困ってから調べるの、遅いです。
土砂災害警戒区域の調べ方(イエロー・レッドと、まだ地図に出ていない1万箇所)(イメージ)10,744千葉県が「土砂災害警戒区域の指定は完了した」と発表した3日後に、新たな危険箇所として地図に載せた数(千葉県 河川環境課)
住まい編

土砂災害警戒区域の調べ方(イエロー・レッドと、まだ地図に出ていない1万箇所)

先回り大家最終確認 2026-08-23

2021年5月28日、千葉県は「明日28日に、全ての区域指定を完了する」と発表しました。土砂災害警戒区域の指定です。このときの区域数は11,006箇所(*1)。

ところが同じ発表の中に、こう書かれています。新たに10,744箇所の危険箇所を「基礎調査予定箇所」として選定し、5月31日にホームページで公表する(*1)。

完了を宣言した3日後に、ほぼ同じ数の「これから調べる場所」が地図に載った、ということです。今日は、この1万箇所が何なのかと、家を買う前・借りる前に何をどの順で見ればいいかを書きます。

1. なぜ「完了」の直後に1万箇所出てきたのか

理由は、探し方が変わったからです。

きっかけは2019年(令和元年)10月の一連の災害でした。このとき、区域指定を予定していなかった箇所での土砂災害が全国で確認された。これを受けて国は2020年8月に「土砂災害防止対策基本指針」を改訂し、従来の地形判読では抽出が難しかった場所への対応を求めました(*2)。

千葉県はこの指針に基づき、2020年度から航空レーザ測量による数値標高モデルを使って危険箇所を洗い直します。条件は2つだけです(*2)。

  • 地形要件:傾斜度30度以上、かつ高さ5m以上のがけであること
  • 社会要件:人家または要配慮者利用施設(社会福祉施設・学校・医療施設等)があるか、立地できる土地であること

その結果が10,744箇所でした。つまりこの1万箇所は、新しく危険になった場所ではありません。ずっとそこにあったのに、それまでの方法では拾えていなかった場所です。

2. 千葉の区域は、5年で1.9倍になった

その後どうなったか。国土交通省が集計している最新の数字(2026年6月30日時点)では、千葉県の土砂災害警戒区域は20,451区域です(*3)。

2021年5月の11,006区域から、5年で+9,445区域。約1.9倍になっています。予定どおり1万箇所ぶんの調査が進み、指定に変わっていったということです。

これは、住む側にとって具体的な意味を持ちます。同じ家が、買ったときは「区域外」で、いま見ると「区域内」ということが起こり得る。しかも指定に土地所有者や住民の同意は必要なく、拒否もできません(*4 Q22)。さらに区域の範囲は、おおむね5年ごとの基礎調査で変わる可能性があります(*4 Q17)。

「昔調べたから大丈夫」が効かない領域だ、と考えておくのが安全です。

3. 千葉で警戒区域といえば、山ではなく「がけ」

内訳を見ると、千葉の土砂災害対策が何を相手にしているかがはっきりします(*3)。

現象の種類千葉県の区域数
急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)19,619
土石流647
地滑り185
合計20,451

96%ががけ崩れです。土石流は3%、地滑りは1%。千葉には高い山がないので土砂災害と縁がない、という感覚は、この数字とは合いません。相手は山ではなく、住宅地の中にある高さ5m以上・傾斜30度以上のがけです。5mは、2階建ての軒くらいの高さです。

もうひとつ。20,451区域のうち19,335区域が「特別警戒区域(レッド)」、つまり94.5%がレッドです(*3)。全国の平均は約86%(721,014区域中621,287区域)なので、千葉は「イエローで済んでいる区域が少ない」県ということになります。

なお、土砂災害そのものの発生件数は、直近では落ち着いていました。国土交通省の集計で2025年(令和7年)は37都道県で578件、統計開始以降(1982〜2024年)の平均1,116件を下回っています(*5)。少なかった年でも578件、という読み方をしておけば十分です。

4. 調べ方は、3つの地図を順番に見る

ここからが本題です。順番があります。

① ちば情報マップ(県の公式地図)「防災情報」→「土砂災害警戒区域等・砂防3法指定区域」で表示できます。千葉県自身が「指定の有無はここで確認してください」と案内している経路です(*4 Q19)。

② 告示図書(法的に正しい原本)地図はあくまで参考図です。県は「利用している地図及びデータ作成上の誤差を含んでいるため、概略の位置を示す参考図として利用してください」と明記しています(*2)。正確な範囲は、県ホームページで公表されている告示図書で確認します(*4 Q19)。座標データが必要なら、管轄の土木事務所で提供を受けられます(*4 Q18)。

③ 基礎調査予定箇所のレイヤ①の地図には、まだ指定されていない「基礎調査予定箇所」も重ねて表示できます。ここが今日いちばん伝えたい部分です。この箇所には現時点で何の制限もかかりません。しかし今後の調査結果によって区域指定が行われる可能性があります(*4 Q36)。

そして注意点がひとつ。市町村が作っている土砂災害ハザードマップは、最新とは限りません。県はQ&Aで「ハザードマップは市町村で作成しているため市町村窓口へ。最新の指定の有無はちば情報マップと告示図書で確認できます」と回答しています(*4 Q52)。手元のPDFで安心せず、県の地図に戻るのが正解です。

5. 重要事項説明で、どこまで説明されるか

不動産取引では、その物件が土砂災害警戒区域内かどうかの説明が、宅地建物取引業法35条の重要事項説明として義務づけられています(*4 Q35・Q41)。ここは向こうから説明されます。

