6.0%感震ブレーカーを設置している人の割合(内閣府 令和7年8月調査/家具固定は37.6%)感震ブレーカーで通電火災を止める(後付け3方式の実費)
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地震で家が燃えるとき、火元はたいてい「火」ではありません。電気です。阪神・淡路大震災で起きた地震火災139件のうち、電気を原因とするものが85件(約6割)。東日本大震災では108件のうち58件(約5割強)でした(*1)。
これを止める器具は、数千円から売っています。工事が要らないものもあります。
それでも、設置している人は100人のうち6人です。内閣府の令和7年8月調査で6.0%。同じ調査で、家具固定は37.6%、足元灯や懐中電灯の準備は51.3%でした(*2)。
家具は6人に1人以上が固定しているのに、電気は止めていない。値段の問題でも工事の問題でもありません。何が起きるのかを知らないだけです。順番に片づけます。
通電火災は「戻ってきた電気」で起きる
内閣府が挙げている典型例は2つです(*3)。
ケース1:家を留守にしているとき。 揺れで電気ストーブがスイッチオンの状態になる。そこへ洗濯物が覆いかぶさって着火する。
ケース2:停電のあと、復電するとき。 揺れで半抜けになっていたコンセントから火花が出る。周囲の可燃物やホコリに着火する。
どちらも共通しているのは、火をつけた人がその場にいないことです。だから初期消火が入らない。地震から数時間後、あるいは翌日以降に、誰もいない家から出火する。これが通電火災と呼ばれているものです。
ここで多くの人がこう考えます。「避難するときにブレーカーを落とせばいい」。正しいです。ただし、それが成立するのは在宅していて、かつ落とす余裕があるときだけです。
外出中に地震が来たら、あなたの家の分電盤には誰も手が届きません。感震ブレーカーは、その穴を埋めるための器具です。国も「不在時やブレーカーを切って避難する余裕がない場合に電気火災を防止する有効な手段」と書いています(*3)。
後付け3方式と、国が示している概算費用
感震ブレーカー等は震度5強相当以上の揺れを感知したときに、自動で電気を止める器具です(アンペアブレーカーや漏電ブレーカーとは別物)(*3)。大きく3方式あります。
① 分電盤タイプ(工事あり・一括遮断)分電盤のセンサーが揺れを感知し、主幹ブレーカーを落として家中の電気を止めます。設置には電気工事士による工事が必要。標準の「基本型」は、感知してから通常3分後に落ちます。この待機時間に、避難したり電気製品の電源を切ったりできます。既存の分電盤に感震リレーを外付けする「増設型」もあります(*4)。国の補助事業で使われた概算費用は7万円(*5)。
② コンセントタイプ(そのコンセントだけ遮断/一括遮断の製品もある)コンセント側のセンサーが感知し、接続した電熱器具などの電気を止めます。工事が要る埋込型と、差すだけのタップ型があります。在宅用の医療機器などを通電させたまま、危ない器具だけ止められるのが利点。弱点は、付けていないコンセントには効かないことと、数に比例して費用が増えることです(*4)。国の補助事業の概算費用は4千円(*5)。
③ 簡易タイプ(工事不要・一括遮断)おもりの落下やバネの作動でブレーカーのノブを叩き落とす補助器具です。自分で付けられます。市販品は数千円(*6)。予防できる範囲は分電盤タイプと同じく屋内配線全般ですが、揺れを感知した瞬間に一括で落ちます(*4)。
一番の落とし穴は「安いタイプほど、即・真っ暗になる」
ここが本題です。値段の差は性能の差だけではありません。電気が消えるタイミングの差です。
分電盤タイプの基本型は3分待つ。簡易タイプは待ちません。国のガイドラインはこう書いています。
簡易タイプの感震ブレーカー等については、大規模地震時に即時に一括して電気の供給が遮断され、夜間においては廊下・階段等を含めた照明が使用できず、加えて大きな揺れにより家具等が散乱していることも想定されることから(*4)
つまり、夜中に大きく揺れた直後、家中の明かりが消えた状態で、物が散らばった床を歩くことになります。ガイドラインはその対策として、停電時に作動する足元灯、寝室の懐中電灯、散乱したガラス片で怪我をしないためのスリッパ、高所の分電盤を操作するための安定した台座まで挙げています(*4)。
だから順番はこうです。足元灯・懐中電灯とセットで買う。別々の買い物にしない。 先ほどの調査で足元灯・懐中電灯が51.3%、感震ブレーカーが6.0%でした(*2)。多くの家は、片方だけ持っています。
