困ってから調べるの、遅いです。
防災セットは既製品か自作か(公的な基準から中身を決める)(イメージ)69.8%と27.2%家庭に3日分以上あるもの:飲料水69.8%、携帯トイレ27.2%(内閣府 令和7年調査)
備え編

防災セットは既製品か自作か(公的な基準から中身を決める)

先回り大家最終確認 2026-09-05

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内閣府の世論調査(令和7年8月調査)で、家庭に「3日分以上」備蓄しているものを聞くと、飲料水は69.8%でした。携帯トイレ・簡易トイレは27.2%、ガスボンベなどの食品加熱用熱源は27.7%です(*1)。

水は7割の家にある。トイレと火は3割弱。この差は、防災セットを1箱買っても埋まりません。理由は簡単で、リュック型で売られている「防災セット」の多くは、公的資料でいう2つのリストのうち持ち出し袋のほうだからです。

既製品を買っていいのは「持ち出し袋」。家で過ごすための「備蓄」は自作です。 順番は、持ち出し袋を先に済ませてから(既製品でも旅行かばんの流用でも可)、箱に入りようがない3つ(水・トイレ・熱源)を数で足す。今日はその分け方と、足す数の出し方を書きます。

なお、私は千葉県で戸建てを3棟貸していますが、この記事に、私の家や貸家の一式は出てきません。書くのは公的資料の基準と、そこから出る数だけです。

1. 「防災セット」は、公的資料では2つに分かれている

総務省消防庁の防災マニュアルの「防災お役立ちツール」には、非常用持出品と備蓄品の2枚のチェックシートがあります(ほかに常時携行品チェックシートと避難カード)(*2)。

  • 非常用持出品:「避難するときにまず持ち出すべきものです。非常用持出袋に入れ玄関など持ち出しやすい場所に置いておきましょう」
  • 備蓄品:「災害復旧までの数日間を自足できるように準備しておくものです。災害後に取りに行けるよう、倉庫や車のトランクなどに分けて備蓄しておくと便利です」

置き場所が違います。片方は玄関、片方は倉庫や車。首相官邸のページも「食料・飲料などの備蓄」と「非常用持ち出しバッグ」を別の項目で並べ(*3)、政府広報オンラインも「災害時に備えた備蓄品の例」と「非常持ち出し品の例」を別々の項目に分けて載せています(*4)。東京都の「東京くらし防災」は、もっと直接です。

地震が発生した瞬間に持ち出す物と、避難生活で必要な物を分けていますか?(*5)

そして「大きくて重いバッグはかえって重荷に」と続きます。

リュックに入って背負える形で売られている「防災セット」は、このうち持ち出し袋のほうです。 買って玄関に置けば、消防庁の1枚目の大半は埋まります(衣料品と貴重品類だけは自分で足します)。2枚目は空のままです。冒頭の「トイレと火は3割弱」を裏返すと、7割強の家で2枚目のシートが空いている、と私は読んでいます。

2. 既製品を買っていいのは持ち出し袋。選ぶ基準は3つ

持ち出し袋そのものは、既製品でかまいません。東京都が示す作り方は4手順で、「❷まずはいつもの旅行に持っていく物を入れてみます」「❸携帯トイレ等、非常時に必要だと思う物をプラス」「❹自分に合わせてアレンジ」です(*5)。旅行かばんの延長、と言っています。既製品はその❶〜❸をまとめて済ませる買い方です。

選ぶときに見るのは、箱に書いてある3つです。

ひとつ、「何人×何日」の前提が書いてあるか。 消防庁の持出品シートには、数が要るものが混じっています。「懐中電灯はできれば一人に一つ用意したいもの」「(非常食品は)最低3日分は用意しましょう」(*2)。人数と日数の前提が箱に無いセットは、中身の数を自分で数え直すことになります。書いてある箱を選ぶ。それだけで手間が減ります。

ふたつ、中身の一覧が数量つきで公開されているか。 消防庁のシートは7つの分類と「その他」に分かれています。貴重品類・避難用具(懐中電灯、携帯ラジオ、予備の乾電池、ヘルメット)・生活用品(厚手の手袋、毛布、携帯用トイレ など)・救急用具・非常食品・衣料品・感染症対策物品(+その他:携帯用カイロ)(*2)。箱の一覧をこの7つの分類に当てて、抜けている分類を見ます。既製品の利点は、自分で揃えると面倒な避難用具と救急用具と生活用品が一度に揃うことです。逆に、衣料品と貴重品類は家族ごとに違うので、既製品では埋まりません。自分で足す分です。

