困ってから調べるの、遅いです。
断水したら衛生は「手・食器・ごみ」の順で崩れる(アルコールは手洗いの代わりにならない)(イメージ)38.4%衛生用品を3日分以上備えている人の割合(内閣府 世論調査)
備え編

断水したら衛生は「手・食器・ごみ」の順で崩れる(アルコールは手洗いの代わりにならない)

先回り大家最終確認 2026-09-23

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内閣府が在宅避難している人を訪ねて聞き取るときの調査票には、「台所が使えない」「カセットコンロを使用している」と並んで、「食事を準備できる環境がない(食器が洗えない等)」というチェック欄があります(*1)。食器が洗えないことは、国の手引きの上では「支援が要る状態」の1つとして数えられています。

断水の備えを飲み水だけで考えると、ここが抜けます。先に手を打てるのは、洗う水が無い前提で「汚さない」道具です。順番は手・食器・ごみ。この順で崩れて、この順で守ります。

断水で先に足りなくなるのは「洗う水」です

令和6年能登半島地震について、内閣府と国土交通省は自治体向けの事務連絡でこう振り返っています。水道の被害で「飲料水の他に、トイレや入浴、避難所の清掃、洗濯、器材の洗浄などに欠かせない『生活用水』の確保が困難となりました」(*2)。

飲み水は給水車やペットボトルで届きます。届きにくいのは、手や皿を洗う水のほうです。国の応急給水の目標も、最初の3日間は1人1日3リットル(飲料等)で、洗い物に回せる量は想定されていません。4日目以降の目標量と「運ぶ」話は水は1人1日3Lに書きました。

そして断水は、水道管が壊れなくても起きます。2019年の台風15号では最大13万9,744戸が断水しましたが、水道施設の被害294件のうち284件は原因が「停電」で、管の破損は0件でした(*3)。千葉の戸建てでも、停電すれば洗う水は止まりえます。

1. 手:アルコールは「補助」で、手洗いの代わりにはなりません

防災用品の棚にはアルコールの手指消毒剤が並んでいます。東京都のパンフレットも、アルコールスプレーを「水道が止まっている場合の手洗いや、食器を拭くのに活用します」と紹介しています(*4)。

ただし、厚生労働省のノロウイルスQ&Aは、手洗いについてこう書いています。「消毒用エタノールによる手指消毒は、石けんと流水を用いた手洗いの代用にはなりませんが、すぐに石けんによる手洗いが出来ないような場合、あくまで一般的な感染症対策の観点から手洗いの補助として用いてください」(*5)。

つまり、アルコールを買ったから手洗いの水は要らない、にはなりません。 現実的な分け方はこうです。

  • 石けんと水で洗う場面を絞る:同じQ&Aが手洗いを「必ず」とする場面は、調理の前、食事の前、トイレの後、汚物処理やおむつ交換の後です(*5)。断水中の貴重な水は、この場面にだけ使います。
  • それ以外はウェットティッシュとアルコールで補う:テーブルやドアノブ、スマートフォン、手の汚れを拭く用途です。
  • 調理は手袋で:東京都のパンフレットは、手が洗えない状態で調理するときの使い捨て手袋を挙げています(*4)。

石けんと洗面器、2リットルのペットボトル1本を「手洗い専用」として飲み水とは別に分けておくと、断水の初日に迷いません(この分け方は当方の提案です)。

2. 食器:洗う方法より「汚さない方法」を先に持つ

食器が洗えないなら、汚さなければいい。東京都のパンフレットは、ラップについて「断水時、食器に被せれば汚れを防ぎ、洗わずに済みます」、アルミホイルについて「調理器具にアルミホイルを敷くと汚さずに調理できます」と書いています(*4)。

さらに、ポリ袋に食材を入れて湯せんする調理(ごはんは米1合に水200〜220ml、沸騰した湯で20分・蒸らし10分)も同じ資料に載っています(*4)。袋が破れていなければ鍋の湯はほとんど汚れないので、続けて次の湯せんに使えます(当方の運用上の工夫です)。

調理器具の消毒について、厚労省のQ&Aは、エタノールではノロウイルスを完全には失活化できず、次亜塩素酸ナトリウムや熱湯(85℃以上で1分以上)が有効としています(*5)。断水中にこの手順を毎食こなすのは現実的ではありません。だからこそ、皿を汚さない道具を先に揃えるほうが確実です。

