困ってから調べるの、遅いです。
直接死より多い「災害関連死」=熊本と能登で、いつ・どこで起きたか(イメージ)506人能登半島地震で石川県が災害関連死と認定した人数。同県の死者734人の約69%で、直接死228人の2.2倍(石川県「被害等の状況について 第231報」2026年7月31日14時現在)
暮らし編

直接死より多い「災害関連死」=熊本と能登で、いつ・どこで起きたか

先回り大家最終確認 2026-08-20

2016年の熊本地震で亡くなった方は275人。そのうち、地震そのもので亡くなった「直接死」は50人です。残りの225人は、避難生活のなかで亡くなった「災害関連死」でした(*1)。死者の8割が、地震を一度は生き延びた方です。

2024年の能登半島地震も同じ形をしています。石川県の集計では死者734人、うち災害関連死506人(*2)。直接死228人の、2.2倍です。

家具を固定して、感震ブレーカーを付けて、耐震を確かめる。それは必要です。ただ、その対策が守るのは直接死の側だけです。もっと大きい数字が、そのあとに残っている。ここを埋める方法を、国が公表した統計から出します。

災害関連死とは何か(役所の言葉で1回だけ)

定義は2019年(平成31年)4月に国が定め、自治体に周知したものが使われています。

当該災害による負傷の悪化又は避難生活等における身体的負担による疾病により死亡し、災害弔慰金の支給等に関する法律に基づき災害が原因で死亡したものと認められたもの(*3)

ポイントは「認められたもの」です。災害関連死は自動的に数えられません。遺族が申請し、市町村の審査会が個別に判断して初めて数字になります。だから公表値は今も動き続けます。

1. 亡くなった場所は、避難所ではない

内閣府は2026年1月、能登半島地震で災害関連死と認定された286件(審査を終えた市町の分)の内訳を公表しました。ここに、いちばん知られていない数字があります。

亡くなる直前にどこで生活していたか(*4)。

生活環境人数割合
病院9834.3%
介護施設等8429.4%
自宅等3813.3%
避難所3211.2%
親戚・知人宅227.7%
仮設住宅51.7%
避難所等への移動中20.7%
車中泊10.3%

6割強は病院と介護施設です。ここは、災害前から医療や介護を受けていた方が多い。

問題はその先です。残りのなかで最も多いのは「自宅等」の38人で、避難所の32人より多い。

「避難所は環境が悪いから、うちは自宅にいる」という判断は、この統計のなかでは安全側の判断になっていません。自宅にいても、水が出ず、電気が来ず、風呂に入れず、暖房が使えない生活が続けば、負荷は同じようにかかります。在宅避難は、避難所の外にあるだけで、避難生活の外にはない。

※この分類について国は「当該生活環境が災害関連死に影響を与えたかどうかを示したものではない」と注記しています(*4)。場所そのものが原因だ、という読み方はしない前提の数字です。

2. 経緯の欄に並んでいるのは「断水」と「停電」

同じ事例集は、認定にあたって書かれた「死亡までの経緯」から、頻度の高い言葉を抜き出しています。発災後1か月以上〜3か月以内に亡くなった92人分では、こうなっています(*4)。

  • 被災のショック等 81人
  • 断水 55人(うち 断水による介護施設等への影響24人・病院施設への影響5人)
  • 停電 49人(うち 介護施設等への影響21人・停電等に伴う在宅等医療機器の停止2人)
  • 避難場所の移動(避難所間の移動を含む)32人
  • 病院の被災等に伴う転院 28人
  • 自宅における避難生活の継続 13人
  • 服薬の中断 4人

発災後1週間以内の24人分でも、断水9人・停電9人が並びます。

つまり、断水と停電は「不便」として記録されているのではなく、人が亡くなるまでの経緯として名指しで記録されているということです。

水の備蓄も、携帯トイレも、ポータブル電源も、本当はここに効く道具です。快適さのための買い物ではありません。

3. 3日分では、時間の幅が合わない

もう1つ、備えの設計を変える数字があります。発災から亡くなるまでの期間です(*4)。

期間人数割合
1週間以内248.4%
1か月以内(1週間以内を除く)7225.2%
3か月以内(同上を除く)9232.2%
6か月以内(同上を除く)6723.4%
1年以内(同上を除く)2910.1%
2年以内(同上を除く)20.7%

1週間以内は8.4%しかありません。3か月以内で約66%、裏を返せば約34%は3か月を過ぎてからです。

「まず3日分」は、行政も呼びかけている正しい第一歩です。ただ、それは発災直後を自力でしのぐための線であって、災害関連死が起きる時間帯とは合っていません。関連死の時計は、月と年の単位で動いています。

だから備えの目標は、「3日耐える」ではなく「元の生活にどれだけ早く戻れるか」に置くほうが実態に近い。水が出ない・電気が来ない・寝る場所が変わる、この3つが続く期間を1日でも短くする。それが、この統計に対する具体的な打ち手です。