手元にある2件の売買時の重要事項説明書(別々の業界団体の書式)を、実際に開いて確認しました。

  • 一方の書式では「7 当該宅地建物が土砂災害警戒区域内か否か」、もう一方では「10 当該宅地建物が土砂災害警戒区域内か否か」。項目番号は書式によって違いますが、欄そのものはどちらにもあります。
  • 中身は「ア. 土砂災害警戒区域 □外・□内」「イ. 土砂災害特別警戒区域 □外・□内」の2行だけ。区域外なら、チェック1つで終わります。
  • 同じページの水害ハザードマップの欄には、洪水・内水・高潮それぞれに図面名称と別添資料が付いていました。説明の厚みが違います。

そして、どちらの書式にも「基礎調査予定箇所」の欄はありません。指定されていない以上、説明義務の対象ではないからです。裏を返すと、隣のがけで調査が進んでいても、書類の上には現れない。だから自分で③を見る必要があります。

6. イエローとレッドで、変わること

土砂災害警戒区域(イエロー)土砂災害特別警戒区域(レッド)
位置づけ住民の生命・身体に危害のおそれ建築物に損壊が生じ、著しい危害のおそれ
行われること危険の周知、市町村による警戒避難体制の整備、ハザードマップ配布左記に加えて規制
建築制限なし居室を有する建築物の構造規制(住宅・アパート・店舗等。車庫や倉庫は居室がないので対象外)
開発制限なし特定開発行為(住宅宅地分譲・要配慮者利用施設)は知事の許可制

出典は千葉県のQ&A(*4 Q6・Q7・Q35・Q37)と国土交通省の制度概要(*6)です。

大事なのは、レッドでも家が建てられなくなるわけではないという点です。県は明確に「土砂災害警戒区域および土砂災害特別警戒区域において家が建てられなくなるということはありません」と書いています(*4 Q42)。レッドで建て替える場合は、告示された「土砂の移動により建物にかかる力」に対して安全になるよう補強します。例として挙げられているのは、外壁と構造耐力上主要な部分を鉄筋コンクリート造と同等以上にする方法と、待ち受け擁壁を設置する方法です(*4 Q38)。

7. 指定されていても買う、と決めるときの5つの事実

判断そのものは人それぞれですが、材料として押さえておきたい事実を並べます。

  1. 指定は、危険を作るのではなく、見えるようにする手続き。県は「区域指定によって土砂災害の危険性や土地の状況が変わるものではなく、地価への影響はありません」と説明しています(*4 Q27)。同時に「地価が下落しても補償措置はない」とも書かれています(*4 Q28)。市場がどう評価するかは別の話なので、そこは自分で確かめてください。
  2. レッドは、対策工事によって解除されることがある(*4 Q23)。範囲を狭められる余地があるということです。
  3. 固定資産税の減免措置を設けている市町村がある(*4 Q29)。県ではなく市町村の判断なので、窓口が違います。
  4. 斜面の対策工事に補助を出している市町村がある(*4 Q30)。県の支援措置はありません。
  5. レッドからの移転には国の補助制度がある。「がけ地近接等危険住宅移転事業」で、除却費・引越費用等に戸あたり975千円を限度、住宅の建設や購入・改修のために借りた資金の利息相当額に戸あたり4,210千円(通常)を限度とした補助が用意されています(*7)。実施主体は市町村です。

8. がけは、最後は誰の責任か

ここが、貸す側に回ると一番はっきり見えるところです。千葉県のQ&Aは、こう答えています。

がけの崩壊防止措置はがけ地所有者に生じますので、がけが崩壊した場合は原則所有者の責任となります(*4 Q50)

そして、区域に指定されても行政が対策工事をしてくれるわけではありません。「土砂災害防止法は危険性の周知を行うものなので、区域指定された場合でも行政で対策工事は行いません」(*4 Q20)。

行政が工事をする制度(急傾斜地崩壊対策事業)は別にあります。ただし要件があります。がけの高さ10m以上・区域内の人家5戸以上なら県事業、高さ5m以上・人家5戸以上なら市町村事業。しかも受益者負担金を含め、事業範囲内の全員の同意が必要です(*4 Q47・Q48)。隣の1軒が同意しなければ動きません。

つまり、がけ付きの家を買うというのは、建物を買うと同時に、そのがけの管理責任を引き受けることです。これは怖がらせたいのではなく、見積もりに入れておくべき項目だ、という話です。擁壁の状態と補修費用がいくらかかりうるかを先に見ておけば、指定されている土地を選ぶことも、十分あり得る判断になります。内見のときに擁壁のどこを見るかは築30年の擁壁は「潜在債務」=見るべき3点にまとめました。

今日の1歩

家の候補が決まっているなら、ちば情報マップで、指定区域と基礎調査予定箇所の両方を表示して、その住所を見る。5分で終わります。区域外だったとしても、近くのがけが基礎調査予定箇所に入っていないかまで見ておくと、数年後に慌てません。

洪水・土砂・液状化の3枚を重ねて見る手順は、ハザードマップは3枚重ねて見る に書きました。土砂は、そのうちの1枚です。土地のあとに建物を見る順番は1981年より2000年を見る(新耐震のもう一段)、貸す側が引き渡し前に何を潰しているかは大家は貸す前に家のどこを潰しているかにあります。

※本記事は公開されている法令・行政資料に基づく一般的な情報です。個別の物件の判断や法令の適用については、管轄の土木事務所・市町村の建築担当部局・宅地建物取引士等にご確認ください。


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出典