困ってから調べるの、遅いです。
停電した夏と冬(電気が止まった家で、体温だけは自分で守る)(イメージ)41.7%令和8年7月に熱中症で救急搬送された41,174人のうち、発生場所が「住居」だった人の割合(17,160人)。道路(21.0%)の約2倍で、発生場所別では最も多い。エアコンのある家で、この数字が出ている(総務省消防庁)
備え編

停電した夏と冬(電気が止まった家で、体温だけは自分で守る)

先回り大家最終確認 2026-09-03

本記事は広告(アフィリエイトリンク)を含みます。

消防庁が2026年8月25日に公表した確定値によると、令和8年7月に熱中症で救急搬送されたのは全国で41,174人。7月としては、調査を始めた平成20年以降で3番目に多い数でした。そして発生場所の内訳で最も多かったのは、道路(21.0%)でも仕事場(9.9%)でもなく、住居=17,160人・41.7%です(*1)。

家の中で、しかもエアコンがある状態で、この数字が出ています。停電は、その家からエアコンだけを抜き取る出来事です。

だから停電の備えは、明かりと冷蔵庫から考えると足りません。先に決めるのは体温のほうです。今日は、電気が止まった家で夏と冬に何をするかを、国が出している手順に沿って並べます。

1. 停電時に国が書いているのは「部屋を冷やせ」ではない

環境省が日本救急医学会の監修で出しているリーフレット「エアコンが使用できないときの熱中症対策」は、故障時や停電時を名指しした1枚です。書いてあることは、大きく3つに分かれています(*2)。

普段から停電時などに備える

●飲料や非常トイレ等を備蓄しましょう。●熱中症予防に利用できるように、浴槽やポリタンクに水を貯めておきましょう。●水をペットボトルに入れて凍らせておくと、もしものときに飲料にも冷却にも使えて便利です。

そして注記が1行入ります。「停電時は断水が起こる可能性があります」(*2)。水が止まったときに手・食器・ごみをどう守るかは断水したら衛生は「手・食器・ごみ」の順で崩れるに書きました。

体を冷やす

●涼しい服装に着替え、風通しをよくしましょう。●のどが乾いていなくても、こまめに水分補給をしましょう。●濡れたタオル等を肌に当て、うちわであおぐと熱が放散されます。●水道が使えるようなら、水浴び等で体を冷やしましょう。

涼しいところに避難する

●車内は短時間で気温が上昇しやすいため、車内への避難は可能な限り避けて、冷房設備が稼働している場所へ移動することをおすすめします。●やむを得ず車内で過ごす場合は、たとえ短時間でも小さな子どものみを車内に残すことは大変危険であり、絶対にやめましょう。

気づくことがあります。室温を何℃にする、という指示が1つもない。 停電時に国が書いているのは、部屋の温度ではなく体の冷やし方です。冷やす場所も決まっていて、環境省の「熱中症環境保健マニュアル ~総論~ 2025年7月版」は「手足や首、脇の下、大腿の付け根などを冷やしましょう」と書いています(*3)。

2. 夏の停電は、電気が要らない手から順に使う

上の内容を、電気の要る量が少ない順に並べ替えると、そのまま行動の順番になります。

  1. 濡らして、風を当てる。 濡れたタオルを肌に当ててうちわであおぐ。電源はゼロで、水が蒸発するときに熱を持っていきます。
  2. 凍らせた水を当てる。 首・脇の下・足のつけ根へ。溶けたら飲める。冷却と飲料の二役という点が、備蓄としての効きどころです(*2)。
  3. 服を替えて、風の通り道を作る。
  4. 移動する。 冷房が動いている場所へ。車内は避ける(*2)。
  5. どうしても電気を使うなら、いちばん小さいものから。 扇風機の消費電力はエアコンとは桁が違います。ポータブル電源で何時間動かせるかの計算は、ポータブル電源は何Wh要るかに置いてあります。

