困ってから調べるの、遅いです。
耐震改修の補助は市区町村ごとに別の制度です(戸建て83.0%・共同住宅30.3%という差と、見るべき1枚の表)(イメージ)83.0%戸建ての耐震改修に補助制度がある市区町村の割合(令和7年4月・全国1,741市区町村)
住まい編

耐震改修の補助は市区町村ごとに別の制度です(戸建て83.0%・共同住宅30.3%という差と、見るべき1枚の表)

先回り大家最終確認 2026-09-18

国土交通省の集計では、戸建住宅の耐震改修に補助制度がある市区町村は、全国1,741のうち1,445(83.0%)。同じ集計で、共同住宅(マンション・アパート)に補助があるのは527(30.3%)です(令和7年4月1日現在)(*1)。

つまり「耐震改修には補助が出る」は、住んでいる場所によって本当だったり本当でなかったりします。先に見るのは工務店の見積りではなく、自分の市区町村の行です。その行がどこにあるかを書きます。

国の表は「地方が出す前提」の分数で書かれています

令和8年度の国の支援策の一覧を見ると、住宅の耐震診断は「民間実施:国と地方で2/3」、耐震改修は「マンション:国と地方で1/3」「その他:国と地方で23%」と書かれています(*2)。

この「国と地方で」という書き方が、制度の形をそのまま表しています。国が個人に直接払う窓口はなく、市区町村の補助制度に国が乗る形です。中部地方整備局の説明も「地方公共団体に補助制度がある場合は、地方公共団体の補助制度と併せて活用いただくことで、耐震診断等の補助率が高くなるよう措置されています」となっています(*3)。

だから、市区町村に制度がなければ、国の分だけもらう、ということもできません。

法律は「計画を作るよう努める」までしか書いていません

耐震改修促進法の条文を読むと、理由がはっきりします。

一般の住宅について、法律が所有者に求めているのは第16条の「耐震診断を行い、必要に応じ、耐震改修を行うよう努めなければならない」=努力義務です(*4)。そして補助の中身は法律のどこにも書いてありません。書いてあるのは、都道府県が促進計画を「定めるものとする」(第5条)、市町村が「定めるよう努めるものとする」(第6条)という計画の話までです(*4)。

令和7年4月時点で、耐震改修促進計画そのものは98.8%の市町村が策定済みです(*5)。それでも補助制度は戸建てで83.0%。計画があることと、お金が出ることは別、ということになります。

千葉と埼玉で、中身がここまで違います

都道府県ごとの表を並べると、差の形がわかります(いずれも令和7年4月1日現在)(*1)。

  • 戸建住宅の耐震診断に補助があるのは、千葉県で54市区町村中54(100%)、埼玉県も63中63(100%)。北海道は179中49(27%)。
  • 共同住宅の耐震改修に補助があるのは、埼玉県で60(95%)に対し、千葉県は7(13%)、東京都は32(52%)。
  • 逆に、補強設計と改修をまとめて定額で出す「総合支援メニュー」は、千葉県が52(96%)に対し埼玉県は4(6%)。

隣り合った県でこれです。同じ「補助がある県」でも、出る形が違います。自分の家が戸建てなのか共同住宅なのか、設計から通しでやるのか、で当たり外れが変わります。

なお全国では、ブロック塀等の安全対策に補助があるのは846市区町村(48.6%)と、半分を切っています(*1)。

定額のパッケージは115万〜175万円です

総合支援メニュー(補強設計等+耐震改修または建替えをパッケージで行う戸建住宅等への定額補助)の令和8年度の交付額は、密集市街地等(防火改修含む)175万円/多雪区域140万円/その他115万円です(*2)。全国で1,119市区町村(64.3%)がこの形を持っています(*1)。

工事費の何割、ではなく定額なので、見積りが動いても額が動きません。自分の市区町村がこの型かどうかは、先に知っておく価値があります。

税の話は、補助とは別に2つあります

補助が出なくても、税の軽減は国の制度なので全国共通です。ただし要件の日付が微妙に違います。

所得税(住宅耐震改修特別控除)は、昭和56年5月31日以前に建築された、自己の居住の用に供する家屋が対象。標準的な工事費用相当額の10%(対象工事は250万円まで=25万円)で、併せて行う工事まで含めた最大は62.5万円。令和10年12月31日までの工事が対象です(*6)(*2)。

固定資産税の減額は、昭和57年1月1日以前から所在する家屋が対象。工事費が50万円(税込)を超えることが条件で、翌年度分の固定資産税が120㎡相当部分まで1年度分1/2になります。改修前に通行障害既存耐震不適格建築物だった場合は2年度分。令和13年3月31日までの工事が対象です(*7)(*2)。

ここで2つ、気づきにくい点があります。

1つ目。基準日が半年ずれています。 1981年6月から12月の間に建った家は、所得税の「昭和56年5月31日以前に建築」からは外れますが、固定資産税の「昭和57年1月1日以前から所在」には入り得ます。1981年より2000年を見るで書いたとおり、この時期の家は年で切ると判断を間違えます。

