困ってから調べるの、遅いです。
備え編

非常食は「何日分」ではなく「何食分」で買う(大人2人の1週間=レトルト18個・缶詰18缶・米4kg)

先回り大家最終確認 2026-09-21

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農林水産省が2026年3月に出した家庭備蓄の一覧には、「1週間分・大人2人の場合」としてこう並んでいます。水2リットル×6本×4箱、カセットコンロとカセットボンベ12本、米2キログラム×2袋、乾麺(そうめん2袋・パスタ2袋)、カップ麺6袋、パックごはん6個、レトルト食品18個、パスタソース6個、肉・魚の缶詰18缶、日持ちする野菜類、調味料、インスタント味噌汁や即席スープ、そして菓子(*1)。

防災売り場の「非常食セット」を1箱買っても、この表はほとんど埋まりません。埋まるのは主食の数食分だけです。買う前に数えるものは、日数ではなく食数です。

国のリストに並んでいるのは、ふだん食べているものです

上のリストで「防災用」として売られているのは、せいぜいカセットボンベくらいです。あとは米・乾麺・カップ麺・パックごはん・レトルト・缶詰・味噌汁。全部スーパーにあります。

農林水産省が推しているのはローリングストックという考え方で、定義はこうです。「普段の食品を少し多めに買い置きしておき、賞味期限を考えて古いものから消費し、消費した分を買い足すことで、常に一定量の食品が家庭で備蓄されている状態を保つための方法」(*2)。

量の目安は「最低3日分~1週間分×人数分の食品の家庭備蓄が望ましい」、そのうえで「できれば1週間分を備えましょう」。理由も同じページに書いてあります。ライフラインの復旧に1週間以上かかるケースが多く、支援物資が3日以上届かないこと、物流が止まって1週間スーパーやコンビニで食品が手に入らないことがあるから(*2)。

内閣府の令和7年8月の世論調査では、3日分以上備蓄しているものは飲料水69.8%、食料品59.8%、食品加熱用熱源27.7%でした(*3)。食料は6割が手をつけています。問題は、その6割のうち何人が中身を数えたか、です。

数える単位は「日」ではなく「食」です

大人2人の1週間は、3食×7日×2人で42食。これが買い物の母数です。

さきほどのリストを食数で読み直すと、こうなります(いずれも当方の計算)。

  • 主食:米は1食75グラム程度が目安なので、2キログラムの袋で約27食分。2袋で約53食分。42食に対して余ります。加えてカップ麺6袋とパックごはん6個、乾麺2種類。主食は、むしろ多めです。
  • 主菜:レトルト食品18個+肉・魚の缶詰18缶で36食分。42食には6食足りません。その差を、パスタソース6個や即席スープが埋める形になっています。
  • 水:2リットル×6本×4箱で48リットル。1人1日3リットル×2人×7日=42リットルなので、6リットル多い(*1)。

つまり、国のリストの重心は「おかず」にあります。米は家にある。足りなくなるのは、米にかけるものです。

非常食セットを1箱買っただけで止まっている家は、たいていこの逆です。主食(アルファ米やパン)は数十食あるのに、それと一緒に食べるものが1食もない。

4人家族なら84食、3人なら63食。人数を入れると自動で必要量を出してくれる公的なツールもあります(東京都の「東京備蓄ナビ」=*4)。数える作業を人力でやる必要はありません。やる必要があるのは、出てきた数と、いま家にある数を突き合わせることだけです。

最初に決めるのは味ではなく「水と火が要るかどうか」

食料の棚を作るとき、最初に分ける軸は味でも値段でもありません。その食品が、水を使うか、火を使うかです。

2019年の台風15号では、全国で13万9,744戸が断水しました。国の調査報告書に載っている水道施設の被害294件のうち、284件は原因が「停電」で、水道管そのものの破損は0件です(*5)。電気が止まると水も止まる、という順番で起きます。

