足すのは、そもそも何かを取り替えてすらいません。

一方で、器具ごと交換する・配線に手を入れるのは別の話になります。同じ契約書の第8条第2項は、借りる側は書面による承諾を得ることなく増築・改築・改造・模様替や敷地内の工作物の設置を行ってはならない、としています(*4)。天井の器具本体は、勝手に替える対象ではありません。

つまり賃貸で自由にできるのは、電球1個と、置くだけの灯りと、カーテンと、寝床の位置まで。ここまでで上の4手は全部できます。遮光・遮音・断熱を賃貸でやるで見た「穴の深さ」の線と、同じ場所に線が引かれていると思ってください。

6. その前に1回だけ見てほしいのが、器具の「年式」

ここからは、貸す側が先に見ているところです。

独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)が2026年3月26日に出した注意喚起に、こう書かれています。

『LEDランプに交換すれば、ずっと使える』は間違いです。 改めて家や事業所の蛍光灯器具をチェックして、使用年数が10年を超えている場合は、蛍光灯器具ごとLED照明への交換を検討しましょう。(*5)

数字はこうです。NITEが受け付けた製品事故情報で、2016年から2025年までの10年間に発生した「蛍光灯器具」の事故は205件。うち使用年数が推定できた133件を見ると、使用年数が10年を超えていた事故が約9割(120/133件)を占めています(*5)。

事故の型もはっきりしています。挙がっている事例の1つは、30年以上使用され劣化した蛍光灯器具の安定器を取り外す工事をせずにLEDランプを取り付けて使用していたもので、送電線事故による瞬時電圧低下時に安定器が正常に働かず、異常な電流がLEDランプ内部の電源基板に流れて焼損に至ったと推定されています。もう1つは48年以上の長期使用で安定器内部の巻線の絶縁皮膜が脱落し、スパークが発生したものです(*5)。

「ランプだけをLEDに替える」が、いちばん安く見えて、いちばん器具の年齢を無視する方法だということです。

一般社団法人日本照明工業会は、照明器具について設置から8〜10年を「適正交換時期」、15年を「耐用の限度」としています(*5・*6)。根拠はJIS C 8105-1の解説で、器具内の部品(安定器・ソケット・電線など)が絶縁劣化等により発煙事故に至る場合がある、という説明です(*6)。

そして、期限のほうも決まっています。水銀に関する水俣条約の締約国会議により、全ての一般照明用蛍光ランプの製造・輸出入は2027年末までに終了します。既設照明のLED化率は2025年12月末時点で66.4%(*5)。それでも同じ資料には、照明器具に寿命(耐用年限)があることを3人に2人が知らないという調査結果が載っています(*5)。

寝室の照明を替えようと思った日に、最初にやることは買い物ではなく、器具の銘板で製造年を見ることです。 10年を超えていたら、それは「電球を替える話」ではなく「器具の話」になります。賃貸なら、そこから先は自分でやる範囲ではありません——同じ標準契約書の第9条第1項は、貸主は借主が物件を使用するために必要な修繕を行わなければならない、と定めています(*4)。年式を伝えて、貸主に相談するのが正しい経路です。

照明は電気製品なので、電気火災の話とも地続きです。地震のあとの通電火災については感震ブレーカーで通電火災を止めるに、寝室の天井から落ちてくるものについては寝室に置いていいものと、置いてはいけないものに書きました。

なお、停電した夜の明かりは、この記事とは別系統の準備です。ここで話しているのは電気が来ている日常の光環境で、電気が止まった夜に何が起きるかは停電の夜、寝室は何度まで動くかと千葉で停電が2週間続いたとき、家で何が止まったかのほうにあります。

(照明について、当サイトで出せる自物件の実額はまだありません。日付と金額が言えるものだけを「実録」と書く方針なので、この記事は制度と公的資料の範囲で止めています。)

今日の1歩

今夜、寝室でどれか1つだけやってください。

  1. 寝室の照明器具の銘板を見て、製造年を確かめる。 10年を超えていたら、電球ではなく器具の問題として扱う(賃貸なら貸主へ連絡)(*5・*6)。
  2. 就寝の2時間前から、天井の照明を消して手元の1灯だけにする。 0円で、今夜からできます(*1・*3)。
  3. 寝るときは消す。スマホは寝室に持ち込まない。(*3)
  4. 朝、カーテンを開ける。 夜を暗くすることと同じくらい、昼に光を入れるほうが効きます(*3)。