買う前に通す3つのふるい
(1)推奨品かどうか。 一般財団法人日本消防設備安全センターが、一定以上の地震で遮断する感震ブレーカー等を推奨しています(簡易タイプの「スイッチ断ボールⅢ」「ヤモリ」、令和6年12月推奨の「ZEN断」など)(*7)。自治体の補助も、この推奨品に限っている例があります。
(2)作動震度は震度そのものではない。 ガイドラインは、建物の立地・地盤・構造・階、センサーを付けた壁の剛性によって作動は変わるとしています。発表震度が設定より小さくても作動したり、大きくても作動しなかったりする。「屋内で家具の転倒が起きる程度の揺れで電気が切れることを期待する器具」と理解してください(*4)。剛性の弱い壁への設置や、生活振動での誤作動にも注意が要ります。
(3)蓄電池・ポータブル電源との関係。 内閣府の最新のチラシ(令和8年3月)に、こう追記されています。「蓄電池を設置した住宅については、感震ブレーカーを設置した場合であっても、通電する仕様となっている場合があります」(*3)。停電に強くする設備と、電気を止める設備は、目的が逆を向くことがある。両方入れる家は、ここを必ず確認してください。
復電のときが本番
ブレーカーが落ちたあと、電気を戻す手順も決まっています(*4)。
- ガス漏れがないことを確認する。 ガスの臭いがしたら復電操作をしない。電灯のスイッチもコンセントの抜き差しもせず、メーターガス栓を閉めてガス会社へ連絡する。
- 電気製品と屋内外の配線、家屋の傾きを可能な範囲で確認する。
- 消火器を手元に置いてから復電する。
- 復電後に焦げた臭いがしたら、直ちにブレーカーを落とす。原因が分からなければ電気の使用を見合わせる。
順番が「ガス → 電気製品 → 消火器 → 復電」であることに意味があります。戻すのが一番あとです。
この「戻す順番」は、地震のあとに家を立て直していく段取り全体の中の1工程でもあります。電気をどこで挟むか、片づけと寝る場所のどちらを先にするかは地震のあと、眠れる家に戻すまでの順番に書きました。停電がそのまま長引いた場合に家の中で何から止まるかは千葉で停電が2週間続いたとき、家で何が止まったか、季節で対処が逆になる話は停電した夏と冬です。
大家として言えること:制度は「自分が住んでいる家」に向いている
私は千葉県で戸建てを3棟、貸しています。この1年で直したのは6件。2025年6月に屋根、9月に風呂の床。2026年3月にトイレの部品交換で19,800円、翌4月に同じトイレを本体ごと交換して本体43,500円+工事24,200円。6月は給湯器交換と雨漏り修理が同じ月に重なりました。
全部、壊れてから業者を呼んだものです。感震ブレーカーは、その逆側にある数少ない設備です。壊れる前に、数千円で付く。
もう一つ、貸す側・借りる側の両方に効く話を。補助制度は「自分が住んでいる家」を前提にしていることが多いです。千葉県内の例を2つ挙げます。
- 千葉市(令和8年度):対象は中央区・花見川区・稲毛区の指定町名(地震時に大規模火災が危惧される地域)。対象経費の2分の1・1世帯あたり上限3,000円。対象は簡易タイプで、日本消防設備安全センターの推奨品に限る。申請は令和8年4月1日〜12月15日(*8)。
- 野田市:対象は「自らが市内に所有し、居住している一戸建て住宅」。2分の1・上限5千円。コンセントタイプまたは簡易タイプで推奨マークのあるもの(*9)。
読み取れることは2つ。(a)補助は「木造密集市街地に住んでいる人」に向けて設計されているので、地域外だと使えないことがある。(b)「自ら居住」が条件だと、貸している家は対象外になりうる。大家が自分の貸家に付けるときは、自腹の前提で考えたほうが早いです。制度は自治体ごとに違うので、必ずお住まいの自治体で確認してください。
そして賃貸に住んでいる人へ。分電盤は貸主の設備です。勝手に交換できません。現実解は簡易タイプかコンセントタイプになります。工事不要で、退去時に外せます。壁に穴を開けずにできる対策の範囲は賃貸で穴を開けずにやる耐震にまとめてあります。
今日やること(3行)
- 家の分電盤の場所を確認する(高所なら、操作するための安定した台を1つ決めておく)
- 「感震ブレーカー + お住まいの自治体名 + 補助」で検索して、対象地域・上限額・対象タイプ・申請期間を見る
- 足元灯か懐中電灯を、寝室と廊下に1つずつ置く(感震ブレーカーは、これとセットで初めて成立する)
