困ってから調べるの、遅いです。
車中泊で足を伸ばせないと何が起きるか(買う前に、その車で一度横になる)(イメージ)74.5%熊本地震で車中泊避難を経験した人の割合(内閣府)
暮らし編

車中泊で足を伸ばせないと何が起きるか(買う前に、その車で一度横になる)

先回り大家最終確認 2026-09-25

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2016年の熊本地震では、熊本県内に住む人へのアンケートで、避難先として車中泊を経験した人が74.5%いました。避難所(45.3%)よりも、自宅(50.9%)よりも多い数字です(*1)。同じ地震で亡くなった方のうち、災害関連死は死者全体の約8割を占めています(*1)。

車中泊は、特別な人の選択ではありません。ペットがいる、乳児が夜に泣く、余震が怖い。そうした理由で、多くの家庭が結果的に選んでいる避難の形です(*1)。だから先に決めておくことは1つです。その車で、足を伸ばして横になれるか。

危ないのは「車で寝ること」ではなく「座ったまま過ごすこと」

厚生労働省は、エコノミークラス症候群をこう説明しています。「食事や水分を十分に取らない状態で、車などの狭い座席に長時間座っていて足を動かさないと、血行不良が起こり血液が固まりやすくなります」(*2)。

主語は「車」ではなく、「狭い座席に長時間座っていて足を動かさない」ことです。同じページの予防のポイント6つは、体操やストレッチ、こまめな水分、アルコールを控える、ゆったりした服装、かかとの上げ下ろし、そして最後が「眠るときは足を上げる」です(*2)。

熊本県は、熊本地震の車中泊について、発災直後にエコノミークラス症候群の患者が集中的に発生し、重篤な患者も出たことを主な課題に挙げています(*3)。2026年夏の熊本の地震でも、県は「避難所や車中での避難生活が続くと、長時間同じ姿勢でいることや水分不足などにより」発症するおそれがあると呼びかけています(*4)。

健康上の判断は専門職の領域なので、ここでは踏み込みません。家の側で先回りできるのは、座ったまま夜を越さなくて済む車内をつくっておくことです。

1. 車内に「水平」をつくる:シートを倒して、段差を測る

多くの車は、後部座席を倒しても完全な平面にはなりません。シートの継ぎ目、背もたれの角度、荷室との境目に段差が残ります。ここが埋まらないと、結局は座るか、体を丸めて寝ることになります。

だから順番はこうです(この手順は当方の提案です)。

  1. 明るいうちに、実際にシートを倒す。 家族の中でいちばん背の高い人が、頭から足まで伸ばせるかを見ます。
  2. 段差の高さをメジャーで測る。 継ぎ目や荷室との境目の、いちばん低いところと高いところの差です。
  3. その段差より厚いマットを選ぶ。 段差が残る場所には、クッションやたたんだ毛布を先に置いて平らにしてから、マットを敷きます。

マットの全長も、倒したシートから荷室までの長さを測ってから決めます。「車中泊用」と書かれていても、車に入らなければ使えません。

2. 季節で起きる事故は、夏と冬で別のもの

内閣府の検討会は、車中泊について季節を考えるべきだとして、夏は高温や熱中症への対策、冬は低温や積雪でマフラーが埋まることによる一酸化炭素中毒への注意が必要だと書いています(*1)。

  • 夏:窓を閉めた車内は熱がこもります。エンジンを切っても涼しく過ごせる前提で、窓の目隠し(日よけ)と、少し開けた窓から虫が入らない工夫を先に用意します。停電した家での暑さ対策は停電した夏と冬にまとめました。
  • 冬:雪の日にエンジンをかけたまま眠らない。暖は毛布と寝袋でとる前提にします。どうしてもエンジンをかけるなら、マフラーの周りが雪で埋まっていないかを確かめることが、国の資料が名指しした注意点です(*1)。

目隠しは、夏の暑さ対策であると同時に、夜のプライバシーの確保にもなります。車中泊を選ぶ理由の1つが「プライバシーの確保」であることは、国の資料にも書かれています(*1)。

3. どこに停めるか:自治体が決めた場所を先に調べる

同じ検討会は、車中泊避難を行うスペースとして、指定避難所の駐車場のほか、トイレや物資支援のスペースが確保された大規模な公園や商業施設の駐車場、道の駅などを想定しています。そして自治体がそのスペースを事前に公表して、そこへ誘導することが効果的だとしています(*1)。

裏返すと、どこにでも停めてよいわけではありません。好きな場所に停めた車中泊は、行政から見えにくくなります。熊本県も「車中泊等の実態把握が困難であり、物資の支援や情報提供が不十分であった」と振り返っています(*3)。

平時にやっておくことは2つです。

  1. お住まいの市区町村のホームページで「車中泊」と検索する。 車中泊できる場所を公表しているかを見ます。
  2. 発災したら、自分から居場所を伝える。 国の資料には「車中泊避難者等自らによる情報の登録」が支援の手段として書かれています(*1)。

また、国の資料は、妊産婦などハイリスクの方には車中泊が望ましくない場合があることも周知するよう書いています(*1)。家族に当てはまる人がいるなら、車中泊を前提にせず、避難所や親戚宅など別の行き先も決めておきます。段取りはペット・子ども・高齢者がいる家の避難の段取りに書きました。

買う直前に見る4つ

内閣府の検討会は、車中泊避難者に必要な備品として携帯トイレ、水、弾性ストッキングなどを挙げています(*1)。水と携帯トイレは家の備蓄と共通です。車のために足すものは、次の順で見ます。