なお、認定された286人のうち80歳代以上が234人(約82%)、何らかの既往症等があった方が270人(約94%)でした(*4)。東日本大震災の震災関連死は、1都9県で累計3,810人です(*5)。

大家として言えること:家が残るかどうかが、そのあとを決める

私は千葉県で戸建てを3棟、貸しています。この1年で直したのは6件。2026年3月にトイレの部品交換で19,800円、翌4月に同じトイレを本体ごと交換して本体43,500円+工事24,200円。2025年6月に屋根、9月に風呂の床、2026年6月に給湯器交換と雨漏り修理。平時でこの速度です。部品を替えて1か月もたなかったものが1件あります。

災害のあとは、この速度がさらに落ちます。業者が足りず、部材が届かず、道が塞がる。だから私は、修繕を「壊れてから」ではなく「壊れる前」に寄せるようにしています。

そしてもう1つ。国の白書は、能登半島地震について直接死は輪島市と珠洲市に集中した(それぞれ100人・97人)のに対し、災害関連死は広域で発生したと整理しています(*6)。

家が残れば、水と電気さえ戻れば、そこに住み続けられます。家が住めなくなれば、避難所へ、親戚宅へ、施設へと動くことになる。家具固定や耐震は「その場で死なないため」の対策だと思われがちですが、同時に「そのあとも自分の家にいられるため」の対策でもある。柱がずれているのではなく、同じ1本です。どこから手を付けるかは家具固定を1箇所だけやるならどこか、戻ってきた電気で火が出るのを止める話は感震ブレーカーで通電火災を止めるにあります。

貸す側として言えば、災害後に入居者が住み続けられるかどうかは、私が何日で直せるかにかかっています。大家は現地に住んでいません。だから、こちらから連絡を入れます。

※本記事は公表されている統計と制度の紹介です。健康や治療の判断については、医療機関や公的機関の案内にしたがってください。

今日やること(3行)

  1. 水と携帯トイレの在庫を「1日にどれだけ減るか」で数え直す(断水と停電は、経緯の欄に名指しで載っている。数え方は携帯トイレは「何回分」で足りるかと水は1人1日3L、電気はポータブル電源は何Wh要るか、実際に2週間止まった記録は千葉で停電が2週間続いたとき、家で何が止まったか)
  2. 常用薬とお薬手帳(またはその写真)を、持ち出す物の中に入れる(「服薬の中断」が経緯の言葉として記録されている)
  3. 離れて暮らす高齢の家族の家を、1箇所だけ手当てする(認定された286人の82%が80歳代以上。自分の家より先に効くことがある)

3つ目については、手当てより先に「紙に名前が載っているか」を見たほうが早いことがあります。避難行動要支援者名簿と個別避難計画がどこまで作られているかはペット・子ども・高齢者がいる家の避難の段取りに、自宅にとどまる側の条件は避難所に行かない備え=在宅避難で必要になるものに書きました。避難したあと最初に壊れるのが睡眠だという話は避難所と車中泊で、最初に壊れるのは睡眠です。