だから、食料はこの3つに分けて持ちます。

  1. そのまま食べられるもの(缶詰、パンの缶詰、菓子、ようかん)=水も火も要らない。最初の数食はここから出す。
  2. 水だけで食べられるもの(アルファ米などの、湯でも水でも戻せるタイプ)=水が出るか、備蓄水を使える段階で有効。戻し時間は湯と水で違い、必ずパッケージに書いてあります。買う前にその数字を見る。
  3. 火が要るもの(レトルト、パックごはん、乾麺、カップ麺)=カセットコンロとボンベが揃って初めて食べられる。

内閣府の同じ調査で、食料品59.8%に対して食品加熱用熱源は27.7%(*3)。食べ物のほうが、火よりずっと先に買われています。3のグループばかり増やすと、停電の初日に食べられるものが家から消えます。ボンベの本数はカセットボンベは何本あればいいか、水の量は水は1人1日3Lに分けて書きました。

賞味期限は「回す棚」と「置く棚」の2つに分ける

食品表示基準の定義は、こうなっています(*6)。

  • 消費期限=「定められた方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の品質の劣化に伴い安全性を欠くこととなるおそれがないと認められる期限」
  • 賞味期限=「定められた方法により保存した場合において、期待される全ての品質の保持が十分に可能であると認められる期限」。ただし書きが付いていて、「当該期限を超えた場合であっても、これらの品質が保持されていることがあるものとする」

備蓄に使う食品はほぼ全部が賞味期限のほうです。性質が違うので、棚を2つに分けます。

  • 回す棚=ふだん食べるレトルト・缶詰・パックごはん・乾麺。賞味期限は1〜2年程度のものが多い。古いものから食べて、食べた分だけ買い足す(ローリングストック)。
  • 置く棚=5年保存の水、アルファ米、長期保存のパン缶。年に1回、日付だけ見る。普段は開けない。

この2つを混ぜると、どちらも管理されなくなります。「賞味期限が近いから食べよう」と思ったときに、5年物と1年物が同じ箱に入っていると、結局どれも手が出ません。保管場所を物理的に分けるのが一番早いです。

買う直前に見る5つ(この順に見る)

商品ページで比べるとき、上から順にこれだけ見れば足ります。

  1. 加熱なしで食べられるのは何食か。 箱の食数ではなく、「火も水も要らない食数」を数える。ここが0の箱は、単体では成立しません。
  2. 水がどれだけ要るか。 戻すのに使う水は、備蓄水(1人1日3リットル)から引かれます。飲む水とは別枠ではありません。
  3. 1食あたりの単価。 セット価格÷食数。箱の値段では比べられません。
  4. 届いた時点での残り期限。 「5年保存」は製造からの年数です。残り3年で届くこともあります。
  5. 食べたことがあるか。 味見を1袋してから箱で買う。これが最後にして最大の項目です。

5番目を飛ばして箱で買うと、期限が来たときに食べきれず、そのまま捨てることになります。ローリングストックが回らない原因は、たいてい「まずいから食べたくない」です。備蓄は、消費できる味でないと在庫になりません。

なお農林水産省は、乳幼児・高齢者・慢性疾患・食物アレルギーのある人に向けた「要配慮者のための災害時に備えた食品ストックガイド」を令和8年9月に公開しています。該当する家族がいる場合は、一般向けのリストを埋める前にこちらを見たほうが早いです(*7)。

今日やること(3行)

  1. 家族の人数×3食×7日を計算して、紙に書く。 大人2人なら42食。これが今日の母数です。
  2. 家の中にある「そのまま食べられるもの」を数える。 缶詰・パン缶・菓子。ここが3食未満なら、最初に足すのはそこです。
  3. 味見していない備蓄を1つ開けて食べる。 食べられたら箱で買う。食べられなかったら、その商品はもう買わない。

私が千葉県で貸している戸建て3棟の修繕は、この1年で6件。全部、壊れてから業者を呼んだものです。食料も同じで、要るとわかってからでは手に入りません。違うのは、食料は買っておけば必ず日常で消費できるという点です。捨てずに回せるぶん、住まいの修繕より先回りしやすい支出です。

一式をまとめて揃える順番は防災セットは既製品か自作か、家にとどまる前提の全体像は在宅避難で必要になるもの、停電が実際に何を止めたかは千葉で停電が2週間続いたとき、家で何が止まったかに書きました。

