困ってから調べるの、遅いです。
避難所に行かない備え=在宅避難で必要になるもの(国の定義では「自らの備蓄を利用して避難生活を送る人」)(イメージ)変えられるのは1つだけ自宅にとどまれる3条件のうち、あとから変えられるのは備蓄だけ(内閣府)
暮らし編

避難所に行かない備え=在宅避難で必要になるもの(国の定義では「自らの備蓄を利用して避難生活を送る人」)

先回り大家最終確認 2026-09-07

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内閣府が配っている「避難行動判定フロー」の裏面には、こう書かれています(*1)。

「避難」とは「難」を「避」けることです。安全な場所にいる人は、避難場所に行く必要はありません。

これを読んで「じゃあうちは在宅避難でいい」と決めた人は、たぶん同じ紙の表面を読んでいません。表面には、自宅にとどまってよい条件が3つ書いてあります。そのうち2つは家の場所で決まっていて、あとから動かせません。変えられるのは3つ目だけです。

そして3つ目は、備蓄の量そのものです。

1. 国の定義では、在宅避難者とは「備蓄を使っている人」です

内閣府が令和6年6月に出した「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」は、在宅避難者をこう定義しています(*2)。

「在宅避難者」とは、単に災害時に自宅等で生活を行っている人を広く指すものではなく、災害によるガスや水道といったインフラの途絶や物流網の途絶、家屋への被害等のため、自らの備蓄を利用し、或いはなんらかの支援を受けて避難生活を送る人であり、必要な支援を実施する必要がある

「自宅にいる人」ではありません。「自らの備蓄を利用して避難生活を送る人」です。

同じ手引きの基本的な考え方には、もっと直接的な一文があります(*2)。

まずは、国民一人ひとりが備蓄等を行い、災害時の避難生活に備えることが必要である。その上で、災害により被害を受けるなど、支援が必要となる避難者等について、避難している場所にかかわらず、適切な支援が行われるようにすることが必要である。

順番が書かれています。備蓄が先で、支援が後です。 在宅避難は「避難所に行かない」という選択ではなく、備蓄で条件を満たして初めて選べるものだ、というのが国の資料の立て付けでした。

2. 自宅にとどまれる条件は3つ。動かせるのは3つ目だけ

避難行動判定フローの表面に戻ります。浸水の危険がある場所でも、次の3つがそろえば「屋内安全確保(自宅に留まり安全確保すること)」が可能だ、と書かれています(*1)。

  1. 洪水により家屋が倒壊又は崩落してしまうおそれの高い区域の外側である(家屋倒壊等氾濫想定区域に入っていない)
  2. 浸水する深さよりも高いところにいる
  3. 浸水しても水がひくまで我慢できる、水・食糧などの備えが十分にある

1と2は、住んでいる場所と建物の階数で決まります。今日から変えることはできません。変えられるのは3だけです。

しかも同じ紙は、3が満たせないとどうなるかまで書いています(*1)。

水、食糧、薬等の確保が困難になるほか、電気、ガス、水道、トイレ等の使用ができなくなるおそれがあります

備えが足りない状態で家に残ることは、フローの上では「在宅避難」ではなく、ただの取り残されです。1と2は自分のハザードマップで確認してください(ハザードマップは3枚重ねて見るに、洪水・土砂・液状化の3枚を重ねる手順を書いています)。この記事は3の話をします。

3. 支援は「努力義務」です。届く前提で数えない

避難所以外にいる被災者への支援は、災害対策基本法にも書かれています。第86条の7です(*3)。

災害応急対策責任者は、やむを得ない理由により避難所に滞在することができない被災者に関する情報を把握するとともに、これらの者に対しても、必要な生活関連物資の配布、保健医療サービス及び福祉サービスの提供、情報の提供その他これらの者の生活環境の整備に必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

条文の主語は行政(災害応急対策責任者)で、語尾は「努めなければならない」です。義務ではなく、努力義務です。 さらに条文が対象にしているのは「やむを得ない理由により避難所に滞在することができない被災者」で、自分で選んで家に残る人がそのまま含まれるとは、条文だけからは読み取れません。