2つ目。固定資産税の要件に「自己の居住の用」が入っていません。 国土交通省が挙げている5つの要件は、所在時期・現行基準への適合・工事費50万円超・店舗等併用なら床面積の1/2以上が居住用・令和13年3月31日まで、です(*7)。所得税のほうにある自己居住の条件が、こちらには並んでいません。貸している住宅をどう扱うかは市区町村の判断になるので、断定はできませんが、窓口で確かめる価値はあります(私自身はまだ使ったことがありません)。

合格ラインは「評点1.0」です

補助も税の軽減も、「現行の耐震基準に適合する耐震改修」であることが条件です。木造住宅では、日本建築防災協会の一般診断法による上部構造評点1.0以上(かつ地盤・基礎が安全)が判定基準として示されています。マンション等では第2次・第3次診断法による構造耐震指標0.6以上です(*7)。

診断の結果が0.7なら、1.0まで上げる工事をして初めて対象になります。診断は「補助が使えるかどうかの入場券」で、診断だけして終わると何も残りません。

申告は「工事完了から3か月以内」です

固定資産税の減額は、工事完了日から3か月以内に、減額申告書・工事請負契約書の写し・費用がわかる書類・増改築等工事証明書(または住宅耐震改修証明書、住宅性能評価書)を市区町村の窓口へ出す必要があります(*7)。

証明書は、登録建築士事務所の建築士・指定確認検査機関・登録住宅性能評価機関・住宅瑕疵担保責任保険法人のいずれかが発行します(*7)。工事が終わってから探すと3か月は短いので、契約の前に「証明書は誰が出しますか」と聞いておくのが確実です。

マンションは、診断すると決議の条件が変わります

分譲マンションで改修が進まない一番の壁は、工事費よりも合意形成です。ここに条文の仕掛けがあります。

耐震診断を行ったマンションの管理者等は、所管行政庁に「耐震改修を行う必要がある旨の認定」を申請できます(第25条第1項)。この認定を受けた建物(要耐震改修認定建築物)の耐震改修が共用部分の変更にあたる場合、区分所有法第17条の4分の3以上の特別多数決議が「集会の決議」に読み替えられます(同条第3項)(*4)。

決議のハードルが下がる。そのために必要なのが耐震診断です。ただし前述のとおり、共同住宅の耐震診断に補助がある市区町村は全国で519(29.8%)しかありません(*1)。

今日やること(3行)

  1. 国土交通省の「地方公共団体における耐震改修等に対する補助制度の整備状況」を開き、自分の市区町村の行を見る。 診断・改修・戸建・共同住宅・総合支援メニュー・ブロック塀の列に○が付いているかだけ確認します(*1)。
  2. ○が付いていたら、市区町村名と「耐震診断 補助」で検索し、年度の上限額・受付期間・築年の条件を見る。 受付期間は年度内で締め切られるものが多く、ここが最初の関門です。
  3. 家の建築年月日を、登記事項証明書か固定資産税の課税明細で確かめる。 所得税は昭和56年5月31日、固定資産税は昭和57年1月1日が境目です。

補助の有無だけでなく、上限額・対象工事・申請の順番(着工前の申請が条件のことが多い)は市区町村ごとに違います。着工してから申請すると対象外になる制度が普通にあるので、見積りより先に窓口です。この記事は国が公表している資料を並べたもので、個別の可否は市区町村の担当課にご確認ください。全国の支援制度は、住宅リフォーム推進協議会の検索サイトでも調べられます(*8)。

家がどれくらい危ないかの見立ては1981年より2000年を見る、工事に入る前にできることは賃貸で穴を開けずにやる耐震と家具固定を1箇所だけやるならどこかに書きました。お金の側の話は地震保険は火災保険の半分までしか掛けられないから続いています。

