困ってから調べるの、遅いです。
地震保険は「火災保険の半分まで」しか掛けられない(罹災証明の全壊と、保険の全損は別の物差しです)(イメージ)30〜50%掛けられるのは火災保険の保険金額の30〜50%まで(地震保険に関する法律 第2条)
住まい編

地震保険は「火災保険の半分まで」しか掛けられない(罹災証明の全壊と、保険の全損は別の物差しです)

先回り大家最終確認 2026-09-11

地震保険の保険金額には、法律で上限が決まっています。火災保険の保険金額の30%以上50%以下です(*1)。そのうえで、建物は5,000万円、家財は1,000万円で頭打ちになります(*2)。

火災保険を3,000万円で掛けている家なら、地震保険は最大1,500万円。「全損」と認定されても、そこが天井です。

これは制度の抜け落ちではなく、設計です。地震保険に関する法律の第一条は、目的を「被災者の生活の安定に寄与すること」と書いています(*3)。家を建て直す金額を出す制度としては、はじめから作られていません。

だとすると、証券を見て確かめるべきは金額ではありません。自分の被害が、どの物差しで測られるかです。物差しは3つあって、3つとも中身が違います。順番に見ます。

物差し1:保険の区分は4つしかない

地震保険の支払額は、政令が定める4区分で決まります(*4)。

区分建物の損害の程度支払われる保険金
全損主要構造部の損害額が時価の50%以上(または焼失・流失した床面積が延べ床面積の70%以上)保険金額の100%
大半損同40%以上50%未満(または床面積50%以上70%未満)60%
小半損同20%以上40%未満(または床面積20%以上50%未満)30%
一部損同3%以上20%未満5%

大事なのは、測っているのが「主要構造部」だけだということです。柱・梁・基礎・屋根といった、家を支えている部分。壁紙が破れても、食器棚が倒れても、この物差しは動きません。

物差し2:罹災証明の区分とは、別の物差しです

市町村が出す罹災証明書の区分は6つあります(*5)。

罹災証明(住家の損害割合)地震保険の区分(主要構造部の損害割合)
全壊 50%以上全損 50%以上
大規模半壊 40%以上50%未満大半損 40%以上50%未満
中規模半壊 30%以上40%未満小半損 20%以上40%未満
半壊 20%以上30%未満(同上)
準半壊 10%以上20%未満一部損 3%以上20%未満
準半壊に至らない 10%未満(3%以上なら一部損)

数字が似ているので同じ制度に見えますが、同じではありません。

(a)分母が違います。 罹災証明は住家全体の経済的な被害の割合、地震保険は主要構造部の損害額と時価の割合です。同じ家を測っても、同じ数字にはなりません。片方の結果からもう片方を計算することはできません。

(b)区分の数が違います。 罹災証明の「中規模半壊」と「半壊」は、保険ではどちらも「小半損」の範囲に入ります。市町村の紙で区分が1つ上がっても、保険の支払割合は30%のまま動かないことがあります。

(c)決める人が違います。 罹災証明は市町村の調査、地震保険は保険会社の鑑定です。片方に不服があっても、もう片方が連動して変わるわけではありません。

(d)動き方が違います。 罹災証明は災害対策基本法で「被災者から申請があつたときは、遅滞なく…交付しなければならない」と書かれた申請主義です。自分から取りに行かないと出てきません。玄関に貼られる応急危険度判定の紙とも別物で、そちらは地震のあと、眠れる家に戻すまでの順番にまとめました。

見落とされているのは、下限のほうです

区分の対比表をもう一度見てください。下の端だけ、保険のほうが広いのが分かります。

罹災証明は10%未満だと「準半壊に至らない」で、公的な支援の多くは対象外になります。ところが地震保険は、主要構造部の損害が3%以上あれば「一部損」です。金額は保険金額の5%と小さいですが、罹災証明では何も付かない被害でも、保険では出ることがある、という順序になっています。

さらに、政令には「みなす」条文が2つあります(*6)。

  • 地震等が原因の地すべりなどで急迫した危険が生じ、居住不能になったとき=建物が壊れていなくても全損とみなす。斜面や擁壁を抱えている家は、この条文が自分に関係します。
  • 地震等が原因の津波・洪水などで床上浸水したとき(他の区分に当たらない場合)=一部損とみなす。

そして、地震を原因とする火災の損害は、地震保険がてん補すると法律に書かれています(*7)。火災保険の側は地震による損害を免責としているのが一般的です(扱いは約款によります)。感震ブレーカーで止めようとしている通電火災は、燃えたあとに効くのが火災保険ではなく地震保険のほう、ということです。

物差し3:家財は建物とまったく別の契約で、しかも基準が厳しい

家財(法律では「生活用動産」)の区分は、建物とは別に決められています(*8)。

区分家財の損害の程度支払われる保険金
全損損害額が時価の80%以上保険金額の100%
大半損60%以上80%未満60%
小半損30%以上60%未満30%
一部損10%以上30%未満5%

建物の「全損」は50%からですが、家財の「全損」は80%からです。基準は家財のほうが厳しい。

そのうえで決定的なのは、家財は建物とは別の契約だということです。建物にだけ地震保険を付けていて家財の欄が空欄なら、部屋の中身が全部壊れても、そこからは1円も出ません。割れた食器や倒れた棚は、建物の主要構造部ではないからです。

だから片づける前に写真を撮る話は、家財を掛けている人にとっては金額に直結します。掛けていない人にとっては、罹災証明のための記録にしかなりません。同じ「写真を撮る」でも意味が変わります。