運用の側は、もっと広く取っています。手引きは「避難所で行うことが求められる支援の水準と同程度となるよう支援を実施することが適切である」と書いていますし、在宅避難者向けの支援拠点を作ることも自治体に求めています(*2)。それでも、条文が努力義務であることは変わりません。

支援は来る前提で数えず、来たら助かる、で数える。 これが在宅避難の備蓄量の決め方です。

4. 在宅のほうが、災害関連死の比率は高い

もうひとつ、手引きのはじめにある一文を引きます(*2)。

災害を起因とした負傷の悪化や避難生活等の身体的負担による疾病が原因で死亡するいわゆる災害関連死が、避難所滞在中と比較して自宅等において高い比率で発生している

内閣府の「災害関連死事例集」を根拠にした記述です。

これは「在宅避難は危ない」という話ではありません。避難所には、良し悪しは別として人の目と物資の流れがあり、家にはそれが無い、というだけの話です。だから在宅避難は、家にいるだけでは成立しません。設計が要ります。災害関連死そのものは直接死より多い災害関連死に別途書きました。

5. 「何日分あるか」を、今日いちど数える

在宅避難で必要になるものは、避難所へ持っていく非常持ち出し袋とは別物です。持ち出し袋は「運べる量」、在宅避難の備蓄は「家に積める量」で、上限の決まり方が違います。

数え方の基準は、すでに公表されている数字で足ります。

  • 水=1人1日3リットル。最低3日分、大規模災害では1週間分が望ましい(*4)。4人家族の1週間分は84リットル=2リットルボトルで42本です。飲み水とは別に、トイレを流す生活用水も要ります(「水は1人1日3L・3日分」の根拠と、4日目から起きること)
  • トイレ=排泄回数の目安は1人1日5回(*5)。4人家族なら1日20回分。3日で60回分、1週間で140回分です(携帯トイレは「何回分」で足りるか)
  • 熱源=カセットこんろとボンベ。手引きも、ガスや水道が止まった在宅避難者へ配る物資の例として「カセットコンロ・ボンベや飲料水等」を最初に挙げています(*2)(カセットボンベは何本あればいいか)
  • 電気=明かりと、スマホの充電。容量の決め方はポータブル電源は何Wh要るかに書きました
  • 季節のもの=手引きは「夏季であれば高温や熱中症への対策、冬季であれば暖を得るための物資」と、季節で必要物が変わることを明記しています(*2)(停電した夏と冬)

内閣府の令和7年8月の世論調査では、3日分以上備蓄している人の割合は、飲料水69.8%、食料品59.8%に対して、携帯トイレ・簡易トイレは27.2%でした(*6)。水と食料は多くの家がすでに手をつけていて、トイレだけが3割を切っています。足りていないのはたいてい、水ではなくトイレです。

6. 「取りに行く先」を、先に1つ決めておく

在宅避難の備えは、家の中だけでは終わりません。手引きは、在宅避難者が水や食料、トイレなどを受け取る支援拠点を、自治会や町内会の単位で設けることを想定しています。設置場所の候補として挙がっているのは、地域の公民館、自治会館、公園、コンビニエンスストア等の屋外スペース、寺社など、住民が集う場所です(*2)。

実際に令和3年8月豪雨で支援拠点を3か所設けた自治体の例では、配られた物資に、水・食料のほかに防塵マスク、ゴム手袋、長靴、生理用品、消毒スプレー、懐中電灯、毛布、ゴミ袋などが並んでいます(*2)。家に積んでおくものと、もらいに行けるものは違います。

だから在宅避難の準備には、備蓄の他にもう1つ項目が要ります。自分の地域で、水と物資はどこへ取りに行くことになっているのか。多くの自治体は、指定避難所そのものを在宅避難者への配布拠点として運用します。市区町村のサイトか防災マップで、1か所だけ名前を確認して、家族に言えるようにしておいてください。ここは調べるのに5分もかかりません。