3. ごみ:出せない日数ぶん、家の中に置く前提で包む

避難所運営ガイドラインは、災害時であってもごみは分別し、決められた場所に出し、「防臭・防虫に気を付けましょう」としています(*6)。在宅避難でも同じで、収集が再開するまでのあいだ、ごみは家の中か敷地に置くことになります。

東京都のパンフレットは、ジッパー付きの袋はニオイの防止になるので、トイレのごみは黒いごみ袋に入れてからジッパー付きの袋に入れるよう勧めています(*4)。内閣府の在宅避難の手引きが挙げる支援物資の例にも、ごみ袋とごみバケツが入っています(*1)。

ラップとポリ袋で食器を守ると、そのぶんごみは増えます。食器の対策とごみの対策は、同じ計画の裏表です。携帯トイレの回数とごみの量は携帯トイレは何回分で足りるかにまとめました。

買う直前に見る5つ

内閣府の世論調査で、衛生用品を3日分以上備えている人は38.4%。飲料水の69.8%、食料品の59.8%より低い数字です(*7)。食料と水を揃えた家ほど、次に足すのはここです。

東京都の例(夫婦・乳幼児・高齢女性の4人家族、戸建て)では、ポリ袋1箱、ラップ1本、アルミホイル1本、ビニール手袋1箱、除菌ウェットティッシュ120枚、アルコールスプレー2本、歯磨き用ウェットティッシュ90枚程度が並んでいます(*4)。これを目安に、次の順で見ます。

  1. ポリ袋は「湯せんに使えるか」:調理に使うなら、パッケージの材質と耐熱温度の表示を見ます。表示の無い袋は、ごみ用に回します。
  2. ラップは幅の広いもの:皿と鍋を覆うので、手持ちの一番大きい皿が包める幅を選びます。
  3. ウェットティッシュは「除菌」と「ノンアルコール」を分けて買う:拭き掃除や手には除菌タイプ。口まわりや体、肌の弱い家族にはノンアルコールを別に用意します。
  4. アルコールはスプレーかジェルか:手指に使うなら、手指消毒用と表示されたもの。テーブル用とは分けます。
  5. 歯磨きシートを1袋:東京都の資料は、断水で歯磨きができず口の中が不衛生になると、高齢者や小さな子どもが肺炎などの感染症にかかりやすくなると注意しています(*4)。家族に高齢者がいるなら入れておきます。

今日やること(3行)

  1. ラップとポリ袋を「防災の棚」に1つずつ移す。 台所の在庫とは別に置きます。
  2. 2リットルのペットボトル1本に「手洗い用」と書く。 飲み水とは数えません。
  3. ジッパー付きの袋を1箱足す。 トイレのごみと生ごみの二重包み用です。

私が千葉県で貸している戸建て3棟の修繕は、この1年で6件。全部、壊れてから業者を呼んだものです。衛生用品は、そのどれよりも安く、先に買える備えです。

食料の数え方は非常食は何食分で買う、家にとどまる前提の全体像は在宅避難で必要になるもの、一式をまとめて揃える順番は防災セットは既製品か自作かに書きました。避難生活の不調がなぜ命に関わるのかは直接死より多い災害関連死にあります。

この記事の道具箱

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  • ポリ袋(高密度ポリエチレン・湯せん対応)食器を汚さない調理と、ごみの二重包みの両方に使う。調理に使うなら材質と耐熱温度の表示を見る。楽天市場で探す Yahoo!ショッピングで探す
  • 食品用ラップ(幅30cm前後)断水中は皿に被せて洗い物を無くす。手持ちの一番大きい皿が包める幅を選ぶ。台所の在庫とは別に1本を防災の棚へ楽天市場で探す Yahoo!ショッピングで探す
  • 除菌ウェットティッシュ(詰め替え・大容量)手洗いの水を使わない場面(テーブル・ドアノブ・スマホ)を受け持つ。東京都の4人家族の例は120枚。肌や口まわり用のノンアルコールは別に買う楽天市場で探す Yahoo!ショッピングで探す
  • 手指消毒用アルコール(ジェル・スプレー)手洗いの補助であって代わりではない(厚労省)。石けんと水で洗えない場面の上乗せとして持つ。「手指消毒用」と表示のあるものを選ぶ楽天市場で探す Yahoo!ショッピングで探す
  • 歯磨きシート(歯磨き用ウェットティッシュ)断水で歯が磨けない日の口の中を保つ。東京都の4人家族の例は90枚程度。高齢の家族がいる家は優先度を上げる楽天市場で探す Yahoo!ショッピングで探す