災害関連死は、運や体質の話ではありません。水・電気・寝る場所が、何日止まったかの話です。困ってから調べるの、遅いです。


出典

  • *1 熊本県「熊本地震から10年~記憶と教訓を未来へ~」被害の状況(令和7年4月11日速報値)=「死者 275人(うち、地震による直接死…50人/いわゆる関連死…225人)」「重軽傷者2,739人」「住家被害 全壊8,657棟・半壊34,489棟・一部破損155,239棟」「市町村が開設した避難所には、最大で183,882人(県人口の約1割、平成28年4月17日午前9時30分時点)が避難」。https://www.pref.kumamoto.jp/site/h28kumamoto-earthquake/
  • *2 石川県「令和6年能登半島地震による人的・建物被害の状況について(第231報)」【令和8年7月31日14時00分現在】=計 死者734人・うち災害関連死506人・行方不明者2人・重傷401人・軽傷876人。市町別の災害関連死は輪島市150・珠洲市97・能登町92・七尾市85・穴水町37・志賀町27ほか。https://www.pref.ishikawa.lg.jp/saigai/documents/higaihou_231_0731_1400.pdf (一覧= https://www.pref.ishikawa.lg.jp/saigai/202401jishin-taisakuhonbu.html )
  • *3 内閣府 政策統括官(防災担当)付 参事官(被災者行政担当)付「災害関連死について」(資料No.8)=「災害関連死の定義について(略)平成31年4月に関係省庁で共有するとともに、自治体に周知したところ。○災害関連死:当該災害による負傷の悪化又は避難生活等における身体的負担による疾病により死亡し、災害弔慰金の支給等に関する法律(昭和48年法律第82号)に基づき災害が原因で死亡したものと認められたもの(実際には災害弔慰金が支給されていないものも含めるが、当該災害が原因で所在が不明なものは除く。)」。災害弔慰金の実施主体は市町村、支給額は生計維持者500万円・その他250万円、費用負担は国1/2・都道府県1/4・市町村1/4。あわせて熊本地震の死者270人の内訳(検視による死者50人/弔慰金法に基づき認められたもの215人/6月豪雨のうち地震との関連が認められた死者5人、熊本県第288報・平成31年3月13日発表)を掲載。https://www.bousai.go.jp/taisaku/kyuujo/pdf/r01kaigi/siryo8.pdf
  • *4 内閣府政策統括官(防災担当)付 避難支援担当参事官室「令和6年能登半島地震において災害関連死として認定された事例及び認定されなかった事例(災害関連死事例集)」(令和8年1月/令和8年1月22日一部修正)=認定された事例286件・認定されなかった事例122件。⑤災害発生から死亡までの期間=1週間以内24人(8.4%)/1月以内72人(25.2%)/3月以内92人(32.2%)/6月以内67人(23.4%)/1年以内29人(10.1%)/2年以内2人(0.7%)、3月以内が188人(約66%)。⑥死亡直前期における生活環境区分=病院98人(34.3%)・介護施設等84人(29.4%)・自宅等38人(13.3%)・避難所32人(11.2%)・親戚知人宅22人(7.7%)・仮設住宅5人(1.7%)・避難所等への移動中2人・車中泊1人・その他不明4人。「ただし、当該生活環境が災害関連死に影響を与えたかどうかを示したものではないことに注意が必要である」。②死亡時の年齢層=80歳代以上234人(約82%)。④既往症等=あり270人(94.4%)。⑦死因区分(ICD-10)=循環器系の疾患87人(30.4%)・呼吸器系の疾患80人(28.0%)・症状、徴候及び異常臨床所見等(老衰等)69人(24.1%)。(3)経緯等における個別の事情(重複計上あり・発災後1か月以上〜3か月以内 n=92)=被災のショック等81/断水55(断水による介護施設等への影響24・病院施設への影響5)/停電49(介護施設等への影響21・病院施設への影響4・停電等に伴う在宅等医療機器の停止2)/避難場所の移動32/病院の被災等に伴う転院28/自宅における避難生活の継続13/車中泊8/服薬の中断4 ほか。発災後1週間以内(n=24)=被災のショック等18/断水9/停電9/急激な避難行動による心身への負担5/インフラの損傷等による救急搬送の遅れ3 ほか。なお本事例集の対象は、合同開催された災害弔慰金等認定審査会等で処理された市町(石川県小松市・輪島市・加賀市・羽咋市・白山市・内灘町・志賀町・宝達志水町・中能登町・穴水町・能登町、金沢市、新潟県上越市)の分であり、石川県全体の認定件数とは一致しない。https://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/kanrenshijirei.html / https://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/pdf/jirei_r8.pdf
  • *5 復興庁・内閣府(防災担当)・消防庁「東日本大震災における震災関連死の死者数(令和7年12月31日現在調査結果)」(令和8年2月13日)=「集計の結果は、1都9県で合計3,810人です」。https://www.reconstruction.go.jp/files/user/topics/main-cat2/sub-cat2-6/20260213_kanrenshi.pdf
  • *6 内閣府『令和7年版 防災白書』特集 第1章第1節「令和6年能登半島地震の概要と被害状況」=「本地震により多数の家屋倒壊が発生し、死者・行方不明者594名(うち災害関連死364名)の被害をもたらした(令和7年5月13日時点)」「警察庁情報(令和7年2月末時点/警察が取り扱った226名を対象)によると、直接死の死因の約4割が『圧死』、約2割が『窒息・呼吸不全』、『低体温症・凍死』が1割強」「直接死は輪島市と珠洲市に集中して犠牲者が発生した(それぞれ100名、97名)のに対し、災害関連死は広域で犠牲者が発生し(略)」「災害関連死による犠牲者のうち年齢が公表されている136名(略)80代以上が全体の約8割」「死亡した経緯が公表されている158名の死因の内訳は、循環器系疾患が53名(約34%)、呼吸器系疾患が52名(約33%)で全体の約60%を占めており、体力低下も23名(約15%)(令和6年11月21日時点)」。https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/r07/honbun/t1_1s_01_00.html
  • *7 自宅(千葉県の戸建て・賃貸中)の修繕実額。2025年6月=屋根修繕、2025年9月=風呂床修繕、2026年3月16日=トイレのボールタップ・フロート交換19,800円(税込・業者請求書)、2026年4月=同トイレの本体交換 本体43,500円(通販購入・領収書)+工事24,200円(税込・業者請求書)、2026年6月=給湯器交換および雨漏り修理。物件の所在地・業者名は非公開。