この記事の道具箱

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出典

  • *1 農林水産省 aff(あふ)2026年3月号 特集「知って備える 家庭備蓄のイロハ」=「家庭備蓄の例 1週間分・大人2人の場合」。必需品=水 2リットル×6本×4箱(1人1日およそ3リットル程度/飲料水+調理用水)、カセットコンロ、カセットボンベ×12本(1人1週間およそ6本程度)。主食=米 2キログラム×2袋(1人1食75グラム程度)、乾麺(そうめん2袋 300グラム/袋・パスタ2袋 600グラム/袋)、カップ麺類×6袋、パックごはん×6個、その他(ロングライフ牛乳・シリアルなど)。主菜=レトルト食品(牛丼の素、カレーなど)18個・パスタソース6個、缶詰(肉・魚)お好みのもの18缶。副菜・その他=日持ちする野菜類、調味料、梅干し・のり・乾燥わかめ、野菜ジュース・果汁ジュース、インスタント味噌汁や即席スープ、菓子類。同特集には「便秘や口内炎に注意」「日持ちする野菜や果物を常備」の注意も掲載 https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2603/spe1_01.html
  • *2 農林水産省「家庭備蓄ポータル」および「災害時に備えた食品ストックガイド」(平成31年3月)=「最低3日分~1週間分×人数分の食品の家庭備蓄が望ましい」「災害発生からライフライン復旧まで1週間以上を要するケースが多くみられます」「災害支援物資が3日以上到着しないことや、物流機能の停止によって、1週間はスーパーマーケットやコンビニなどで食品が手に入らない」(食品の家庭備蓄のすすめ)。ローリングストックの定義=「普段の食品を少し多めに買い置きしておき、賞味期限を考えて古いものから消費し、消費した分を買い足すことで、常に一定量の食品が家庭で備蓄されている状態を保つための方法」「できれば1週間分を備えましょう」(簡単!ローリングストック)。備蓄食品の選び方の章では、主菜・副菜・主食・果物・牛乳乳製品・菓子嗜好品・調味料の7分類と、たんぱく質・ビタミン・ミネラル・食物繊維の不足に注意することが示されている https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/foodstock/index.html
  • *3 内閣府「防災に関する世論調査(令和7年8月調査)」4.家庭で準備する備蓄(1)=「家庭において、3日分以上備蓄しているものはどれか聞いたところ、『飲料水』を挙げた者の割合が69.8%と最も高く、以下、『食料品』(59.8%)、『衛生用品』(38.4%)、『食品加熱用熱源』(27.7%)、『携帯トイレ・簡易トイレ』(27.2%)などの順となっている」(複数回答・上位5項目) https://survey.gov-online.go.jp/public_safety/202510/r07/r07-bousai/
  • *4 東京都「東京備蓄ナビ」=家族の人数・年代・性別・ペットの有無を入力すると、必要な備蓄品目と数量の目安が表示される都の公式サイト https://www.bichiku.metro.tokyo.lg.jp/
  • *5 厚生労働省「令和元年台風第15号 水道施設被害状況調査報告書」ほか=最大断水139,744戸(千葉県内133,474戸・15事業体)、水道施設の被害294件のうち284件は被害の原因が「停電」、管体・継手の破損は0件。当サイト「千葉で停電が2週間続いたとき、家で何が止まったか」(2026-08-19確認)からの再掲 /chiba-teiden-2shukan/
  • *6 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)第2条第1項第7号(消費期限)・第8号(賞味期限)。e-Gov法令API(法令ID 427M60000002010)で原文取得 https://laws.e-gov.go.jp/law/427M60000002010
  • *7 農林水産省「要配慮者のための災害時に備えた食品ストックガイド」(令和8年9月)=乳幼児、高齢者、慢性疾患・食物アレルギーの方などに向けて、家庭備蓄に必要な情報と災害時の食事の注意点をまとめたもの。同ページの「災害時に備えた食品ストックガイドの概要版」は2026年9月に内容が変更されている https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/foodstock/guidebook.html