7. 貸す側から見ると、在宅避難が崩れるのは「設備」から

千葉県で戸建てを3棟貸している立場で言うと、建物が無事でも生活が止まる原因は、たいてい構造ではなく設備です。2026年6月に1棟で給湯器を交換し、雨漏りを直しました。給湯器が止まれば、家はどこも壊れていないのに、その日から湯が出ません。

手引きにも、同じことが書かれています(*2)。

周囲に比べて物理的に大きな被害がないように見える人であっても、停電や断水等の状況によっては日常生活に支障が生じている可能性もある

2019年の房総半島台風では、千葉県内で13万3,474戸が断水しました。国の報告書によれば、水道施設の被害294件のうち284件は原因が「停電」で、水道管の破損は0件です(*7)。家も水道管も無事なまま、水だけが止まるという形は、この県ではすでに一度起きています(千葉で停電が2週間続いたとき、家で何が止まったか)。

在宅避難で最初に効くのは、耐震でも間取りでもなく、電気が止まった状態でも回る水とトイレと熱源でした。

今日の1歩

冷蔵庫と押し入れを開けて、「何日分あるか」を紙に3行書いてください。

  • 水 … ○リットル ÷(3L × 人数)= ○日分
  • トイレ … ○回分 ÷(5回 × 人数)= ○日分
  • 熱源 … ボンベ○本

この3行を書くと、たいていトイレの行だけが極端に短くなります。そこが、あなたの家の在宅避難できる日数です。いちばん短い行が、その家の日数です。

そのうえで、ハザードマップで1と2(家屋倒壊等氾濫想定区域の外か、浸水深より高いか)を確認する。1と2が満たせない家は、備蓄をいくら積んでも在宅避難の対象外です。そのときは、安全な親戚・知人宅やホテルという選択肢を、平時のうちに相談しておく——これも同じ紙に書いてあることです(*1)。