みっつ、持ち歩ける重さか。 東京都は「実際に持ち歩ける重さで、バッグに収まる量に調整しましょう」と書いています(*5)。同じ冊子の緊急避難リュックの水は「500mlを1〜2本」です。家族の3日分の水(4人で36kg)がまるごと入ったセットは、背負えません。持ち出し袋の水が500mlで1〜2本なのは、そのためです。

3. 箱に入りようがない3つ=家で決まるもの

ここからが2枚目のシートです。既製品に入っていないのではなく、入りようがないものが3つあります。人数・家の設備・置き場所で数が変わるからです。

水は「3L×人数×日数」。4人3日で36kg

首相官邸の目安は「飲料水 3日分(1人1日3リットルが目安)」、そして「大規模災害発生時には、『1週間分』の備蓄が望ましいとされています」(*3)。4人家族の3日分で36リットル、2リットルのペットボトルで18本。重さは36kgです。持ち出し袋に入る量ではないので、備蓄側で置きます。

もうひとつ同じページに、見落とされがちな一文があります。「飲料水とは別に、トイレを流したりするための生活用水も必要です。日頃から、水道水を入れたポリタンクを用意する、お風呂の水をいつも張っておく」(*3)。ただし、水があることと流していいことは別で、下水の被害が確認されるまでは流さない時期があります(携帯トイレは「何回分」で足りるか)。消防庁の備蓄品シートにも「給水用ポリタンク」が独立した1行で載っています(*2)。水と一緒に、空の容器を買う。 ここは4日目以降の話とつながります。国の目標水量が4日目から跳ね上がる仕組みは水は1人1日3L・3日分の根拠に書きました。

トイレは「回数」。4人3日で60回

内閣府のガイドラインは「平均的な排泄の回数は5回」と書き、避難所の携帯トイレ備蓄は「まずは、3日分を目標に」としています(*6)。避難所向けの式ですが、家でも同じように数えられます。5回×人数×日数です。4人家族の3日分で60回。

東京都のリーフレットに、4人家族(夫婦と乳幼児、高齢女性1人)の例があり、そこでは携帯トイレ・簡易トイレが45回分です(*7)。計算式は書かれていませんが、乳幼児のおむつ30個が別枠なので、大人3人×5回×3日と置くと45回になります。私の逆算ですが、内閣府の5回と合う数です。箱に「◯回分」と書いてあるセットを選ぶ、という基準がここから出ます。回数表示のないセットは、数えられません。使用済みの置き場所まで含めた決め方は携帯トイレは「何回分」で足りるかに書きました。

熱源は「家のガスがどっちか」で本数が変わる

日本ガス石油機器工業会(JGKA)の目安は「一人当たり一週間で6本弱のカセットボンベ」、冬は「真夏と比べると1.5倍くらい必要」です(*8)。東京都の4人家族・3日程度の例ではカセットコンロ2台・ボンベ8本(*7)。

ただし、この本数は家によって意味が変わります。私の3棟は、2棟が都市ガス、1棟がLPガスです(重要事項説明書で確認できます)。都市ガスの家は面で止まって面で戻り、LPガスの家は軒下に予備のボンベが1本あるのが基本。同じセットを置いても、要る本数は同じになりません。この違いはカセットボンベは何本あればいいかに書きました。既製品のセットが熱源をどう扱っていても、本数は家で決めるものです。

電源も同じ理屈で箱の外です。何を何時間動かすかで容量が決まるので、ポータブル電源は何Wh要るかに分けています。

4. 順番=持ち出し袋が先、そのあと3つの数を足す

4人家族で、公的資料の数をそのまま並べるとこうなります。私が置いた数ではなく、資料の数です。

区分3日分1週間分出どころ
持ち出し袋既製品1箱(人数分・懐中電灯は1人1つ・水は500mlを1〜2本=緊急避難リュック1つあたり)同左消防庁(*2)・東京都(*5)
水36L(2L×18本)+給水袋・ポリタンク84L(2L×42本)が官邸の目安から出る数。ただし4日目からは国の給水目標が1人1日20〜30Lへ上がるので、ボトルより給水袋・10L前後の容器を複数・運ぶ手段(キャリーなど)が本体(別記事)官邸(*3)
トイレ60回分+フタ付き容器・ゴミ袋140回分内閣府(*6)
熱源こんろ2台+ボンベ8本(東京都の例。都市ガスの家の目安として読む)ボンベ24本弱(冬は36本前後)※都市ガスの家。LPガスの家は軒下に予備ボンベが1本あるのが基本なので、点検が来るまでの数日分で考える(別記事)東京都(*7)・JGKA(*8)