ここで大事なのは、1〜4は買い物がほぼ不要だということです。停電の備えというと電源の話になりがちですが、効く順に並べると、電源は5番目に出てきます。

なお、熱中症で運ばれた人のうち高齢者が60.2%(24,769人)、入院が必要な中等症・重症が41.4%、死亡が79人という内訳も同じ資料に載っています(*1)。直近の週(8月24日〜8月30日)の速報値も4,812人で、9月に入っても数字は落ちていません(*4)。夏の停電は、9月の話でもあります。

3. 冬の停電で危ないのは、寒さより「暖めようとした手段」

冬に電気が止まると、人は暖を取ろうとします。その「取り方」に、行政機関が名指しで注意喚起を出しています。

製品評価技術基盤機構(NITE)は、停電を名指しでこう書いています。携帯発電機について、「屋内では絶対に使用しないでください」、そして「屋外であっても、自動車内やテント内で使用すると屋内と同等以上の危険性」があり、「排ガスが逆流しないように出入口、窓など開口部から離れたところ、かつ、風通しの良いところで使用」すること(*6)。

一酸化炭素中毒の事故は、平成20年度から24年度までの5年間に51件あり、内訳は死亡13件・重傷4件・軽傷34件。NITEは「秋から冬に事故件数が多くなる傾向がある」としています(*5)。

一酸化炭素は無色無臭で、換気の悪い場所では短時間で濃度が上がります。冬の停電でやってはいけないことは1つだけ覚えればよく、それは「室内で燃やして暖を取ろうとすること」です。屋内で使える設計になっている暖房器具は、必ずその旨が取扱説明書と本体表示に書かれています。書いていないものは、屋内用ではありません。

4. 冬は部屋ではなく人を暖める(順番は3つ)

暖房が止まった家全体を暖め直すことは、電気なしではできません。できるのは、人のまわりだけ暖かい層を作ることです。

  1. 寝床の中を作る。 布団を重ねる、間に毛布を入れる。国の資料も、冬は部屋ではなく寝床の中を直す対象にしています。詳しくは停電の夜、寝室は何度まで動くかへ。
  2. 頭・首・足先を塞ぐ。 帽子、ネックウォーマー、厚手の靴下。体の中心を厚着しても、この3か所が開いていると熱は逃げ続けます。
  3. 床から切る。 段ボール、新聞紙、断熱マット。床は冷たさが入ってくる面で、ここを1枚挟むだけで体感が変わります。賃貸で床と湿気をどう見るかはマットレスを買い替える前に、床と湿気を見るに書きました。

火を使う調理器具をどれだけ持っておくかはカセットボンベは何本あればいいかにまとめてあります。寒い時期はボンベの消費が1.5倍になるので、冬の備蓄は夏の計算のままだと足りません。

5. もう1つの山は、電気が戻った瞬間にくる

停電の備えの話は、たいてい「復旧するまで」で終わります。実際には、復旧した瞬間にもう一度山があります。

東京消防庁が令和8年1月に出した「STOP!ストーブ火災」によると、過去5年間(令和2年〜6年の住宅火災)で管内のストーブを出火原因とする火災は451件。うち電気ストーブによる火災が76.7%を占めます。死者は43人で、そのうち34人は電気ストーブが出火原因、43人のうち35人が65歳以上でした。死傷者254人のうち、布団類や衣類・繊維類に着火したものが144件・56.7%です(*7)。

停電中、暖房器具のスイッチを入れたまま忘れ、その上や周りに布団や洗濯物を寄せておく——電気が戻ると、それがそのまま着火の条件になります。 NITEも復旧後の通電火災について、「電熱器具が周囲の可燃物に接触していたことによる発火や、家電製品の水没や部品の破損によりショートして発火する」事故が起きているとしています(*6)。

停電したら、真っ先にやることは暖房器具と電気ストーブのスイッチを切ってプラグを抜くこと。 地震による停電なら、揺れた時点で電気を止める装置もあります(感震ブレーカーで通電火災を止める)。