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出典

  1. 内閣府(防災担当)「台風・豪雨時に備えてハザードマップと一緒に『避難行動判定フロー』を確認しましょう」(避難情報に関するガイドライン 令和3年5月・関連資料)=表面のフローに「※浸水の危険があっても、①洪水により家屋が倒壊又は崩落してしまうおそれの高い区域の外側である ②浸水する深さよりも高いところにいる ③浸水しても水がひくまで我慢できる、水・食糧などの備えが十分にある 場合は屋内安全確保(自宅に留まり安全確保すること)も可能です」、裏面の参考情報に「❸水がひくまで我慢でき、水・食糧などの備えが十分(十分じゃないと…)水、食糧、薬等の確保が困難になるほか、電気、ガス、水道、トイレ等の使用ができなくなるおそれがあります」「『避難』とは『難』を『避』けることです。安全な場所にいる人は、避難場所に行く必要はありません。避難先は小中学校・公民館だけではありません。安全な親戚・知人宅やホテル・旅館に避難することも考えてみましょう」。https://www.bousai.go.jp/oukyu/hinanjouhou/r3_hinanjouhou_guideline/pdf/flow.pdf (2026-09-07 PDFを取得し全文から引用を照合)
  2. 内閣府(防災担当)「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」(令和6年6月・全79ページ)=p.2「災害を起因とした負傷の悪化や避難生活等の身体的負担による疾病が原因で死亡するいわゆる災害関連死が、避難所滞在中と比較して自宅等において高い比率で発生している」(脚注1=内閣府「災害関連死事例集(増補版)」令和3年4月・令和5年5月追補)、p.4「まずは、国民一人ひとりが備蓄等を行い、災害時の避難生活に備えることが必要である。その上で、…避難している場所にかかわらず、適切な支援が行われるようにすることが必要である」「支援の内容は、それぞれの避難生活環境に応じて異なるが、避難所で行うことが求められる支援の水準と同程度となるよう支援を実施することが適切である」、p.31「『在宅避難者』とは、単に災害時に自宅等で生活を行っている人を広く指すものではなく、…自らの備蓄を利用し、或いはなんらかの支援を受けて避難生活を送る人であり」、p.32「ガスや水道の途絶について困っているという状況であれば、カセットコンロ・ボンベや飲料水等の物資支援を行う」「夏季であれば高温や熱中症への対策、冬季であれば暖を得るための物資を配布する等低温への注意が必要である」、p.33 コラム(佐賀県大町町・令和3年8月豪雨で3か所の地域支援拠点を設置)の具体的な支援物資の例、p.34「支援拠点の設置場所として、地域の公民館、自治会館、公園、コンビニエンスストア等の屋外スペースのほか、行政や商業、教育の拠点となっている場所、寺社といった住民が集う場所が候補として考えられる」「周囲に比べて物理的に大きな被害がないように見える人であっても、停電や断水等の状況によっては日常生活に支障が生じている可能性もある」。https://www.bousai.go.jp/taisaku/shien/pdf/tebiki.pdf (2026-09-07 PDFを取得し該当ページから引用を照合)
  3. 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第86条の7(避難所以外の場所に滞在する被災者についての配慮)=「災害応急対策責任者は、やむを得ない理由により避難所に滞在することができない被災者に関する情報を把握するとともに、これらの者に対しても、必要な生活関連物資の配布、保健医療サービス及び福祉サービスの提供、情報の提供その他これらの者の生活環境の整備に必要な措置を講ずるよう努めなければならない」。e-Gov 法令API(法令ID 336AC0000000223)で条文原文を取得。https://laws.e-gov.go.jp/law/336AC0000000223 (2026-09-07 取得)
  4. 首相官邸「災害が起きる前にできること」=「飲料水 3日分(1人1日3リットルが目安)」「※ 大規模災害発生時には、『1週間分』の備蓄が望ましいとされています」「※ 飲料水とは別に、トイレを流したりするための生活用水も必要です」。https://www.kantei.go.jp/jp/headline/bousai/sonae.html / 農林水産省「災害時に備えた食品ストックガイド」=「最低3日分〜1週間分×人数分の食品の家庭備蓄が望ましい」。https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/foodstock/guidebook.html (当サイト「水は1人1日3L」執筆時 2026-08-21 に取得・確認)
  5. 内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」=排泄回数の目安は1人1日5回、排泄量200〜300ml/回。https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/2412hinanjo_toilet_guideline.pdf (当サイト「携帯トイレは何回分で足りるか」執筆時に取得・確認)
  6. 内閣府「防災に関する世論調査(令和7年8月調査)」(調査時期 令和7年8月21日〜9月28日、郵送法、有効回収数1,707人・有効回収率56.9%)=家庭で3日分以上備蓄しているもの「飲料水」69.8%、「食料品」59.8%、「衛生用品」38.4%、「食品加熱用熱源」27.7%、「携帯トイレ・簡易トイレ」27.2%。https://survey.gov-online.go.jp/public_safety/202510/r07/r07-bousai/ (当サイト既掲載記事で 2026-08-21 に取得・確認)
  7. 厚生労働省 水道課「令和元年度(2019年)房総半島台風及び東日本台風 水道施設被害状況調査報告書」(令和3年3月)=水道施設被害294件のうち284件は被害要因が「停電」、管体の破損0件・継手の破損0件。断水は全国13万9,744戸、千葉県内13万3,474戸・15事業体。水道行政の移管によりPDFは環境省サイトに掲載。https://www.env.go.jp/content/900547254.pdf (当サイト「千葉で停電が2週間続いたとき」執筆時に取得・確認)
  8. 自宅外の貸家(千葉県の戸建て)の修繕記録=2026年6月、1棟で給湯器交換および雨漏り修理を実施(業者請求書)。物件の所在地・業者名は非公開。

※本記事は公的資料の読み方をまとめたものです。避難するかとどまるかの判断は、お住まいの市区町村が出す避難情報と、ご自身のハザードマップに従ってください。持病や服薬がある場合の備えについては、かかりつけの医療機関にご相談ください。