行政の呼びかけは「最低3日分、できれば1週間分」です(*1)。まず3日分の列を埋め、余裕ができたら右の列へ寄せる。右の列のうち水は、本数ではなく容器と運ぶ手段で埋まります。既製品を2箱買っても、この表の下3行の数には届きません。 逆に、下3行が埋まっていれば、持ち出し袋は旅行かばんに携帯トイレを足したものでも足ります。

置き方は、東京都のいう「日常備蓄」で足ります。普段使う物を少し多めに買い、古いものから使い、減った分を補充する(*5)。水もレトルトもボンベも、その輪の中に入れます。期限で一度に捨てる備蓄は続きません。

必要な数量は家族構成や住まいで変わります。東京都の「東京備蓄ナビ」は、3つの質問に答えると品目と数量のリストが出るので、自分の家の数を出す道具として使えます(*7)。

今日やること(3行)

  1. 家にある防災セットの箱に、「何人×何日」が書いてあるか見る。無ければ懐中電灯の本数を数える(1人1つ)
  2. 箱の外に、水(3L×人数×3日)・トイレ(5回×人数×3日)・熱源(家のガス方式で本数)の3つの数を紙に書く
  3. 買い足すのは、その数と今ある数の差だけ。買い物かごに入れる前に、この3つの数だけ見てください