出典

  • *1 国土交通省「地方公共団体における耐震改修等に対する補助制度の整備状況」(令和7年4月1日現在)=全国市区町村数1,741。耐震診断1,495(85.9%)/住宅1,489(85.5%)/戸建住宅1,469(84.4%)/共同住宅519(29.8%)/非住宅建築物522(30.0%)。耐震改修1,469(84.4%)/住宅1,458(83.7%)/戸建住宅1,445(83.0%)/総合支援メニュー1,119(64.3%)/共同住宅527(30.3%)/非住宅建築物531(30.5%)。ブロック塀等の安全対策846(48.6%)。都道府県別総括表=千葉県54市区町村(診断:戸建54・共同住宅14/改修:戸建52・総合支援メニュー52・共同住宅7)、埼玉県63市区町村(診断:戸建63・共同住宅63/改修:戸建63・総合支援メニュー4・共同住宅60)、東京都62市区町村(改修:共同住宅32)、北海道179市区町村(診断:戸建49/改修:戸建57)。注記「地方公共団体により、補助を受けられる住宅・建築物の条件が異なります」「市区町村別一覧」も同PDFに収載 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001845224.pdf
  • *2 国土交通省「住宅・建築物の耐震改修の支援策(令和8年度)」=住宅・建築物安全ストック形成事業(社会資本整備総合交付金・防災・安全交付金の基幹事業)。耐震診断 民間実施:国と地方で2/3・地方公共団体実施:国1/2。耐震改修等 マンション:国と地方で1/3・その他:国と地方で23%。パッケージ支援(補強設計等+耐震改修又は建替え)の交付額=密集市街地等(防火改修含む)175万円/多雪区域140万円/その他115万円。耐震改修促進税制=所得税(R10.12まで)耐震改修工事に係る標準的な工事費用相当額の10%等を所得税から控除/固定資産税(R13.3まで)固定資産税額(120㎡相当部分まで)を1年間1/2に減額。冒頭の注記「地方公共団体の補助制度については、住宅・建築物がある地方公共団体にお問い合わせください」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001864406.pdf
  • *3 国土交通省中部地方整備局「耐震化に向けた取組(補助制度)」=「地方公共団体に補助制度がある場合は、地方公共団体の補助制度と併せて活用いただくことで、耐震診断等の補助率が高くなるよう措置されています」「対象となる建築物が所在する地方公共団体(市区町村及び都道府県)に対し、補助制度の有無やその要件を必ず事前にお問い合わせの上」 https://www.cbr.mlit.go.jp/kensei/sumai_topics/hojoseido.htm
  • *4 建築物の耐震改修の促進に関する法律(平成7年法律第123号)第16条第1項(要安全確認計画記載建築物及び特定既存耐震不適格建築物以外の既存耐震不適格建築物の所有者の努力義務)/第5条第1項(都道府県耐震改修促進計画は「定めるものとする」)/第6条第1項(市町村耐震改修促進計画は「定めるよう努めるものとする」)/第25条第1項・第3項(区分所有建築物の耐震改修の必要性に係る認定と、区分所有法第17条の読み替え)/第26条(要耐震改修認定建築物の区分所有者の努力義務)。e-Gov法令API(法令ID 407AC0000000123)で原文取得 https://laws.e-gov.go.jp/law/407AC0000000123
  • *5 国土交通省「建築:住宅・建築物の耐震化について」=「令和7年4月時点で98.8%の市町村がすでに計画を策定」(掲載資料「地方公共団体における耐震改修促進計画の策定状況」)。同ページ掲載「住宅・建築物の耐震化の現状と目標」=住宅の耐震化率は平成15年約75%→平成20年約79%→平成25年約82%→平成30年約87%→令和5年約90%、目標は令和17年までにおおむね解消。「全国の耐震化率」=令和5年の総戸数約5,570万戸のうち耐震性不十分は約570万戸(戸建て住宅は耐震化率約85%・耐震性不十分約450万戸/共同住宅は約96%・約110万戸)。総務省「住宅・土地統計調査」をもとに国土交通省推計 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr_000043.html
  • *6 国税庁 タックスアンサー No.1222「耐震改修工事をした場合(住宅耐震改修特別控除)」=昭和56年5月31日以前に建築された家屋であって自己の居住の用に供する家屋、平成26年4月1日から令和10年12月31日までの間に住宅耐震改修をした場合。控除額=A×10%+B×5%(Aは耐震改修に係る標準的な費用の額で250万円が上限、Bは同時に行う一定の工事等) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1222.htm
  • *7 国土交通省「耐震改修に係る固定資産税の減額措置(適用期限:~令和13(2031)年3月31日)」=昭和57年1月1日以前から所在する家屋に現行の耐震基準に適合する耐震改修を行った場合、翌年度分の固定資産税が2分の1に減額(改修前に通行障害既存耐震不適格建築物であった場合は2年度分)。要件5つ=①昭和57年1月1日以前から所在②現行の耐震基準に適合する耐震改修③工事費が50万円(税込)超④店舗等併用家屋の場合は床面積の2分の1以上が居住用⑤令和13年3月31日までに工事。工事完了日から3か月以内に、固定資産税減額申告書・工事請負契約書の写し・費用が確認できる書類・増改築等工事証明書(登録建築士事務所に属する建築士、指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関、住宅瑕疵担保責任保険法人のいずれかが発行)または住宅耐震改修証明書(地方公共団体の長が発行)もしくは住宅性能評価書を市区町村の窓口へ提出。判断基準=木造は一般診断法による上部構造評点1.0以上かつ地盤及び基礎が安全であること、マンション等は第2次・第3次診断法による各階の構造耐震指標0.6以上。共同住宅は住戸単位ではなく棟全体で適合させることが必要 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001732362.pdf
  • *8 一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会「地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト」(国土交通省「住宅リフォームの支援制度」ページからリンク)=都道府県・市区町村・支援分類から補助制度を検索できる https://www.j-reform.com/reform-support/