6. 大家として見ている、もう1つの停電の副作用

千葉県の戸建て3棟を貸しています。2026年6月に給湯器を交換した棟がありますが(*8)、給湯器は電気で動きます。ガスが来ていても、停電すれば湯は出ません。夏なら水で足りても、冬に湯が出ないのは、体温の話に直結します。

2019年の台風15号で千葉の停電が2週間続いたとき、家の中で何が止まったのかは千葉で停電が2週間続いたとき、家で何が止まったかにまとめました。止まるのは電気だけではありません。

今日やること(3行)

  1. 500mlのペットボトルに水を入れて、冷凍庫の隅に2本立てる。 冷却にも飲料にも使えます(*2)。今日できて、費用はゼロです。
  2. 家にある暖房器具のうち「燃えるもの」を1つ選び、取扱説明書の屋内使用の可否を見る。 書かれていなければ屋内用ではありません。
  3. 分電盤の扉の内側に、1行書いた紙を貼る。「停電したら、暖房と電気ストーブのプラグを抜く」

夏に41.7%の人が倒れているのは、外ではなく住居です(*1)。エアコンがある状態で、です。 困ってから調べるの、遅いです。


この記事の道具箱

以下は広告リンクです。選ぶ基準は本文と出典のとおりで、報酬額を理由に順位を変えることはしません。

この記事の道具箱をROOMでまとめて見る

出典

  • *1 総務省消防庁「令和8年7月の熱中症による救急搬送状況」(令和8年8月25日公表・確定値)=「令和8年7月の全国における熱中症による救急搬送人員は41,174 人となり、7月の調査を開始した平成20 年以降で3番目に多い搬送人員となりました」。年齢区分別=高齢者(満65歳以上)24,769人(60.2%)、成人13,116人(31.9%)、少年3,086人(7.5%)、乳幼児202人(0.5%)、新生児1人。初診時の傷病程度別=軽症23,912人(58.1%)、中等症15,718人(38.2%)、重症1,324人(3.2%)、死亡79人(0.2%)、その他141人(0.3%)で「入院が必要(中等症・重症)な方が41.4%」。発生場所別=「住居が最も多く17,160 人(41.7%)、次いで道路8,643 人(21.0%)、仕事場① 4,090 人(9.9%)、公衆(屋外)4,088 人(9.9%)の順」、ほかに公衆(屋内)3,287人(8.0%)、教育機関1,113人(2.7%)、仕事場②670人(1.6%)、その他2,123人(5.2%)。https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/heatstroke_geppou_202607.pdf
  • *2 環境省「エアコンが使用できないときの熱中症対策」(監修:一般社団法人日本救急医学会)=「故障時や停電時など、エアコンが使用できないとき、熱中症リスクが高くなるため、注意しましょう」「熱中症による健康被害は、高齢者において多発しております」。〈普段から停電時などに備えましょう〉「●飲料や非常トイレ等を備蓄しましょう。●熱中症予防に利用できるように、浴槽やポリタンクに水を貯めておきましょう。●水をペットボトルに入れて凍らせておくと、もしものときに飲料にも冷却にも使えて便利です」「停電時は断水が起こる可能性があります」。〈体を冷やしましょう〉「●涼しい服装に着替え、風通しをよくしましょう。●のどが乾いていなくても、こまめに水分補給をしましょう。●濡れたタオル等を肌に当て、うちわであおぐと熱が放散されます。●水道が使えるようなら、水浴び等で体を冷やしましょう」。〈涼しいところに避難しましょう〉「●車内は短時間で気温が上昇しやすいため、車内への避難は可能な限り避けて、冷房設備が稼働している場所へ移動することをおすすめします。●やむを得ず車内で過ごす場合は、たとえ短時間でも小さな子どものみを車内に残すことは大変危険であり、絶対にやめましょう」。https://www.env.go.jp/content/000136729.pdf
  • *3 環境省「熱中症環境保健マニュアル ~総論~ 2025年7月版」(令和7年7月11日公表)=「熱中症予防には、体をしっかりと冷やすことが重要です。適切にエアコン等を使用し、涼しい屋内・住まい内で過ごしましょう。また、皮膚を濡らして風で乾かすこと、水や冷えたタオルを体に当てることでも、体を冷やすことができます。体を冷やす際には、手足や首、脇の下、大腿の付け根などを冷やしましょう」「暑くなる前の時期から、自宅等の空調設備が使用可能かどうか【自身】で動作確認や試運転を行ってください」。暑さ指数について「日本生気象学会によると、暑さ指数28 以上で熱中症になる危険性が高まるため、外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意することが推奨されています」。https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/notice/20250711_notice1_a1.pdf