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出典

  • *1 内閣府(防災担当)「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」(令和6年6月)=聞き取り調査票の「⑤調理・食事環境」欄に「□ 台所が使えない」「□ カセットコンロを使用している」「□ 食事を準備できる環境がない(食器が洗えない等)」。具体的な支援物資の例に、アルコールジェル・消毒スプレー・除菌用水溶液・紙コップ・汗拭きシート・ゴミ袋・ごみバケツ等 https://www.bousai.go.jp/taisaku/shien/pdf/tebiki.pdf
  • *2 内閣府政策統括官(防災担当)付参事官(避難生活担当)付・国土交通省水管理・国土保全局水道事業課水道計画指導室 事務連絡「発災時における生活用水の確保を円滑に行うための防災担当部局と水道事業者の事前防災にかかる連携について」(令和7年6月26日)=「令和6年能登半島地震では、水道が甚大な被害を受け、飲料水の他に、トイレや入浴、避難所の清掃、洗濯、器材の洗浄などに欠かせない『生活用水』の確保が困難となりました」 https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/r7_0627.pdf
  • *3 厚生労働省「令和元年台風第15号 水道施設被害状況調査報告書」ほか=最大断水139,744戸(千葉県内133,474戸・15事業体)、水道施設の被害294件のうち284件は被害の原因が「停電」、管体・継手の破損は0件。当サイト「千葉で停電が2週間続いたとき、家で何が止まったか」(2026-08-19確認)からの再掲 /chiba-teiden-2shukan/
  • *4 東京都防災ホームページ 日常備蓄パンフレット(衛生用品等・その他)=「日常備蓄」の例(夫婦と乳幼児、高齢女性1人の4人家族で戸建て住宅にお住まいの例)に、ポリ袋1箱・ラップ1本・アルミホイル1本・ビニール手袋1箱・除菌ウェットティッシュ120枚・アルコールスプレー2本・歯磨き用ウェットティッシュ90枚程度。品目解説=ラップ「断水時、食器に被せれば汚れを防ぎ、洗わずに済みます」、アルミホイル「断水時、調理器具にアルミホイルを敷くと汚さずに調理できます」、ポリ袋「断水時には食材を入れて調理すれば衛生的」「トイレのごみなどは黒いごみ袋に入れてからジッパー付きの袋に入れましょう」、ビニール手袋「手がしっかり洗えない状態で調理をしなければならない時に」、アルコールスプレー「水道が止まっている場合の手洗いや、食器を拭くのに活用します」、歯磨き用ウェットティッシュ「断水により歯磨きができず口の中が不衛生になると、免疫力の低い高齢者や小さな子供は肺炎などの感染症にかかりやすくなります」。ポリ袋でごはんを炊く手順(米1合・水200〜220ml・沸騰後20分湯煎・10分蒸らし) https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/_res/common/bichiku/pamph_r7_11.pdf
  • *5 厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」=Q16(手洗いの方法)「調理を行う前(特に飲食業を行っている場合は食事を提供する前も)、食事の前、トイレに行った後、下痢等の患者の汚物処理やオムツ交換等を行った後(手袋をして直接触れないようにしていても)には必ず行いましょう」「なお、消毒用エタノールによる手指消毒は、石けんと流水を用いた手洗いの代用にはなりませんが、すぐに石けんによる手洗いが出来ないような場合、あくまで一般的な感染症対策の観点から手洗いの補助として用いてください」。Q17(調理台や調理器具の殺菌方法)=ノロウイルスを完全に失活化する方法として次亜塩素酸ナトリウム・亜塩素酸水・加熱、食器・ふきん等は熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱が有効 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html
  • *6 内閣府(防災担当)「避難所運営ガイドライン」(令和4年4月改定)=「災害時であってもゴミは分別収集し、決められた集積場所に排出し、防臭・防虫に気を付けましょう。炊き出しをする際には、調理前の手指及び調理器具の消毒を徹底し」 https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/2204hinanjo_guideline.pdf
  • *7 内閣府「防災に関する世論調査(令和7年8月調査)」4.家庭で準備する備蓄(1)=3日分以上備蓄しているもの:飲料水69.8%、食料品59.8%、衛生用品38.4%、食品加熱用熱源27.7%、携帯トイレ・簡易トイレ27.2%(複数回答・上位5項目) https://survey.gov-online.go.jp/public_safety/202510/r07/r07-bousai/