全体には、もう一段の天井があります

1回の地震で支払うべき保険金の総額が、政府と保険会社で決めた総支払限度額を超える場合、契約ごとの保険金は次の式で削減されることがあります(*9)。

支払われる保険金 = 支払われるべき保険金 × (総支払限度額 ÷ 支払われるべき保険金の総額)

これは例外運用ではなく、地震保険に関する法律の第4条と施行令の第4条に書かれた仕組みです。「全損なら保険金額の100%」の上に、この割り算が乗っている、と読むのが正確です。

「7割が入っている」は、たぶん思っているものと違います

損害保険料率算出機構の公表値では、地震保険の付帯率は70.8%、世帯加入率は35.5%です(*10)。同じ制度の、同じ機関の数字が、2倍違います。

定義が違うからです。付帯率は「その年度に契約された火災保険(住宅物件)のうち、地震保険を付けた割合」。分母が、その年に火災保険を契約した人だけです。世帯加入率は「保有契約件数を全世帯数で割った割合」。

千葉県は付帯率65.8%、世帯加入率35.7%(*10)。新しく火災保険を契約する人の3人に2人は付けているが、全世帯で見れば3世帯に1世帯。この2つを混ぜると、自分の家の状態を読み違えます。

貸す側・借りる側で、掛けられるものが違います

地震保険の対象は、居住の用に供する建物か生活用動産だけです(*11)。ここから、賃貸では持ち物の切れ目がそのまま契約の切れ目になります。

  • 貸している家(建物)は人が住む建物なので対象です。掛けるのは大家です。
  • 入居者の家財は入居者のものです。大家は入居者の家財に地震保険を掛けられません。
  • 逆に借りている人が地震保険を掛けられるのは家財だけです。建物は自分のものではないからです。

借りて住んでいる人にとって、地震保険の話は最初から家財の話しかない、ということになります。大家が貸す前に見ている場所とは、そもそも守る対象が違います。

今日やること(3行)

  1. 保険証券か、更新のお知らせを1枚出す。 見るのは3つの数字だけ=火災保険の保険金額/地震保険の保険金額/家財の欄。
  2. 地震保険の金額を火災保険の金額で割る。 30%〜50%のどこかに必ず入っています。下限に近ければ、同じ火災保険のままでも動かせる幅があるということです。
  3. 家財の欄を見る。 空欄なら、その契約は「中身はゼロ」で組まれています。建物と家財は別の物差しで、別に契約するものだからです。

この記事は、法律と政令の条文、公的機関の公表統計を並べたものです。個別の契約でどう扱われるかは約款と保険会社の認定によりますので、金額と区分は必ず自分の証券と保険会社の説明で確かめてください。加入の可否を勧めるものではありません。

出典

  • *1 地震保険に関する法律 第2条第2項第4号=「附帯される損害保険契約の保険金額の百分の三十以上百分の五十以下の額に相当する金額(その金額が政令で定める金額を超えるときは、当該政令で定める金額)を保険金額とすること」(e-Gov法令検索・法令ID 341AC0000000073) https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000073
  • *2 地震保険に関する法律施行令 第2条=「政令で定める金額は、居住用建物については五千万円、生活用動産については千万円とする」(法令ID 341CO0000000164) https://laws.e-gov.go.jp/law/341CO0000000164
  • *3 同法 第1条=「保険会社等が負う地震保険責任を政府が再保険することにより、地震保険の普及を図り、もつて地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的とする」
  • *4 同施行令 第1条第1項第1号〜第4号(居住用建物の全損・大半損・小半損・一部損の定義と、保険金額の全額・100分の60・100分の30・100分の5)
  • *5 内閣府「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」(令和8年6月)総則6=全壊50%以上/大規模半壊40%以上50%未満/中規模半壊30%以上40%未満/半壊20%以上30%未満/準半壊10%以上20%未満/準半壊に至らない10%未満 https://www.bousai.go.jp/taisaku/pdf/r605shishin_all.pdf
  • *6 同施行令 第1条第4項(地すべりその他の災害による急迫した危険で居住不能になったときは全損とみなす)・同第5項(地震等を原因とする洪水等の水災による床上浸水等は一部損とみなす)
  • *7 同法 第2条第2項第2号=「地震若しくは噴火又はこれらによる津波…を直接又は間接の原因とする火災、損壊、埋没又は流失による損害」
  • *8 同施行令 第1条第1項第5号〜第8号(生活用動産の全損80%以上/大半損60%以上80%未満/小半損30%以上60%未満/一部損10%以上30%未満)
  • *9 同法 第4条・同施行令 第4条/損害保険料率算出機構「地震保険の再保険制度等」=削減の算式 https://www.giroj.or.jp/ratemaking/earthquake/reinsurance.html
  • *10 損害保険料率算出機構「グラフで見る!地震保険統計速報」=付帯率(全国70.8%・千葉県65.8%)は当該年度に契約された火災保険(住宅物件)契約件数のうち地震保険を付帯している件数の割合、世帯加入率(全国35.5%・千葉県35.7%)は地震保険保有契約件数を住民基本台帳に基づく世帯数で除した数値。いずれも直近公表値(2025年)。共済は含まない。 https://www.giroj.or.jp/databank/earthquake.html
  • *11 同法 第2条第2項第1号=「居住の用に供する建物又は生活用動産のみを保険の目的とすること」・同第3号=「特定の損害保険契約に附帯して締結されること」(=地震保険は単独では契約できない)