  1. 車中泊マットは「段差より厚いか」と「全長が入るか」:先に測った段差と長さに合わせます。空気で膨らむタイプは、家で一度膨らませて、しぼませて収納できるかも確かめます。
  2. 段差を埋めるクッション:マット1枚で段差が消えない車なら、継ぎ目用のクッションを足します。家にある座布団で足りるなら買わなくて構いません。
  3. 窓の目隠し(車種に合うサンシェード):夏の日よけと夜の目隠しを兼ねます。車種・年式の適合表示を見ます。
  4. 携帯トイレを車にも置く:夜にトイレまで歩かずに済む手段が車内にあると、水分を控える理由が1つ減ります(*2の予防のポイントの2つ目は「十分にこまめに水分を取る」です)。車に置く分は家の備蓄とは別に数えます。回数の出し方は携帯トイレは何回分で足りるかにあります。

弾性ストッキングは医療用品としての性格があるため、ここでは商品として勧めません。必要かどうかは、かかりつけ医や薬剤師にご相談ください。

今日やること(3行)

  1. 次の休みの明るいうちに、家族でいちばん背の高い人が車で横になってみる。 足が伸びるか、どこに段差が残るかを見ます。
  2. 段差の高さと、倒したシートから荷室までの長さを測ってメモする。 マット選びはそれからです。
  3. お住まいの市区町村のホームページで「車中泊」と検索する。 停める場所が公表されているかを確かめます。

私が千葉県で貸している戸建て3棟の修繕は、この1年で6件。全部、壊れてから業者を呼んだものです。車の中を測っておくのは、壊れる前にできる、いちばん安い先回りです。

車中泊と避難所の「眠り」の問題は避難所と車中泊で、最初に壊れるのは睡眠、避難生活の不調がなぜ命に関わるのかは直接死より多い災害関連死、一式を揃える順番は防災セットは既製品か自作かに書きました。

この記事の道具箱

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出典

  • *1 内閣府(防災担当)「避難生活の環境変化に対応した支援の実施に関する検討会 とりまとめ」(令和6年6月)=「熊本県内在住者を対象とした内閣府のアンケートによると、平成28年の熊本地震では、避難先とした場所(複数選択可)について回答者全体の74.5%が車中泊避難を経験したと回答しているほか、50.9%が自宅(在宅避難)を経験したと回答しており、いずれも避難所と回答した割合(45.3%)を上回っている」「熊本地震では、災害関連死が令和3年3月末時点で218人と死者全体の約8割を占めている」。「4.車中泊避難者の支援」=車中泊の理由(余震が怖い・避難所が満員・乳児連れ・ペット)、「プライバシーの確保やペットの世話ができるなどの利点がある一方で、エコノミークラス症候群の危険があり、健康管理が課題となる」、平時の取組として「携帯トイレ、水、弾性ストッキング等必要な備品の備蓄」、「車中泊避難者等自らによる情報の登録」、「夏季であれば高温や熱中症への対策、冬季であれば低温や積雪でマフラーが埋まることによる一酸化炭素中毒等への注意が必要である」、車中泊スペースとして「指定避難所の駐車スペースのほかにも、大規模な都市公園や商業施設の駐車場であって、トイレや物資支援のスペースが確保されている場所、道の駅」、「車中泊避難を行うためのスペースを事前に公表することで、車中泊避難の実施場所を誘導することが効果的」、「妊産婦等のハイリスクの方など車中泊を行うことが望ましくない場合の周知」 https://www.bousai.go.jp/kaigirep/kentokai/hinanseikatsu/pdf/torimatome.pdf
  • *2 厚生労働省「エコノミークラス症候群の予防のために」=「食事や水分を十分に取らない状態で、車などの狭い座席に長時間座っていて足を動かさないと、血行不良が起こり血液が固まりやすくなります。その結果、血の固まり(血栓)が血管の中を流れ、肺に詰まって肺塞栓などを誘発する恐れがあります」。予防のポイント=ときどき軽い体操やストレッチ運動を行う/十分にこまめに水分を取る/アルコールを控える。できれば禁煙する/ゆったりとした服装をし、ベルトをきつく締めない/かかとの上げ下ろし運動をしたり、ふくらはぎをもんだりする/眠るときは足を上げる https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07384.html
  • *3 熊本県健康福祉部「平成28年熊本地震における車中泊の状況について」(令和5年10月25日・内閣府 避難生活の環境変化に対応した支援の実施に関する検討会 第4回 資料7)=主な課題「車中泊等の実態把握が困難であり、物資の支援や情報提供が不十分であった」「発災直後には、エコノミークラス症候群の患者が集中的に発生し、中には重篤な患者も発生した」。支援=保健師等の巡回による予防啓発チラシの配布、弾性ストッキングの配布 https://www.bousai.go.jp/kaigirep/kentokai/hinanseikatsu/04/pdf/shiryo7.pdf
  • *4 熊本県「災害時には、熱中症予防、エコノミークラス症候群予防、口腔ケア、そして食中毒予防対策を!」(2026年8月21日更新)=「地震により避難所や車中での避難生活が続くと、長時間同じ姿勢でいることや水分不足などにより、『エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)』を発症するおそれがあります」 https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/44/274480.html

※本記事は公的資料の記載をまとめたものです。エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)をはじめとする健康上の判断・予防・治療については、この記事ではなく、かかりつけ医や自治体の保健師などの専門職にご相談ください。 本記事は特定の商品や行動による予防効果を主張するものではありません。車中泊できる場所・受け入れ条件は市区町村によって異なるため、お住まいの自治体の防災担当窓口でご確認ください。