100人に6人しか付けていない、というのは、裏返せばまだ誰も競っていない対策ということです。困ってから調べるの、遅いです。
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- 足元灯・懐中電灯感震ブレーカー6.0%に対し足元灯51.3%=多くの家は片方だけ持っている。楽天市場で探す Yahoo!ショッピングで探す
出典
- *1 内閣官房 国土強靱化推進会議(第16回・令和7年10月23日)資料6「感震ブレーカーの設置促進の取組について」=「平成7年の阪神淡路大震災においては、139件の地震火災のうち、電気火災が85件(約6割)、平成23年の東日本大震災においては、108件の地震火災のうち、電気火災が58件(約5割強)発生している」。内訳は阪神・淡路=電気85件(約61%)/ガス・石油機器24件(約17%)/その他30件(約22%)、東日本大震災=電気関係58件(約54%)/その他50件(約46%)。原典は阪神・淡路が消防庁「地震時における出火防止対策のあり方に関する調査検討報告書」(平成10年)、東日本大震災が日本火災学会誌「2011年東日本大震災火災等調査報告書」。同資料はまた、南海トラフ地震防災推進地域内の感震ブレーカー設置率約8.5%が100%になった場合、火災による焼失棟数が5割減と試算(南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ報告書説明資料)。https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/suisinkaigi/joukyou_dai16/shiryou6.pdf
- *2 内閣府「防災に関する世論調査(令和7年8月調査)」問4「大地震に備えて、どのような対策をとっていますか」=「家具・家電などを固定し、転倒・落下・移動を防止している」37.6%、「揺れを感知して電気を止める感震ブレーカーを設置している」6.0%、「停電時に作動する足元灯や懐中電灯などを準備している」51.3%、「消火器を準備している」23.3%、「特に対策は取っていない」13.5%。https://survey.gov-online.go.jp/public_safety/202510/r07/r07-bousai/
- *3 内閣府(防災担当)チラシ「感震ブレーカー等の選び方」(令和8年3月作成)=「『感震ブレーカー等』は、震度5強相当以上の揺れを感知した際に、ブレーカーやコンセントなどの電気を自動的に止める器具です」「アンペアブレーカーや漏電ブレーカーと異なります」「感震ブレーカー等の設置は、不在時やブレーカーを切って避難する余裕がない場合に電気火災を防止する有効な手段です」。ケース1=「揺れにより電気ストーブがスイッチオン状態に。洗濯物が電気ストーブに覆いかぶさり着火!」、ケース2=「半抜けになっていたコンセントから火花が発生。周囲の可燃物、ホコリなどに着火!」。留意事項=「蓄電池を設置した住宅については、感震ブレーカーを設置した場合であっても、通電する仕様となっている場合があります」。内線規程では分電盤タイプの設置が、危険解消に取り組むべき地域および防火地域・準防火地域の住宅等で勧告的事項、それ以外で推奨的事項(内線規程は民間規格)。https://www.bousai.go.jp/jishin/kanshin_breaker.html / https://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/denkikasaitaisaku/pdf/denkikasaitirashi_202603.pdf
- *4 内閣府・消防庁・経済産業省「大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会」/「感震ブレーカー等の性能評価ガイドライン」(平成27年2月)=分電盤タイプ基本型は「一定時間後(通常の場合3分後)にブレーカーが落ち」、増設型は既存分電盤に感震リレーを外付け。簡易タイプは「揺れの感知と同時に作動し、電力供給が遮断される」「器具の取付けにあたり電気工事は不要」。