  • *4 総務省消防庁「熱中症情報」=「8月24日~8月30日までの全国の熱中症による救急搬送人員は、4,812人でした」(速報値)。https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/post3.html
  • *5 独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)「一酸化炭素中毒の事故防止について(注意喚起)」(平成25年11月28日)=「一酸化炭素中毒による事故は、平成20年度から24年度までの5年間に51件ありました。被害状況別にみると、死亡事故13件、重傷事故4件、軽傷事故34件ありました」。「秋から冬に事故件数が多くなる傾向がある」。https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2013fy/131128.html
  • *6 独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)「停電時の発電機によるCO中毒や、復旧後の通電火災に注意!」(令和5年8月29日)=携帯発電機は「屋内では絶対に使用しないでください」「屋外であっても、自動車内やテント内で使用すると屋内と同等以上の危険性」があり、「排ガスが逆流しないように出入口、窓など開口部から離れたところ、かつ、風通しの良いところで使用」すること。復旧後について「停電復旧後の通電により、電熱器具が周囲の可燃物に接触していたことによる発火や、家電製品の水没や部品の破損によりショートして発火するなどの製品事故も発生しています」。https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2023fy/prs230829.html
  • *7 東京消防庁 防災部防災安全課「STOP!住宅火災シリーズ③ STOP!ストーブ火災」(令和8年1月発行)=「過去5年間で東京消防庁管内においてストーブを出火原因とする火災が451件発生しました」「電気ストーブによる火災が76.7%で、非常に高い割合となっています」(出火原因ストーブの内訳は令和2年〜6年の住宅火災)。「ストーブ火災による死者は43人で、このうち34人は電気ストーブが出火原因となっています。また、死者43人のうち35人が65歳以上の高齢者です」「ストーブ火災による死傷者は計254人(死者43人、傷者211人)で、このうち約7割の174人は電気ストーブが出火原因となっています」「死傷者254人のうち、布団類や衣類・繊維類の可燃物に着火した件数は144件で、56.7%となっています」「ストーブ火災は、平均最低気温15度となる10月の秋頃から増え始め、4月の春先にかけての時期を中心に発生しており、注意が必要です」。防止のポイントは「外出時や就寝時は必ず消す」「周囲に布団やカーテン、洗濯物などの燃えやすいものを置かない」「スプレー缶は近づけない」「給油は必ず消してから行う」。https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/content/000058825.pdf
  • *8 自宅(千葉県の戸建て・賃貸中)の修繕実額。2025年6月=屋根修繕、2025年9月=風呂床修繕、2026年3月16日=トイレのボールタップ・フロート交換19,800円(税込・業者請求書)、2026年4月=同トイレの本体交換 本体43,500円(通販購入・領収書)+工事24,200円(税込・業者請求書)、2026年6月=給湯器交換および雨漏り修理。物件の所在地・業者名・棟の別は非公開。

※本記事は公表されている統計と行政・公的機関の案内の紹介です。熱中症を疑う症状が出たときの対処は、環境省のリーフレットおよび「熱中症環境保健マニュアル」に示された手順をご確認のうえ、必要に応じて医療機関にご相談ください。暖房器具・発電機・カセットこんろの使用可否と使用方法は、必ずお手元の製品の取扱説明書と本体表示にしたがってください。