買い物が要るのは、足元灯とカーテンだけです。 それも、上の1〜4をやってから決めて遅くありません。


出典

  1. 日本産業規格「JIS Z 9110:2011 照明基準総則」表17(住宅 その1)=寝室「読書 維持照度75 lx/全般 維持照度30 lx/深夜 維持照度5 lx」(照度均斉度0.40、Ra 80)。居間・応接室等について「調光を可能にすることが望ましい」旨の記載。※規格本文は日本産業標準調査会(JISC)のJIS検索および一般財団法人日本規格協会で閲覧できます。https://www.jisc.go.jp/app/jis/general/GnrJISSearch.html
  2. 「JIS Z 9110:2024 照明基準総則」=2024年12月20日改正。照度段階を最小0.5 lx〜最大10,000 lxへ変更、平均演色評価数(Ra)の最小値を20と設定、非常用照明の設置規定を明示 等(改正内容の解説:パナソニック 照明設計サポート P.L.A.M.)。https://www2.panasonic.biz/jp/lighting/plam/jis-z9110/
  3. 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(令和6年9月18日一部修正)「4.睡眠に関する参考情報(1)良質な睡眠のための環境づくりについて」p.23〜25=ポイント「日中にできるだけ日光を浴びると、体内時計が調節されて入眠しやすくなる/寝室にはスマートフォンやタブレット端末を持ち込まず、できるだけ暗くして寝ることが良い睡眠につながる/寝室は暑すぎず寒すぎない温度で、就寝の約1〜2時間前に入浴し身体を温めてから寝床に入ると入眠しやすくなる/できるだけ静かな環境で、リラックスできる寝衣・寝具で眠ることが良い睡眠につながる」/「これらの効果は1,000ルクス以上の照度の光を日中に浴びることで得られます」/「就寝の約2時間前から睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌が始まります。それ以降に照明やスマートフォンの強い光を浴びると、催眠効果のあるメラトニンの分泌が抑制されることから、睡眠・覚醒リズムが遅れ、入眠が妨げられることが報告されています」/「寝ている間は、低い照度の光でも中途覚醒時間を増加させ、睡眠の効率を下げることが報告されており、寝室の照明にも配慮することは重要と考えられます」/「高齢者は夜間にトイレに行くことも多いため、転倒しないように間接照明や足元灯などを活用し、眼に入る光の量を減らす工夫が重要です」/Q&A「現在使われているLED照明は青色発光ダイオードを使用していることから、調光しても短波長光(ブルーライト)が多く含まれます。夜間の使用時は明るすぎないように調節することが必要です。また、就寝時には照明は消すように心がけましょう」/Q&A「カーテンを防音や遮光の機能があるものに取り換え、寝床の位置をできるだけ窓から遠くに移動させることで眠りが改善する可能性があります」。https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf
  4. 国土交通省「賃貸住宅標準契約書(改訂版)」(「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」平成23年8月 所収)=第9条(契約期間中の修繕)第1項「甲は、乙が本物件を使用するために必要な修繕を行わなければならない」/第3項「乙は、甲の承諾を得ることなく、別表第4に掲げる修繕を自らの負担において行うことができる」/別表第4(第9条第3項関係)「畳表の取替え、裏返し/ヒューズの取替え/障子紙の張替え/給水栓の取替え/ふすま紙の張替え/排水栓の取替え/電球、蛍光灯、LED照明の取替え/その他費用が軽微な修繕」/第8条第2項「乙は、甲の書面による承諾を得ることなく、本物件の増築、改築、移転、改造若しくは模様替又は本物件の敷地内における工作物の設置を行ってはならない」。https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/honbun2.pdf
  5. 独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)「見た目はピカピカ、中身は劣化 ~10年超え『古い蛍光灯器具』の事故に注意~」2026年3月26日=「全ての一般照明用蛍光ランプの製造・輸出入は2027年末までに終了となりました。LED化率は2025年末時点で66.4%」/「『LEDランプに交換すれば、ずっと使える』は間違いです。改めて家や事業所の蛍光灯器具をチェックして、使用年数が10年を超えている場合は、蛍光灯器具ごとLED照明への交換を検討しましょう」/「2016年から2025年までの10年間に発生した『蛍光灯器具』の事故は205件」/「蛍光灯器具の使用年数が推定できた133件について……使用年数が10年を超えていた事故の割合が約9割(120/133件)を占めています」/事故事例「30年以上使用され劣化した蛍光灯器具の安定器を取り外す工事をせずにLEDランプを取り付けて使用していたところ、送電線事故による瞬時電圧低下時に安定器が正常に働かず異常な電流が発生し、その電流がLEDランプ内部の電源基板に流れて焼損に至ったものと推定されます」「48年以上の長期使用によって、安定器内部の巻線のエナメル(巻線を保護する絶縁皮膜)が脱落し、巻線同士の絶縁性が維持できなくなったため、一部でスパークが発生し、事故に至ったものと推定される」/「日本照明工業会は照明器具を設置してから8〜10年を『適正交換時期』、15年を『耐用の限度』としています」/JLMA調査「『照明器具に寿命(耐用年限)があること』の認知度はほぼ横ばい傾向で、3人に2人が知らない結果」。https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2025fy/prs260326.html /資料本体 https://www.nite.go.jp/data/000160912.pdf
  6. 一般社団法人日本照明工業会(JLMA)「古い照明器具をご使用の方へ、その照明器具、本当に大丈夫ですか?」=「10年を過ぎると故障率が増加し始め、15年を超えての使用は危険が伴います」(JIS C 8105-1「照明器具-第1部:安全性要求事項通則 解説」に基づきJLMA作成)/「器具内の部品(安定器・ソケット・電線など)が絶縁劣化等によりまれに発煙事故に至る場合」/自己点検の観点=器具外観の錆・変色、磁気式安定器の銘板の変色や内部電線被覆、ソケットの汚損・クラック・酸化、蛍光ランプのフィラメント付近の黒化、器具内部電線表面の亀裂。https://www.jlma.or.jp/led-navi/contents/cont13b_checkAndChange.htm

※本記事は公的資料と規格の記載をまとめたものです。睡眠の悩みや体調に関する判断・治療については、この記事ではなく、かかりつけ医などの専門職にご相談ください。 本記事は特定の症状の予防効果や改善効果を主張するものではありません。照明器具の交換・配線工事は電気工事士の資格が必要になる場合があります。 賃貸物件で器具そのものに手を入れる場合は、必ず事前に貸主・管理会社へご確認ください。契約内容は物件ごとに異なります。