5.1(2)=「簡易タイプの感震ブレーカー等については、大規模地震時に即時に一括して電気の供給が遮断され、夜間においては廊下・階段等を含めた照明が使用できず、加えて大きな揺れにより家具等が散乱していることも想定されることから、設置者においては上記のような備えのほか、屋内の暗所での移動時に散乱したガラス片等で怪我をすることのないようにスリッパ等を用意したり、高所に設置された分電盤の操作を容易とするための安定した台座の確保等についても配慮をしておくことが望ましい」。5.1(1)=「各地の発表震度が設定作動震度よりも小さい場合でも作動したり、逆に大きい場合でも作動しなかったりする場合も想定される」「屋内において家具の転倒等が生じる程度の大きな揺れが発生した場合に、電熱器具等への通電が遮断されることを期待するもの」。5.1(3)=復電時のガス漏れ確認・電気製品の安全確認・消火器の確保・焦げ臭を感じた場合の即時遮断。3.2=分電盤タイプは「感震性能、通電遮断の安定性も高く、加えて通電の遮断までに待機時間が設定されている」。https://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/denkikasaitaisaku/pdf/kanden_guideline.pdf
- *5 同検討会「大規模地震時の電気火災の発生抑制対策の検討と推進について(報告)」(平成27年3月)図表36=平成26年度「感震ブレーカー等設置推進事業補助金」の対象と概算費用=分電盤タイプ7万円(補助率2/3)/コンセントタイプ(電気工事不要)4千円(補助率1/2)。https://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/denkikasaitaisaku/pdf/guideline_houkoku.pdf
- *6 同報告 2.3=「現在市販されている感震ブレーカー等には、数万円の規格品から、数千円の補助器具まで様々な種類が見られる」。※本記事の金額は国の資料が示す概算・目安であり、製品・工事内容・住宅の状況により実費は変わります。見積りは電気工事店等でご確認ください。
- *7 総務省消防庁 参考資料6「感震ブレーカー推奨品について」(一般財団法人日本消防設備安全センターより情報提供)=簡易タイプ「スイッチ断ボールⅢ」「ヤモリ」、コンセントタイプ「COCO断」、新たに推奨を受けた製品「ZEN断(SND250GT)」=震度5強相当以上の揺れを感知した時に疑似漏洩電流を流し漏電ブレーカーを作動させて遮断・タイマー機能により0秒から3分間の中で30秒毎に遮断時間を設定可能・推奨年月日 令和6年12月3日。https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/post-166/04/sankou6.pdf / 推奨品一覧 https://www.fesc.or.jp/05/index3-b.html
- *8 千葉市「感震ブレーカー設置費用の補助を行います!(令和8年度)」=対象地域「中央区、花見川区、稲毛区の指定町名。地震時において大規模火災発生が危惧される地域」/補助額「感震ブレーカーの設置補助対象経費の2分の1(100円未満端数は切捨て、1世帯あたり補助上限3,000円)」/対象「簡易タイプで、一般財団法人日本消防設備安全センターが推奨したもの。令和7年3月末現在、11種類の商品が推奨品」/申請期間「令和8年4月1日(水)~令和8年12月15日(火)」。https://www.city.chiba.jp/shobo/yobo/yobo/kanshinbraker/8kanshinbraker.html
- *9 野田市「感震ブレーカー購入費等に助成金を支給」=対象「自らが市内に所有し、居住している一戸建て住宅(居住の用に供する部分が延べ床面積の2分の1以上であるものに限る。)に設置した」市民/助成「購入と設置にかかる費用の2分の1を助成」・上限5千円/対象は日本消防設備安全センターの認証(推奨マーク)を有するコンセントタイプまたは簡易タイプ。https://www.city.noda.chiba.jp/kurashi/oshirase/seikatsukankyo/1050357.html
- *10 自宅(千葉県の戸建て・賃貸中)の修繕実額。2025年6月=屋根修繕、2025年9月=風呂床修繕、2026年3月16日=トイレのボールタップ・フロート交換19,800円(税込・業者請求書)、2026年4月=同トイレの本体交換 本体43,500円(通販購入・領収書)+工事24,200円(税込・業者請求書)、2026年6月=給湯器交換および雨漏り修理。物件の所在地・業者名は非公開。