既製品か自作かは、どちらが正しいかの話ではありませんでした。持ち出し袋は既製品、備蓄は自作。困ってから調べるの、遅いです。


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出典

  • *1 内閣府「防災に関する世論調査(令和7年8月調査)」(調査時期 令和7年8月21日〜9月28日・郵送法・有効回収数1,707人)問8「あなたのご家庭において、以下のうち3日分以上備蓄しているものはどれですか」(複数回答・上位5項目)=飲料水69.8%/食料品59.8%/衛生用品38.4%/食品加熱用熱源27.7%/携帯トイレ・簡易トイレ27.2%。調査票【資料1】=「行政では、ホームページ等を通じて、住民に対して、次のような物資を最低3日分、できれば1週間分の備蓄を呼び掛けています」(食料品/嗜好品/1人1日3リットル以上の飲料水/衛生用品/携帯トイレ・簡易トイレ/ガスボンベ、固形燃料などの食品加熱用熱源/暑さ・寒さ対策の消耗品)。https://survey.gov-online.go.jp/public_safety/202510/r07/r07-bousai/
  • *2 総務省消防庁「防災マニュアル-震災対策啓発資料-」防災お役立ちツール(避難カード/非常持出し品チェックシート/備蓄品チェックシート/常時携行品チェックシートの4点)=「非常用持出品チェックシート」(貴重品類・避難用具・生活用品・救急用具・非常食品・衣料品・感染症対策物品の7分類+その他〈携帯用カイロ〉。「※避難するときにまず持ち出すべきものです。非常用持出袋に入れ玄関など持ち出しやすい場所に置いておきましょう」「最低3日分は用意しましょう。そのままで食べられるものが便利です」「懐中電灯はできれば一人に一つ用意したいもの」)および「備蓄品チェックシート」(「※備蓄品は、災害復旧までの数日間を自足できるように準備しておくものです。災害後に取りに行けるよう、倉庫や車のトランクなどに分けて備蓄しておくと便利です」「飲料水 1日3ℓが目安です。3日分は備えましょう」「給水用ポリタンク」「カセットコンロ」「簡易トイレ」)。https://www.fdma.go.jp/relocation/bousai_manual/too/tool.html (PDF: https://www.fdma.go.jp/relocation/bousai_manual/too/pdf/mocidashi.pdf / https://www.fdma.go.jp/relocation/bousai_manual/too/pdf/store.pdf )
  • *3 首相官邸「災害が起きる前にできること」=「食料・飲料・生活必需品などの備蓄の例(人数分用意しましょう)」飲料水 3日分(1人1日3リットルが目安)/非常食 3日分/「※ 大規模災害発生時には、『1週間分』の備蓄が望ましいとされています。」「※ 飲料水とは別に、トイレを流したりするための生活用水も必要です。日頃から、水道水を入れたポリタンクを用意する、お風呂の水をいつも張っておく、などの備えをしておきましょう。」および別項目「非常用持ち出しバッグの準備、できていますか?」。https://www.kantei.go.jp/jp/headline/bousai/sonae.html
  • *4 政府広報オンライン「災害時に命を守る一人ひとりの防災対策」4「ライフラインの停止や避難への備えは?」=「災害時に備えた備蓄品の例」(飲料水…一人1日3リットルを目安に、3日分/食品…一人最低3日分/カセットこんろ ほか。「(注)非常に広い地域に被害が及ぶ可能性のある南海トラフ巨大地震では、『1週間分以上』の備蓄が望ましいとの指摘もあります」)と「非常持ち出し品の例」(飲料水/食料品/貴重品/救急用品/ヘルメット、防災ずきん/マスク/軍手/懐中電灯/衣類/下着/毛布、タオル/携帯ラジオ、予備電池/使い捨てカイロ/ウェットティッシュ/洗面用具)を別々に掲載。https://www.gov-online.go.jp/article/201108/entry-8072.html
  • *5 東京都「東京くらし防災」PDF版(2023年版)=「非常用持ち出し袋づくりのポイント」(「非常用持ち出し袋は、被災後の数日間を避難先で過ごすことを想定して作ります。実際に持ち歩ける重さで、バッグに収まる量に調整しましょう」❶背負いやすいバッグを用意 ❷まずはいつもの旅行に持っていく物を入れてみます ❸携帯トイレ等、非常時に必要だと思う物をプラス ❹自分に合わせてアレンジ)、「地震が発生した瞬間に持ち出す物と、避難生活で必要な物を分けていますか?」「大きくて重いバッグはかえって重荷に」、緊急避難リュックの「水(500mlを1〜2本)」、在宅避難用の「飲料(1週間分)」「給水袋」「水を運ぶ道具(ポリタンク等)」「カセットコンロ・ボンベ」「携帯トイレ・簡易トイレ」、および「日常備蓄」(「水・食料の備蓄は、最低3日間分を目安に」「なくなる前に買う/古い物から使う/ストックする」)。https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/1028036/1028051/1028233.html
  • *6 内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」(令和6年12月改定)PDF 30ページ目(本文ページ番号27)=「平均的な排泄の回数は5回、排泄量は約200~300ml であると言われています」「携帯トイレの備蓄目標数は、何日間分備蓄するかを決めます。まずは、3 日分を目標にしましょう」「自助や共助による備蓄も併せて行いましょう」(計算式)最大想定避難者数×5回(市町村が避難所用に備蓄する数の式)。https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/2412hinanjo_toilet_guideline.pdf
  • *7 東京都「『日常備蓄』を進めましょう」リーフレット(令和7年10月版)=「夫婦と乳幼児、高齢女性1人の4人家族で戸建て住宅にお住まいの例」「※おおよそ3日程度の目安量」=水 1人1日3L/カセットコンロ2台/カセットボンベ8本/携帯トイレ・簡易トイレ45回分/懐中電灯2灯/LEDランタン最低3台/ヘッドライト4個/手回し充電式などのラジオ1台/リュックサック1個/おむつ30個 ほか。「必要な備蓄品・数量は家族構成やお住まいにより異なります。東京備蓄ナビで、自分に合った備蓄を調べてみよう!」。https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/kyojyo/1001855/1030036.html /東京備蓄ナビ(「これから始まる3つの質問に答えるだけで、あなたのご家庭に合わせた備蓄品目と必要量のリストが表示されます」)https://www.bichiku.metro.tokyo.lg.jp/
  • *8 一般社団法人 日本ガス石油機器工業会「10月7日は『カセットこんろとボンベの日』」=「政府は、大災害発生時の備えとして、1週間は自力で生存と生活を確保するよう国民によびかけています」「備蓄量の目安としては、一人当たり一週間で6本弱のカセットボンベが必要としています」「寒い季節にはカセットボンベが多めに必要です。ざっくりいうと真夏と比べると1.5倍くらい必要です」。https://www.jgka.or.jp/gasusekiyu_riyou/anzen/gasu_cassette/kinenbi/knowledge.html

本記事は公的資料の一般的な解説です。必要な数量は家族構成・住まい・持病や乳幼児の有無で変わります。医療上の必要品(処方薬・医療機器の電源など)は主治医・薬剤師へ、住まいの設備の確認は宅建業者や管理会社へ、個別にご確認ください。